2004年11月

鍋料理

  日が落ちるのが早くなり、朝晩の冷え込みを感じるようになりました。次第に冬が近づいてきているようです。さて、冬の人気ナンバーワン料理と言えば「鍋」ではないでしょうか?今回は、心も体も温まる鍋の秘密に迫ってみたいと思います。

【鍋料理の歴史】
 鍋料理は一体いつからあるものなのでしょうか?鍋料理の歴史を振り返ってみましょう!

●古代
 調理用具・鍋の誕生
調理用具としての鍋そのものの歴史は古く、古代遺跡からも土鍋が出土しています。「なべ」の語源は「菜(な)を煮(へ)る」と言われ、おかずを煮る土器のことを指しているそうです。

●室町~戦国時代  あの松尾芭蕉も食べていた!?
この時代の人々は、ご飯と「汁」もので、お腹を満たしてため、「汁」はおかずであったと考えられます。そのため、肉類・魚介類を「汁」に仕立てた料理から鍋物が発展してきました。冬に猟をする狸や兎が「狸汁」「兎汁」となり、それらの「けもの汁」は熱いまま食べるので、煮ながら食べるという習慣が生まれました。当時、松尾芭蕉が句に詠んだ「ふぐ汁」とは今で言う「ふぐ鍋」のことだと考えられ、あの松尾芭蕉も鍋を食べていたということになるのです。

●江戸中期以降   福沢諭吉も食べていた?!
 「汁」ではなく「鍋」という料理になったきっかけは、「小鍋立て」という料理方法の普及であると言われています。「小鍋立て」とは、七輪・火鉢などに鍋をかけ、煮ながら食べるいわゆる「鍋」料理で、湯豆腐やどじょう鍋などから始まりました。鍋料理が本格化したのは、「薬喰い」と言われた獣肉料理の専門店が増え始めてからだそうです。桜鍋(馬肉)・紅葉鍋(鹿肉)・ぼたん鍋(猪肉)が流行したと言われています。しかし、当時はまだ肉食を嫌う風習が強く、鍋を食する人はわずかしかいなかったと考えられます。福沢諭吉も安政4年(1857)頃に牛肉を食べたと言われていますが、あまり良い印象ではなかったそうです。

●明治時代 明治天皇も食べていた!
  鍋料理が本格的に庶民の生活に入ってきたのは、明治以降だと言われています。明治2年(1869)、江戸に牛鍋屋が相次いで開店しました。いわゆる「すき焼き」屋です。明治5年(1872)には、明治天皇自らが肉食の禁を破り、大流行となったそうです。それは文明開化・富国強兵のシンボルであり、また一種の食の規制緩和でもあったわけです。牛鍋を食べることは庶民にとって、一番身近な文明開化だったというわけです。「牛鍋食べてないの?」「遅れてる~!」そんな会話が交わされていたのかもしれませんね。

【鍋料理で心と体の癒しを!】
 鍋の最大の魅力は何と言っても「温かい」ことです。人間にとって温かい食べ物は、体にも心にも、とても重要なことだと考えられます。

●心のヒーリング
 鍋を囲むと「次、これを入れて」「コレあげる」と話題が無くても話が続きます。普段の料理と鍋料理で家族の会話数を比較した実験では、鍋料理では圧倒的に会話の数が増えるという結果が出ました。つまり、鍋はみんなで調理しながら食べるものだからでしょう。
ワイワイ喋りながら食事のできる鍋は、最高のヒーリング・フードと言えるのではないでしょうか。最近、家族の会話が減ったと感じている人は、夕飯に鍋料理を企画してみてはいかがでしょうか?

●体のヒーリング
 鍋は冬を乗り切る料理方法だと考えられます。野菜は煮込む事によって食物繊維が柔らかくなり、生で食べるよりも多くの量を食べることができます。ミネラル・ビタミン・ペクチンなども摂取することができます。魚はアラ、肉は骨つきで煮込むと、普段は摂取しにくい、良質のゼラチン質・コラーゲンが摂れ、美肌効果も期待することができます。
「アツアツ」鍋は体に良いことがたくさんあるようです。

【冬のお鍋「オススメ食材」!!】
①海藻類
 カルシウム・ビタミン・鉄分・リン・ヨードなどが含まれます。海藻は、陸の野菜に劣らず、栄養素が豊富で、しかも低カロリーです。ダイエット中の人にもおススメです。

②葱
 緑の葉は捨ててはいけません! 葱の白い部分には硫化アリルという物質が含まれ、消化吸収を助けます。その他に殺菌作用、食欲増進、血行を良くする、風邪・頭痛・下痢にも効果ありの万能野菜だと言われています。白い部分だけでなく、緑の葉にもビタミンA・C、カルシウムが含まれています。ですので、葱は白い部分も緑の葉の部分も両方食べるのがオススメです!

③大根
 大根には、消化酵素が含まれ、胃腸を丈夫にしてくれます。皮の近くは、ビタミンCが特に豊富です。しかし、皮をむいて水にさらすと大量にビタミンC壊れてしまうので、皮をむかずにそのまま食べるのがオススメです!鍋に入れなくても、皮つきのまま大根おろしにし、薬味として使ってもいいでしょう。

④レタス
若さを保つビタミンEを含め、各種ビタミンが豊富です。ビタミンEはビタミンAの吸収を助け、血液循環を良くし、肌のシミを予防する効果があります。ビタミンEは熱に強いので、鍋物にもOKです。鍋にレタスというと何だかピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、、サラダよりたくさんの量を食べることができますので、ぜひ一度お試しあれ!

④春菊
 春菊にはカロチンが豊富に含まれています。カロチンは体内でビタミンAに変化し、皮膚・のど・消化管などの粘膜を強くする働きがあります。さらにビタミンB2・C・鉄分なども含まれており、栄養面もバッチリ!鍋にすれば量もたくさん食べることができるますのでオススメです。
 
⑤キノコ類
 ミネラル、ビタミンDなどを含みます。。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする効果もあります!シイタケのビタミンDは天日に干すと10~20倍に増えるので、生シイタケよりも干ししいたけの方が良いでしょう。シイタケの他に、エノキ、マイタケ、シメジ、エリンギと様々なきのこが出回っていますので、それぞれのご家庭で工夫してみて下さい。

【日本の鍋(Japanese Nabe)!!】
 さて、あなたはいくつ知っていますか?

●石狩鍋 (北海道)
 300年ほど前、アイヌ民族が野菜と鮭を塩味で食べたのが起源だそうです。後に味噌を入れるようになったとか。

●しょっつる(塩汁)鍋 (秋田県)
 しょっつる(魚醤汁)と白身魚と各家庭にあるもので作るそうです。昆布だしを、しょっつるで味を整え材料を入れます。

●あんこう鍋 (茨城県)
 骨つきのあんこうと野菜で作ります。だし汁の中に焼き味噌(あん肝と味噌をあわせて焼いたもの)を入れます。かつて漁師達が船の上で冷えた体を温めるために食べた、あら汁がルーツなんだそうです。

●カキの土手鍋 (広島県)
「海のミルク」と呼ばれるほど栄養豊富で、しかも低カロリーなカキ。カキ以外に、春菊・ネギ・きのこ・焼き豆腐などが入るそうです。土手の味噌は辛めの赤味噌+白味噌のブレンドが一般的なんだとか。

●鶏の水炊き鍋 (福岡県)
 薬膳の国・中国より伝わったとされています。骨つきの地鶏と野菜が入っています。

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