2004年9月院長より

まだまだ日中は暑い日が続いておりますが、夜間は徐々に涼しくなってきました。それとともに気候の変わり目に悪くなりやすい自律神経失調症状やカゼの患者さんが増えてきています。お気をつけになって下さい。
 昨年話題となったSARSも今は下火で関係者もほっと胸をなで下ろしていますが、感染症としては今年も西ナイル熱、鳥インフルエンザと話題は尽きず、いつまでたっても医学は感染症との戦いだと20数年前医学生だった時に教わったことを思い出します。多くの感染症はうがいと手洗いでかなり予防できますので、忘れず励行してください。

最近「混合診療解禁」の文字をよく見ます。現在、保険医療機関が保険診療を行う時には、「国が定めた医療行為のみしか行ってはいけません」ということが決められています。国の示した医療行為以外のものを行う時は「自由診療」で行わねばならず、「国が認めた医療行為と、そうでない医療行為(自由診療)を混在してはならない」というのが「混合診療の禁止」でこの規制を撤廃しなさいというのが「混合診療解禁」です。効果があることが確認されているのに、保険診療として国が認めるまでに時間がかかり、その間、すべての診療費用が全額自己負担となるのはあまりにも理不尽であるのと意見が「混合診療解禁」派の言い分です。しかし、「保険診療」と「自由診療」の混在を認めたとき、どのような事態が起こりうるかを十分に考えてみて下さい。「混合診療」の容認は、「国が定めたスタンダードな医療」と「各医師が自らの信ずるところの自由診療」の混在を認めることであり、「怪しげな民間療法」や「独自の秘薬」など「国が認めない特殊」の拡大が懸念されます。そしてこれら非スタンダードな医療行為は安全性が確立されていないばかりか、コストも極めて不透明なものとなってしまいます。また「混合診療」の導入は株式会社の医療への参入とは表裏一体であり、「医療業界には数十兆円のマーケットが眠っている」と嘯く輩たちの格好の餌食となり、不明朗な価格が蔓延し、お金持ちしかまともな医療を受けられないアメリカのようになってしまうことが予測されます。

皆様に平等な医療を提供するために、医師会は「混合診療解禁」に反対しています。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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2004年9月心理室より

ライフサイクル

前々回、前回に続き今回もライフサイクルについてお話ししたいと思います。
 今回は「成人期」、「中年期」、「老年期」についてです。

●「成人期」
 社会人として巣立ち、結婚、出産、育児を通して家庭を築く時期であり、社会的にも充実した時期であると考えられています。
 仕事上の責任や人間関係の葛藤が生じたり、女性の場合は妻として、嫁として、母として要求される事も多くあり、家族の間でも葛藤が生じたり、育児に悩み精神的に不安定になってしまう事も考えられます。

●「中年期」
 体力の衰えを感じたり、更年期障害や生活習慣病などの危険性が増し、子供が独立することで寂しさを感じる時期でもあります。子供にも手がかからなくなったり、自分が退職を迎えることで、自分自身の人生を振り返る時期でもあるでしょう。後悔や疑問を感じたり、これからは自分自身が楽しむこと、自分の人生を、と考える一方では、今まで一生懸命にやってきたことがなくなることで、逆に気力がなくなってしまったり、毎日繰り返される平凡な日々に喜びを感じられなくなってしまう場合もあります。

●「老年期」
 足腰が弱くなる、病気になりやすくなる、白髪、入れ歯、視力や聴力、記憶力の低下などの身体的な衰えが目立つようになります。また、親しくしてきた友人や兄弟、長年共に暮らしてきた配偶者の死を体験したり、家庭内での経済の中心や主婦の役割が子供世代に変わるなど多くの喪失体験をする時期であるといえます。しかし、長年の知識や経験、培ってきた人間関係を支えとし、精神的には穏やかになり、周りの人が丸くなったと感じるのはこの時期なのではないでしょうか。

 年齢を重ねるにつれ体力的な衰えを自覚し、若いときのように夢や希望を抱かなくなってしまうかもしれません。また、働き盛りであってもリストラの問題があったり、高齢になり介護が必要となることもあるでしょう。明るい第二の人生とは言い切れない部分も有ると思います。しかし、身体的な変化や、環境や家庭の変化を受け入れ、適応し、親しい人たちや社会との関係の中で、生き甲斐を感じたり、楽しいと思えたり、充実感を感じられるような何かを見つけることが課題となってくるのではないでしょうか。また、自分が中心となってやっていたことがそうではなくなる、一生懸命やってきたものがなくなる、死を体験する、ということで孤独感を感じたり、悲観的になったり、落ち込みがちになることも考えられ、周りの人たちのサポートも必要となってくるでしょう。

