2005年1月

アトピー性皮膚炎

【アトピー性皮膚炎とは?】
 一般的にアトピー体質と言われる人にいろいろな刺激が加わって生じる湿疹です。痒みが強く、年齢によって現れる症状が異なり、乳児では顔面・頭部が赤くただれて湿性の場合が多く、成人では主に関節屈側に丘疹(盛り上がった湿疹)となり乾燥している状態が多いが、人により症状は様々で、症状により軽微から重症まで分類されています。

アトピー性皮膚炎による分類
重症・・・症状が重症化して、日常生活が不可能な状態を指します。顔面のむくみとジクジクした紅斑や丘疹が多発し、細菌感染(黄色ブドウ球菌)等の合併症も起こる可能性があります。

中等症・・ジクジクしかけた紅斑や肌が魚の鱗状になったような症状を主体とした状態を指します。

軽症・・・皮膚の乾燥と軽い紅斑、肌が魚の鱗状になったような症状を主体とした状態を指します。

軽微・・・炎症や紅斑はほとんどなく、皮膚の乾燥を主体とした状態です

 アトピー性皮膚炎で患者さんが最も苦しめられる症状は「かゆみ」です。特に子供は我慢することができず、かきこわして血が出るまで引っ掻いてしまいます。自分で引っ掻くことのできない乳児期などは、母乳を飲む時にお母さんの乳房にこすりつけて、または抱っこされている時にお母さんの服にこすりつけて掻いています。 

【かゆみはどんな時に起きる?】
●布団にはいるとかゆくなる?
お風呂の入ったり布団に入って身体が温まると、途端にかゆくなります。これは、皮膚が温められて、かゆみ神経がかゆみを感じやすくなるためです。また、仕事や遊びに熱中している時はあまりかゆくないのに、ほっとしている時にかゆみを感じやすいということがよくあります。夜、眠る前が一番かゆいと訴える患者さんが多いのは、布団に入って身体が温まるのに加え、まどろみ始めて緊張がゆるむため、かゆみが倍増していると考えられます。

●ストレスでかゆくなる?
遊びや好きなことに熱中している時はかゆくないのに、勉強したり人前での発表など嫌なこと、イライラすることがあると、とてもかゆみが強くなります。受験が近づくとアトピー性皮膚炎が悪化し、合格すると急に軽くなるというのはよくある話です。ストレスはかゆみを悪化させる大きな原因と考えられています。

●季節によってかゆみの程度が違う?
アトピー性皮膚炎には季節性があるといわれています。
夏場に悪化する人もいれば、冬場に悪化する人もいて、かなり個人差がみられます。

冬に悪化するタイプ・・・寒くなると、肌の乾燥がますます強くなるため、かゆみがひどくなります。
夏に悪化するタイプ・・・汗をかくと、それが刺激になってかゆみがひどくなります。また、夏場は細菌が繁殖しやすくなり、細菌によって皮膚の炎症が悪化するとかゆみが強くなります。

次回はアトピー性皮膚炎の治療法をお話しします。

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2004年11月院長より

皆様、今年はもうインフルエンザの予防接種はお済みでしょうか?インフルエンザの影響を最小限に抑えるために、予防接種を受けることが推奨されております。予防接種を受けてから抵抗力がつくまでに少し時間がかかることから、できれば11月末までに予防接種をお受けになるようお勧めいたします。

 前回、「混合診療解禁」は「国が定めたスタンダードな医療」と「各医師が自らの信ずるところの自由診療」の混在を認めることであり、「怪しげな民間療法」や「独自の秘薬」など「国が認めない特殊療法」の拡大が懸念されることとこれらのコストは極めて不透明であるため、不明朗な価格が蔓延するおそれがあることから、医師会は「混合診療解禁」に反対していますとお知らせいたしました。

