2005年1月院長より

明けましておめでとうございます。
昨年末にご協力いいただいた「混合診療の解禁」に反対する署名運動の結果、当院だけでもおよそ300名の署名を集めることができ、日本中ではおよそ600万もの署名が集まり、一定の効果を上げることができましたことをご報告いたしますとともに感謝の意を表します。多数の署名の力が国会議員を動かし、最終的に厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣との話し合いにより、いわゆる「混合診療」問題に係る基本的合意文書を出すことで一応決着いたしました。今後も介護保険制度、医療保険制度の見直しやこの合意がきちんと守られていくかなど注意してみていかないといけませんが、とりあえず大切な国民皆保険制度の崩壊を食い止めることができたことを喜びたいと思います。

また昨年末は例年と比較して暖かい日が多く、インフルエンザの大流行はまだ起こっておりませんが、寒くなってくるとそれが心配です。インフルエンザのみならず、風邪にも効果のある予防は手洗いとうがいの励行です。是非行ってみてください。そしてインフルエンザワクチンについてですが、インフルエンザにかかった人の70%から80%の人は、インフルエンザの予防接種を受けていれば、インフルエンザにかからずにすむか、かかっても症状が軽くてすむという有効性が証明されています。特に高齢者の場合は、インフルエンザによる入院・死亡を減らすことが証明されています。しかし、インフルエンザに効果のあるワクチンは、接種後その効果が現れるまで約2 週間程度かかり、約5 ヶ月間その効果が持続することと、我が国のインフルエンザの流行はおおよそ12 月下旬から3 月上旬が中心となりますので、12 月中旬までに接種をすることが勧められています。まだ接種を受けていらっしゃらない方はなるべく早く受けられることをお勧めいたします。

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2005年1月心理室より

心の葛藤
 人は誰でも迷ったり、悩んだり、困ったり葛藤しながら生きています。今回はその「葛藤」についてお話したいと思います。

 「葛藤」とは同じくらいの強さの欲求が複数あり、その中からどれを選んで行動しようか悩むことをいいます。
 ドイツのレヴィンは「葛藤」を3つに分類しました。

●「接近―接近型:どちらかを選ぼうか迷うとき」
どちらに対してもプラスの感情があって悩んだり迷ったりする状態のことをいいます。解決は容易なように思われますが、一方を選択した後でその選択が間違っていなかったという気持ちが強くなり、再び悩む原因になってしまうことも考えられます。
例)同じくらい仲の良い友人に同時に誘われどちらを選ぶか迷ってしまう。

●「回避―回避型:前にも後ろにも進めないで迷うとき」
 2つのマイナスの感情があり、そのために迷い悩む状態をいいます。この場合、うまく逃げたり、我慢し受け入れて解決しようとしますが、ストレスがたまりやすいことが考えられます。
例)父におつかいを頼まれたが外は雨が降っていて行きたくない。しかし行かなければ父にしかられてしまう。

●「回避―接近型:好奇心はあるが行けば必ず恐怖心が生じるような場合」
 心の中にある良心や道徳心、義務感と、予測される行動の結果が混ざり合い、恐れや不安がおきて欲求不満になる状態をいいます。
例)お酒を飲みたいが車を運転しなければならない。

 良心、道徳心を優先する気持ちが強く欲求を抑えすぎてしまう場合や、また、自分自身の中で起きている葛藤をしっかり自覚できず、本当は自分が感じている気持ちなのに、他者が感じている気持ちを自分に向けているのだと思ってしまい(例:自分が相手を嫌いなのに相手が自分を嫌っていると思う)、相手をコントロールすることにより自分の葛藤をコントロールしようとする、行動上の問題が起きてしまうことも考えられます。