 3回にわたりライフサイクルについてお話ししましたが、それぞれの課程でストレスとなるものも、乗り越えなければならないものも変わってきます。順次達成していくことで”自分”ができていくのではないでしょうか。

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2004年9月

紅葉
 口を開けば「暑い・・」という言葉が出ていた今年の夏もそろそろ終わりに近づいていますね。夏が終わると秋がやって来ます。秋といえば、食欲の秋、読書の秋、・・と様々ですが、今回は『紅葉』にスポットを当ててみたいと思います。紅葉狩りといえば秋の風流の一つに挙げられるのではないでしょうか。

●紅葉のいろはに・・・
 紅葉と言えば代表的なものに、楓(かえで)と紅葉(もみじ)があります。この両者は植物分類上は 区別されませんが、楓のなかで特に紅葉の美しい種類を「モミジ」と呼ぶ説があるそうです。一方、盆栽の世界では葉の切れ込みの数、切れ込み具合によって両者を呼び分けているそうです。そして、300種もの園芸品種が江戸時代から作り出されていたそうです。紅葉の歴史は長いようですね。

 楓(かえで)の語源は「蛙手(かえるで)」から転じたそうです。水かきのように切れ込みの浅い葉のものを楓というんだそうです。 紅葉(もみじ)の語源は、秋に葉っぱが赤や黄に変わる様子を「紅葉づ(もみづ)」と昔言ったことに基づくそうです。切れ込みの深い楓を紅葉(もみじ)と言います。紅葉を楽しむことができる植物にはステキな花言葉があります。 
  楓=遠慮
  銀杏=長寿 
  南天=私の愛は増すばかり 
  ハゼノキ=真心 
 「もみじ」と「カエデ」が県の花、県の木に指定されているところがあります。どこの県かわかりますか?・・・・・・正解は、もみじは、もみじまんじゅうで有名な広島県の県花になっています。カエデは 山梨県の県の木だそうです。

●秋になるとどうして葉が色づくのでしょうか?
 次は紅葉の仕組みについて説明します。
 紅葉の仕組み
 ◆簡単に説明をすると…
 秋になり日光が弱くなる。→気温が低くなる。→葉っぱのつけ根のところに壁ができ、葉っぱから枝の方に養分が流れなくなる。→葉が赤や黄色に変わっていく。こういった自然界の仕組みによって紅葉が見られるわけです。

 ◆難しく説明をすると…
 カエデ類の葉の細胞には葉緑体という光合成をおこなう器官があります。この葉緑体の中には緑色のクロロフィルと黄色のカロチノイドという色素があるので、光合成をおこなっている夏のあいだ葉は緑色に見えます。ところが落葉前になって光合成を行わないようになると、カロチノイドは残りますがクロロフィルは壊れていきます。すると、黄色の色素だけがあるわけですから葉は黄色く見えるのです。これが黄葉のしくみです。代表的なものにイチョウがあります。

 次に紅葉する葉では、この落葉前にカロチノイドが残るところは同じですが、それに加えて細胞中にあった糖分がアントシアンという赤色の色素に変わります。これが葉っぱが赤く見える理由です。代表的なものに、モミジやカエデがあります。 こうして黄色と赤色の色素があるので葉が赤く見えるのです。アントシアンが出来るには8度以下の低温と十分な光が必要だと考えられています。そのため、日中は暖かく夜冷えるような日が続いた場合は、その後、真っ赤な紅葉が楽しめるというわけです。空気が澄んだ冷え込みの厳しい山あいで鮮やかな紅葉が見られるわけはこうした気象条件が整っているからなんですね。 日本人は、昔から様々な四季折々の歌を作ってきました。紅葉と関係が深い歌をいくつか紹介します。みなさんも歌人気分で一句詠んでみるのもいいかもしれませんね。

「奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋はかなしき」          
        猿丸太夫(さるまるだゆう) 古今集 百人一首

「このたびは 幣(ぬさ)も取りあへず 手向山 紅葉(もみじ)の錦 神のまにまに」
        菅家(かんけ) 古今集 百人一首

「色付くや 豆腐に落ちて 薄紅葉」 松尾芭蕉

 これから秋本番になりますが、みなさんも夜の綺麗なお月様を眺める、美味しい食べ物を食する、紅葉を楽しむ・・・など自分だけの秋の楽しみ方を探してみて下さいね。

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2004年9月

糖尿病
【糖尿病の合併症】

 糖尿病の合併症には、まず3大合併症というものがあります。それは下記の通りです。

1.糖尿病性網膜症
2.糖尿病性腎症
3.糖尿病性神経障害

 この他にも、脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化など糖尿病が引き起こす病気はたくさんあります。しかしどれにも一つの共通点があります。それは何だと思いますか?それは血液の流れが悪くなることと関係があるということです。糖尿病によって引き起こされる数々の病気は、結局は血液の流れが悪いことが原因なのです。今回は、糖尿病性網膜症についてお話ししていきます。

