ワクチン接種について

今年度の9月よりポリオの『不活化』ワクチンが導入されます。

従来の生ワクチンから不活化ワクチンへの定期接種の一斉切り替え時期は9月1日から開始され、9月以降は生ワクチンは任意接種としてなら接種可能となります。その為、保健所での生ワクチンの接種は行われません。

名古屋市では、名鉄病院及び大同病院予防接種センターにて、この任意接種が窓口負担有りで受けられます(名鉄病院:3500円、大同病院:3675円)

不活化ワクチンは定期接種の扱いですので、窓口負担無料の接種となります。

ポリオとは

ポリオとは急性灰白髄炎の別名で、WHOが根絶のために各国と協力して対策を強化している疾患です。ピコルナウイルス科、エンテロウイルス属のポリオウイルスによって発症するウイルス感染症のことで、ポリオは、Poliomyelitis(ポリオマイアライティス)の省略形です。

2000年、WHO西太平洋地域では地域における根絶宣言が出され、同じくヨーロッパ地域でもまもなく根絶宣言が出されようとしており、全体的には確実に患者数の減少に向かっています。ポリオ流行の記載は18世紀頃からみられ、1950年代まではしばしば世界各地で流行しました。日本におけるポリオは、1940年代頃から全国各地で流行がみられ、1960年には北海道を中心に5,000名以上の患者が発生する大流行となりました。

病原体であるポリオウイルスは経口的にヒトの体内に入り、咽頭や小腸の粘膜で増殖し、リンパ節を介して血流中に入ります。その後、脊髄を中心とする中枢神経系へ達し、脊髄前角細胞や脳幹の運動神経ニューロンに感染し、これらを破壊することによって典型的なポリオの症状を生じます。発症後1週間を経過すると、咽頭分泌液にはウイルスはほとんど排泄されなくなりますが、糞便には数週間にわたって排泄されるので、感染源として注意が必要です。

 

ポリオの症状と治療

感染者の90~95%は不顕性に終わり、約5%(4~8%)では、発熱、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐などの感冒様症状に終始し(不全型)、1~2%では上記の症状に引き続き無菌性髄膜炎を起こします(非麻痺型)。

定型的な麻痺型ポリオを発病するのは感染者の0.1~2%です。その場合には6~20日の潜伏期をおき、前駆症状が1~10日続いた後、四肢の非対称性の弛緩性麻痺(AFP)が出現します。この場合、特に小児における前駆症状は2相性となることが多く、初期の軽い症状の後1~7日の間隔をあけて、表在反射消失、筋肉痛、筋攣縮などの前駆徴候がみられ、その後麻痺に進展します。

しかし、全く前駆症状なくして麻痺が現れる症例もあります。麻痺は下肢に多くみられ、知覚障害はみられません。麻痺型としてはこのような脊髄型が大部分ですが、球麻痺を合併して嚥下、発語、呼吸が障害されることもあります。多くの場合、麻痺は完全に回復しますが、発症から12カ月過ぎても麻痺あるいは筋力低下が残る症例では、永続的な後遺症を残す可能性が高くなります。死亡率に関しては、小児では2~5%ですが、成人では15~30%と高くなり、特に妊婦では重症になる傾向があります。球麻痺を合併した場合の死亡率は、25~75%と高率です。

ポリオは、特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。呼吸障害や分泌物喀出不全が認められる例では、気管切開、挿管、あるいは補助呼吸が必要となります。

 

ワクチン接種歴別のスケジュール

※生ワクチン2回で終了、生ワクチン1回をカウントして3回+1回※booster効果
booster効果とは、体内で1回作られた免疫機能が再度抗原に接触することによって、さらに免疫機能が高まる追加免疫効果のことです。

 

ケース①                 ケース②

ポリオワクチンをまだ1回も受けていない 生ポリオワクチンを既に1回受けている

不活化ワクチン(1回目)           生ワクチン接種(済)

↓20日以上おいて                ↓27日以上あけて

不活化ワクチン(2回目)           不活化ワクチン(1回目)