 今回は日本医師会のチラシの解説を追加したいと思います。小泉首相とその周囲で「混合診療解禁」を唱えている方々の真の目的は保険診療の縮小と自由診療部分への民間保険導入です。混合診療が解禁されれば、風邪薬や湿布などの軽費医療は公的医療保険からはずされ、新しい薬や技術も自由診療部分に回され、いつまでたっても公的保険でカバーされませんから、公的医療保険としての国の支出は減り、財務省は大喜びです。一方増大する自由診療部分をカバーする民間医療保険が多数販売され、やむを得ず加入する方が増えますから、民間保険会社も大喜びです。しかし、民間医療保険料分などが増えますから、患者さんの自己負担は大幅に増えます。病気になっても公的医療保険では最適な医療を受けることができず、民間医療保険には高額すぎて入れなかったり、入っていてもカバーしてもらえない病気だったり、あれこれと理由を付けられ、保険金を支払ってもらえなかったりということも増えることが予想されています。つまり、受けられる医療の範囲がお金の有無によって決まってしまい、このままでは国民皆保険制度が成立した以前の状態に戻ってしまいます。このように「混合診療解禁」は国民皆保険制度を形骸化するもので、到底看過することはできません。

 私ども板倉医院や医師会とご一緒に「混合診療解禁」に反対し、「誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険制度」を守りましょう。

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2004年11月心理室より

達成欲求と親和欲求

【職場で求められるタイプとは?】
 職場にはいろいろなタイプの人が働いています。どういう人が職場で求められているのでしょうか?
今回は職場で求められるタイプについて「欲求」を焦点にお話ししたいと思います。

 「欲求」にはたくさんの種類があります。そのなかで大きく分けると「生理的欲求」と「社会的欲求」とにわけることができます。「生理的欲求」というのは、食欲、睡眠欲、性欲などのことを指します。一方「社会的欲求」というのは、人から認められたい、困っている人を助けたい、人や組織を動かしたいなどのように、対人関係を中心とした社会関係の中でおこる欲求のことを指します。

 「社会的欲求」の中で代表的なものに「達成欲求」と「親和欲求」があります。 「達成欲求」とは、ものごとを成し遂げたいという欲求、「親和欲求」とは、人と仲良くしたいという欲求のことです。このどちらかが勝るかによって、対人関係のとり方、仕事への取り組み方など、社会生活の送り方が異なってくるのです。

●「欲求」
「生理的欲求」・・・食欲、睡眠欲、性欲など
「社会的欲求」・・・達成欲求、親和欲求など

「達成欲求」の強い人は、やりかけたことは何としても完成させたい、できるだけうまく仕上げたいという気持ちが強いでしょう。難しいことを苦労して成し遂げた時の喜びを知っているため、困難な課題を前にして躊躇するよりも、よし挑戦してみようという積極的な姿勢が取れるのです。
 このような、「達成欲求」の強い人は、職業生活に積極的に取り組む素質をもっているといえます。ただし、自分の仕事の意義がつかめなかったり、毎日単純作業の繰り返しだったりすると、このタイプは不完全燃焼に陥りやすくなります。決められたことを一定の手順でこなしていけばよいというような単純なことでは満足できません。ですから、仕事の分業化、単 純化が職場に浸透している場合、このタイプは仕事に大きなやりがいを求めるがゆえに不満を持ちやすくなります。 また、「達成欲求」の強い人は、課題そのものだけではなく、他人に対してもチャレンジ精神が旺盛で
あることが多いと言われています。つまり、競争心が強いのです。ですので、チームプレーが苦手な人が多いと思います。自分の力でどこまで達成できるのかにこだわりすぎてしまうのです。それと同時に能率の悪い中間を見るとイライラしてしまいます。

一方、「親和欲求」の強い人は、周囲の人とうまくやっていきたいという気持ちが強いと言われています。サークル活動などでも、技術そのものの向上よりも、親しい仲間がいるということが参加の主な動機となります。職場でも仕事そのものよりも人間関係に対する関心が強いのです。
 つまり、「親和欲求」の強いタイプは、職場の人間関係の調整役としての能力を備えているといえるでしょう。他人に対して暖かい心配りができるのです。雰囲気作りには欠かせないタイプですが、和気あいあいの雰囲気に浸るばかりでは、仕事の能率という点で人のお荷物になりかねません。
 また、親しい仲間と一緒でないと落ち着かないところがあるので、一人で課題をこなさなければならない仕事には不安があり、消極的な姿勢をとりやすいと考えられます。