 心の中でどのような葛藤が起きているかを観察、自覚し、その人らしい解決の仕方、判断、行動ができ、欲求不満に耐える力も持っていることが望ましいのではないでしょうか。

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2005年1月

薬 膳
「薬膳」という言葉を知っていますか?「薬膳」という言葉は、1980年頃、北京のレストランで初めて使われましたと言われています。この「薬膳」、言葉自体は新しいのですが、中身は長い歴史を持っています。皆さんも一度は「薬膳」という言葉を耳にされたことがある方が多いのではないでしょうか?
今回は、この薬膳について考えてみたいと思います。

【薬膳の起源】
 薬膳という言葉は、いつの間にか身近なものになっていますが、薬膳は中国医学の歴史とともに歩んできました。薬膳の起源は中国の王朝にあります。周代(紀元前10世紀以降)に皇帝の食事を管理する「食医」という医者がその始まりなんだそうです。「食医」は、食べ物で健康管理、病気治療を行っていました。食べ物で病気を予防し、食べ物で病気の治療をしていたのです。まさに「医食同源」という考え方です。

【日本における薬膳】
「食」とは、文字の通り「人が良くなること」を指すと考える人がいます。間違った食事を続けていると、いつの間にか健康を害し病気になると考えられています。

 日本人は、古くから薬草や薬になるようなものを、日常の食生活の中に取り入れて食べる習慣がありました。病気になってから、薬を服用したり、医師にかかるのではなく、普段から体力を高めておき、自然治癒能力を強くするという考え方に基づいているのです。

 その一つが節供の発想で、すべて季節の分れ目に設定してありますが、それらの日は体調を崩しやすく、油断をすると病気になりがちなため、いつも以上に注意をしようという考え方が背景にあります。この日本人の優れた生活の知恵は、まさに中国における医食同源の考え方と同じようなところがあるようです。

【節供の発想とは?】
●一月一日の元旦に飲む「お屠蘇」(おとそ)という漢方の酒は、悪霊を払う酒であり、病気を避ける酒として服用されてきました。山椒や肉桂、桔梗、甘草などが入っており、保温や健胃、強心などの効能があると考えられています。

●一月七日にはせり、なずな、ごぎょう、はこべら、仏の座、すずな、すずしろといった7草の入ったおかゆを食べて、胃腸の調子を整えます。そして、春からの田植えに備えたと言われています。この7草には解毒作用や消化能力を高める効果があると言われています。

●三月三日はひな祭りで、甘酒を飲みます。発酵食品のため、酵母や麹菌、乳酸菌などが含まれており、整腸効果が高いそうです。なぜ、女の子にもこの甘酒を飲ませるかというと、厄払いをするためだと言われています。酒には悪い霊を追い払う力があると信じられていたからです。

●五月五日は、菖蒲の節供であり、ショウブ湯に入り、ヨモギを入れたちまきや柏餅を食べます。ヨモギには滋養強壮や解毒作用があり、カロチンやビタミンCも多く含まれています。

●七日七日】は七夕で、農業の節供として考えると、炎天下で田の草取りなどの重労働をしなければならない時です。そのため、この日は織姫様と彦星が再会をするという天の川になぞらえて、そうめんを食べて体力をつける日だと考えられていました。昔から夏の贈り物というと、江戸でも上方でも
そうめんと決っていたのは、七夕信仰と結びついているためだと考えられており、そうめんは食欲の無くなる夏を無事に乗り切るための体力食だと言われていたようです。

●九日九日は菊の節供で、この前後が稲の取り入れの最盛期であり、農家にとっては、一年中で最も忙しい時期です。疲労も頂点に達する時であり、この節供には菊の花を酒に浸して飲み、菊の花の酢のものやお浸しを食べました。菊の花には鉄分やビタミンB1、ビタミンCが多く含まれており、血行を良くしてくれるため、疲労が早く回復すると言われています。

 このように「節供」の習わしをとってみても、日本人は体調を崩しやすい季節の変わり目を乗り切るために、食による健康管理を実に上手く考えていた民族なのです。みなさんも食べすぎた次の日は、食べる量を少なめにするなど自分なりの習わしを決めてみるのもいいかもしれませんね。