↓20日以上おいて               ↓20日以上おいて

不活化ワクチン(3回目)           不活化ワクチン(2回目)

↓6ヶ月以上おいて※booster効果             ↓6ヶ月以上おいて※booster効果

不活化ワクチン(4回目)           不活化ワクチン(3回目)

ケース③

不活化ポリオワクチンを1~3回受けている

不活化ワクチン1回分(済)不活化ワクチン2回分(済) 不活化ワクチン3回分(済)

↓ 20日以上おいて     ↓ 20日以上おいて        ↓ 6ヶ月以上おいて※booster効果

不活化ワクチン(2回目)   不活化ワクチン(3回目)   不活化ワクチン(4回目)

↓ 20日以上おいて     ↓6ヶ月以上おいて※booster効果

不活化ワクチン(3回目)  不活化ワクチン(4回目)

↓6ヶ月以上おいて※booster効果

不活化ワクチン(4回目)

ケース④

生ポリオワクチンを既に2回受けている
生ワクチン接種1回目(済)

生ワクチン接種2回目(済)

不活化ワクチンは必要ありません。

今までどのワクチンを何回接種したのか、ケースによって接種スケジュールは異なります。

予防接種の数が大幅に増加し、細かなスケジュール管理をしないと必要な接種を期間内に受けられないということにもなりかねませんので、母子手帳等への記録がとても大切です。
当院でもスケジュール管理をお手伝いしながらの予防接種を行なっておりますので、お気軽に職員までお声かけください。

カテゴリー: 201209, その他, 病気・治療 | ワクチン接種について はコメントを受け付けていません

痛みについて

痛みは、私たちが日常生活の中で最も多く体験する感覚の一つです。しかし、単に深い感覚というだけでなく、虫歯になると歯が痛くなり、虫垂炎でお腹が痛くなるように、痛みは身体のある部位に何らかの異常が発生したという信号を送る役割を果たしています。

痛みには、ケガややけど、突然の病気などによって起こる「急性疼痛」と、原因の治療を行っても何ヵ月も痛みが続いたり再発したりする「慢性疼痛」の2つに大別されます。

「急性疼痛」はからだを守る反応の1つで、重要な役割を持っています。脳が「痛い」と認識することによって、病気やケガで傷ついた部分を一時的に安静にさせ、修復を促したり、免疫反応を呼び起こすという働きをするのです。一方の「慢性疼痛」は、痛みの原因が治っても痛み続ける、あるいは原因が治りにくいために痛み続ける状態です。痛みには大きな働きはなく、むしろ痛みの存在自体が病気となって、日常生活にも支障が出るようになります。

今回は、「慢性疼痛」についてあげてみたいと思います。

「慢性疼痛」では、自律神経失調症状の様な倦怠感、睡眠障害、食欲減退、食物に対する味覚消失、体重減少、便秘等をしばしば引き起こし、心理的な問題が生じてくることもあります。また、一定の絶え間ない痛みは、活動を制限するほか、抑うつや不安を生じさせ、ほぼすべての活動を阻害してしまうこともあります。

慢性疼痛の種類は、以下の3種類があるとされています。

侵害受容性疼痛

刺激や炎症による痛みです。ケガをしたときに感じる痛みで、ケガが治ると痛みもなくなります。

神経障害性疼痛

ケガや病気が原因となり、障害を受けた神経が興奮し続けた状態です。障害を受けた神経から、痛みを伝達する物質が過剰に放出されることがあります。たとえ痛みの原因や元の病気が治っても、痛みが長期間続きます。少しの刺激でも強い痛みを感じたり、天気の変化や、何もしていないのに痛みを感じることもあります。

心因性疼痛

心因性疼痛は、心理的要因や精神的要因が原因となる痛みです。検査をしても器質的要因は見当たらず、医学的に説明できない不合理な痛みが起こります。痛みの範囲が侵害された部位とは異なること、痛みが神経の走行に沿っていないことなどがみられたら、心因性疼痛であることが疑われます。こうした心因性疼痛では、痛みの原因が心理的要因であることを気づかせることによって、改善することがあります。心がストレスを受けることで、痛みを感じるようになった状態です。