【糖尿病性網膜症とは】

 糖尿病性網膜症は、単純網膜症(初期)・前増殖網膜症(中期)・増殖網膜症(後期)の順に進行していきます。

(1)初 期
 網膜症の最も初期の段階では、網膜の毛細血管が障害を受けます。この段階を単純網膜症といい、その典型的な症状として、点状出血(小さな出血)、白斑(血液中の蛋白質や脂肪が弱くなった毛細血管から漏れてきて、網膜に染み込んで沈着し乾いたもの)、毛細血管瘤(血管の弱くなった部分が膨れてきて、そこに血液が溜まった状態)の3つがあげられます。糖尿病性網膜症にみられる小さな点状出血は、食事療法、運動療法、薬物療法などによる血糖コントロールをしっかり行っていれば、自然に消えていくことが多いので、あまり心配することはありません。ただ出血と同時に、毛細血管瘤や白斑が生じることがあります。白斑は出血より広い範囲に広がる性質をもつので厄介です。この単純網膜症の段階であれば、手術などは行わなくても、血糖のコントロールをきちんと行えば多くの場合、症状が改善されます。

(2)中 期
 血糖値のコントロールが悪い状態が続くと、さらに症状が進み、前増殖網膜症という状態になります。この段階では、単純網膜症の症状に加えて、軟性白斑(白斑のうち輪郭がはっきりしないもの)、静脈の異常、網膜内細小血管異常などが現れます。この網膜内細小血管異常というのは、網膜の細小血管が拡張したり、血液の流れに異常が起こる症状です。

(3)後 期
 さらに症状が進むとぞ、増殖網膜症という状態になります。この段階では、本来なかった場所に新たに血管ができてきます。この血管は新生血管と呼ばれ、網膜の血管が詰まって血液が流れなくなり、その先の神経細胞が酸欠状態になった時、それを補うために新たに作り出される未熟な血管のことです。 この新生血管は非常にもろく、ちょっとした衝撃や血圧の上昇ですぐに破れて、出血を起こします。この出血が網膜内にとどまらず、網膜より前部のゼラチンのように軟らかい硝子体のほうにまで出てくると、出血が広い範囲に拡散します。このような硝子体出血の状態になると、入ってきた光が出血でさえぎられ、網膜の中心部である黄班部というところに届かなくなって、視力障害が起こります。さらに出血がひどくなれば、失明という状態になります。

●網膜剥離が起こることも‥‥‥
 網膜剥離とは、網膜がはがれる病気のことです。網膜がはがれると、その部分は光や色を感じる機能を失って、目が見えなくなってしまいます。新生血管からの出血の後には、しばしば増殖膜という瘢痕組織ができます。これは例えば皮膚を傷つけた時にできる傷痕やケロイドと同じようなものですが、この増殖膜は、収縮する性質があるので、収縮しながら網膜を引き剥がすことになります。これが糖尿病性の牽引性網膜剥離で、網膜がはがれる場所によっては、一晩のうちに目が見えなくなってしまうこともあります。

●糖尿病性網膜症の治療
  前増殖網膜症や、増殖網膜症の段階において、新生血管の発生を防止するために、レーザー光線を使った光凝固という治療を行います。この治療により、前増殖網膜症が増殖網膜症に進行するのを防ぐことができます。このレーザー治療は、現在行われている糖尿病性網膜症も治療法の中で最も効果的であると言われています。

【日常の生活で気をつけること】

  網膜症を進行させる要因には、血糖コントロールの不良状態の他に、発症してから何年になるかという罹病期間(病気にかかっている期間)が関係しています。罹病期間が長くなるに従って、網膜症の合併する率は高くなってきます。ですから、早い時期から血糖の管理をしっかりすることが
極めて重要です。  また、新生血管が出現した場合は、網膜での出血を非常に起こしやすくなるので、増殖網膜症と診断された患者さんは、一定の運動制限を行う必要があります。さらに、目の合併症に関しては、内科と眼科の連携が必要です。網膜症が起こってきた場合には、必ず両方の医師に自分の状態を知ってもらうようにしてください。

 糖尿病網膜症は、ある程度までは自覚症状もなく進行し、失明に至る危険もある恐ろしい病気です。糖尿病と診断されたら、眼科も受診して下さい。網膜症と診断されても、進行する前に適切な治療で阻止していきましょう。
 

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