 このように見てくると、仕事への意欲十分の「達成欲求」タイプと、仲間との情緒的つながりを重視する「親和欲求」タイプでは、正反対のイメージを抱かれるかもしれません。しかし、これらの欲求は一人の人の中に両方持ちあわせています。ただ、そのバランスは人によって様々です。その中で、物事をやり遂げたいという意欲と、仲間意識も強く和を重んじるバランスの良いタイプが、職場で求められるタイプなのではないでしょうか。

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2004年11月

鍋料理

  日が落ちるのが早くなり、朝晩の冷え込みを感じるようになりました。次第に冬が近づいてきているようです。さて、冬の人気ナンバーワン料理と言えば「鍋」ではないでしょうか?今回は、心も体も温まる鍋の秘密に迫ってみたいと思います。

【鍋料理の歴史】
 鍋料理は一体いつからあるものなのでしょうか?鍋料理の歴史を振り返ってみましょう!

●古代
 調理用具・鍋の誕生
調理用具としての鍋そのものの歴史は古く、古代遺跡からも土鍋が出土しています。「なべ」の語源は「菜(な)を煮(へ)る」と言われ、おかずを煮る土器のことを指しているそうです。

●室町~戦国時代  あの松尾芭蕉も食べていた!?
この時代の人々は、ご飯と「汁」もので、お腹を満たしてため、「汁」はおかずであったと考えられます。そのため、肉類・魚介類を「汁」に仕立てた料理から鍋物が発展してきました。冬に猟をする狸や兎が「狸汁」「兎汁」となり、それらの「けもの汁」は熱いまま食べるので、煮ながら食べるという習慣が生まれました。当時、松尾芭蕉が句に詠んだ「ふぐ汁」とは今で言う「ふぐ鍋」のことだと考えられ、あの松尾芭蕉も鍋を食べていたということになるのです。

●江戸中期以降   福沢諭吉も食べていた?!
 「汁」ではなく「鍋」という料理になったきっかけは、「小鍋立て」という料理方法の普及であると言われています。「小鍋立て」とは、七輪・火鉢などに鍋をかけ、煮ながら食べるいわゆる「鍋」料理で、湯豆腐やどじょう鍋などから始まりました。鍋料理が本格化したのは、「薬喰い」と言われた獣肉料理の専門店が増え始めてからだそうです。桜鍋(馬肉)・紅葉鍋(鹿肉)・ぼたん鍋(猪肉)が流行したと言われています。しかし、当時はまだ肉食を嫌う風習が強く、鍋を食する人はわずかしかいなかったと考えられます。福沢諭吉も安政4年(1857)頃に牛肉を食べたと言われていますが、あまり良い印象ではなかったそうです。

●明治時代 明治天皇も食べていた!
  鍋料理が本格的に庶民の生活に入ってきたのは、明治以降だと言われています。明治2年(1869)、江戸に牛鍋屋が相次いで開店しました。いわゆる「すき焼き」屋です。明治5年(1872)には、明治天皇自らが肉食の禁を破り、大流行となったそうです。それは文明開化・富国強兵のシンボルであり、また一種の食の規制緩和でもあったわけです。牛鍋を食べることは庶民にとって、一番身近な文明開化だったというわけです。「牛鍋食べてないの?」「遅れてる~!」そんな会話が交わされていたのかもしれませんね。

【鍋料理で心と体の癒しを!】
 鍋の最大の魅力は何と言っても「温かい」ことです。人間にとって温かい食べ物は、体にも心にも、とても重要なことだと考えられます。

●心のヒーリング
 鍋を囲むと「次、これを入れて」「コレあげる」と話題が無くても話が続きます。普段の料理と鍋料理で家族の会話数を比較した実験では、鍋料理では圧倒的に会話の数が増えるという結果が出ました。つまり、鍋はみんなで調理しながら食べるものだからでしょう。
ワイワイ喋りながら食事のできる鍋は、最高のヒーリング・フードと言えるのではないでしょうか。最近、家族の会話が減ったと感じている人は、夕飯に鍋料理を企画してみてはいかがでしょうか?