【すぐに実行できる薬膳】
 薬膳という言葉は聞き慣れていても、いざ薬膳料理を作ろうとすると、何だか高価な食材やなかなか手に入らない調味料が必要なのではお思いかもしれません。けれど、面倒なことは考えずに、まずは今すぐに実行できそうな薬膳を考えてみてはどうでしょうか。

 例えば、当たり前の話なのですが、健康を維持するために1日3食決まった時間に決まった量を食べることから始めるといったことです。また、旬のもの、自然の食材を豊富に取り入れることを心がけてみて下さい。旬のものは、季節気候にあった食べ物です。食べ物の性質で、暑い時期には
寒、涼のもの、寒い時期には熱、温のものがバランスを保つと考えられています。旬のものは、それを食べるだけでこのバランスを保つようになってます。 自然とは不思議なものです。旬のものを食べるだけでも、病気に対する抵抗力、免疫力は上がると言われています。

 新しい年がやってきました。皆さんもこの時期に、もう一度、自分の食生活について考えてみてはいかがでしょうか?

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2005年1月

アトピー性皮膚炎

【アトピー性皮膚炎とは?】
 一般的にアトピー体質と言われる人にいろいろな刺激が加わって生じる湿疹です。痒みが強く、年齢によって現れる症状が異なり、乳児では顔面・頭部が赤くただれて湿性の場合が多く、成人では主に関節屈側に丘疹(盛り上がった湿疹)となり乾燥している状態が多いが、人により症状は様々で、症状により軽微から重症まで分類されています。

アトピー性皮膚炎による分類
重症・・・症状が重症化して、日常生活が不可能な状態を指します。顔面のむくみとジクジクした紅斑や丘疹が多発し、細菌感染(黄色ブドウ球菌)等の合併症も起こる可能性があります。

中等症・・ジクジクしかけた紅斑や肌が魚の鱗状になったような症状を主体とした状態を指します。

軽症・・・皮膚の乾燥と軽い紅斑、肌が魚の鱗状になったような症状を主体とした状態を指します。

軽微・・・炎症や紅斑はほとんどなく、皮膚の乾燥を主体とした状態です

 アトピー性皮膚炎で患者さんが最も苦しめられる症状は「かゆみ」です。特に子供は我慢することができず、かきこわして血が出るまで引っ掻いてしまいます。自分で引っ掻くことのできない乳児期などは、母乳を飲む時にお母さんの乳房にこすりつけて、または抱っこされている時にお母さんの服にこすりつけて掻いています。 

【かゆみはどんな時に起きる?】
●布団にはいるとかゆくなる?
お風呂の入ったり布団に入って身体が温まると、途端にかゆくなります。これは、皮膚が温められて、かゆみ神経がかゆみを感じやすくなるためです。また、仕事や遊びに熱中している時はあまりかゆくないのに、ほっとしている時にかゆみを感じやすいということがよくあります。夜、眠る前が一番かゆいと訴える患者さんが多いのは、布団に入って身体が温まるのに加え、まどろみ始めて緊張がゆるむため、かゆみが倍増していると考えられます。

●ストレスでかゆくなる?
遊びや好きなことに熱中している時はかゆくないのに、勉強したり人前での発表など嫌なこと、イライラすることがあると、とてもかゆみが強くなります。受験が近づくとアトピー性皮膚炎が悪化し、合格すると急に軽くなるというのはよくある話です。ストレスはかゆみを悪化させる大きな原因と考えられています。

●季節によってかゆみの程度が違う?
アトピー性皮膚炎には季節性があるといわれています。
夏場に悪化する人もいれば、冬場に悪化する人もいて、かなり個人差がみられます。

冬に悪化するタイプ・・・寒くなると、肌の乾燥がますます強くなるため、かゆみがひどくなります。
夏に悪化するタイプ・・・汗をかくと、それが刺激になってかゆみがひどくなります。また、夏場は細菌が繁殖しやすくなり、細菌によって皮膚の炎症が悪化するとかゆみが強くなります。

次回はアトピー性皮膚炎の治療法をお話しします。

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