●体のヒーリング
 鍋は冬を乗り切る料理方法だと考えられます。野菜は煮込む事によって食物繊維が柔らかくなり、生で食べるよりも多くの量を食べることができます。ミネラル・ビタミン・ペクチンなども摂取することができます。魚はアラ、肉は骨つきで煮込むと、普段は摂取しにくい、良質のゼラチン質・コラーゲンが摂れ、美肌効果も期待することができます。
「アツアツ」鍋は体に良いことがたくさんあるようです。

【冬のお鍋「オススメ食材」!!】
①海藻類
 カルシウム・ビタミン・鉄分・リン・ヨードなどが含まれます。海藻は、陸の野菜に劣らず、栄養素が豊富で、しかも低カロリーです。ダイエット中の人にもおススメです。

②葱
 緑の葉は捨ててはいけません! 葱の白い部分には硫化アリルという物質が含まれ、消化吸収を助けます。その他に殺菌作用、食欲増進、血行を良くする、風邪・頭痛・下痢にも効果ありの万能野菜だと言われています。白い部分だけでなく、緑の葉にもビタミンA・C、カルシウムが含まれています。ですので、葱は白い部分も緑の葉の部分も両方食べるのがオススメです!

③大根
 大根には、消化酵素が含まれ、胃腸を丈夫にしてくれます。皮の近くは、ビタミンCが特に豊富です。しかし、皮をむいて水にさらすと大量にビタミンC壊れてしまうので、皮をむかずにそのまま食べるのがオススメです!鍋に入れなくても、皮つきのまま大根おろしにし、薬味として使ってもいいでしょう。

④レタス
若さを保つビタミンEを含め、各種ビタミンが豊富です。ビタミンEはビタミンAの吸収を助け、血液循環を良くし、肌のシミを予防する効果があります。ビタミンEは熱に強いので、鍋物にもOKです。鍋にレタスというと何だかピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、、サラダよりたくさんの量を食べることができますので、ぜひ一度お試しあれ!

④春菊
 春菊にはカロチンが豊富に含まれています。カロチンは体内でビタミンAに変化し、皮膚・のど・消化管などの粘膜を強くする働きがあります。さらにビタミンB2・C・鉄分なども含まれており、栄養面もバッチリ!鍋にすれば量もたくさん食べることができるますのでオススメです。
 
⑤キノコ類
 ミネラル、ビタミンDなどを含みます。。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする効果もあります!シイタケのビタミンDは天日に干すと10~20倍に増えるので、生シイタケよりも干ししいたけの方が良いでしょう。シイタケの他に、エノキ、マイタケ、シメジ、エリンギと様々なきのこが出回っていますので、それぞれのご家庭で工夫してみて下さい。

【日本の鍋(Japanese Nabe)!!】
 さて、あなたはいくつ知っていますか?

●石狩鍋 (北海道)
 300年ほど前、アイヌ民族が野菜と鮭を塩味で食べたのが起源だそうです。後に味噌を入れるようになったとか。

●しょっつる(塩汁)鍋 (秋田県)
 しょっつる(魚醤汁)と白身魚と各家庭にあるもので作るそうです。昆布だしを、しょっつるで味を整え材料を入れます。

●あんこう鍋 (茨城県)
 骨つきのあんこうと野菜で作ります。だし汁の中に焼き味噌(あん肝と味噌をあわせて焼いたもの)を入れます。かつて漁師達が船の上で冷えた体を温めるために食べた、あら汁がルーツなんだそうです。

●カキの土手鍋 (広島県)
「海のミルク」と呼ばれるほど栄養豊富で、しかも低カロリーなカキ。カキ以外に、春菊・ネギ・きのこ・焼き豆腐などが入るそうです。土手の味噌は辛めの赤味噌+白味噌のブレンドが一般的なんだとか。

●鶏の水炊き鍋 (福岡県)
 薬膳の国・中国より伝わったとされています。骨つきの地鶏と野菜が入っています。

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