しかし、長い間痛みを感じていると、痛みも単純ではありません。3種類の痛みが深くからみ合った状態、すなわち混合性疼痛になっています。

治療としては、薬物療法、理学療法や作業療法等の物理的方法、行動療法や認知療法等の心理的治療が主にあるとされています。また、心理的治療の認知療法の疼痛コントロールとして、リラクゼーション法、気分転換法、催眠法、バイオフィードバック等が有用であることもあります。しかし、専門家による訓練が必要な技法もあり、症状の出現の仕方も多種多様であるため、気になる症状のある方はご相談いただければと思います。

カテゴリー: 201209, リハビリテーション, 心理室より, 病気・治療 | 痛みについて はコメントを受け付けていません

2012年7月

沖縄では梅雨明けしたようですが、まだまだ名古屋では梅雨の真っ最中です。屋外が暑く、屋内が冷え込むと、出入りすることで自律神経のバランスが乱れやすくなり、精神的にも不安定になってしまいます。身体や心の不調をお感じになった際にはご相談ください。
 またエアコンの設定温度も、夏は高めに、冬は低めにしておいたほうがいいでしょう。身体と心のバランスを保つために有効ですし、節電にもなりますね。当院でも特に診察室に入るとムッとするとのご意見もいただきますが、なるべく屋外との環境の差を少なくして、自律神経のバランスを保つための配慮ですので、ご理解下さい。

 6月末には電力会社各社の株主総会が行われ、昨年同様、脱原発の可否が争点になりましたが、電力会社各社は原発の再稼働をする姿勢を変えず、一般国民との意識のズレが広がっているように感じました。これからの生活をどう変えていくのかを一人ひとりが問われているのだと思います。

 また消費税増税が衆議院を通過しましたので、いよいよ増税が目前となりました。社会保障を充実させるためには、諸外国と比べて低い税負担をあげる他はないのですが、あがった税金の使い方を決める前に増税だけを決めた現政権のやり方には疑問を感じます。

 もしかすると混乱した状況から解散総選挙があるかも知れません。選挙こそが我々国民、有権者の声を政治に反映させる機会です。良く考え、投票行動に移してください。

カテゴリー: 201207, 院長より | 2012年7月 はコメントを受け付けていません

2012年7月

子育て中のイライラについて
 もうすぐ夏休みの季節ですね。子供たちにとっては待ちに待った夏休みでも大人にとっては、より大変さが増すこともあるかもしれません。仕事をしているお母さん、お父さんは育児と家事、仕事に追われて大変な日々を過ごされていることだろうと思います。特に朝の準備でどっと疲れが出てしまうこともあるかもしれません。専業主婦、主夫の方も育児、家事をずっとやっていると息が詰まることと思います。休みもなく、日頃なかなか感謝してもらうことも少なく、やりきれなくなることもあるのではないでしょうか。身体や時間に余裕がなくなると、心にも余裕がなくなり、イライラすることが増えるかもしれません。そして、感情的に子どもにあたってしまい、後で後悔してしまうことはありませんか。
 そうしたイライラに対してどのようなことができるのか、いくつか挙げてみたいと思います。

||| 怒る前にその場から移動し、時間と距離をおいてみる |||

・場所を離れたときに、深呼吸をしたり、整理整頓をするなど自分が落ち着ける行動を見つけて試してみましょう。
・小さい子どもの場合は安全を確保してから、(行きたくなくても)お手洗いにいってひと休みするなども方法です。

||| どうしてこの子は今こういうことを言うんだろうか、と客観的に考えてみる |||

・親子であることを少し忘れて、子どもを観察してみましょう。親を困らせるようなことを言っているのは、自立心が芽生えているからかもしれませんし、不安なことがあるかもしれません。子どもの表情や言っている内容などを客観的に捉えることで、イライラの感情よりも解決策を考えようとする肯定的な気持ちになることがあります。

||| 自分はどうしてこんなにイライラしているのだろうか、と客観的に考えてみる |||

・例えば、朝イライラが大きい場合は時間に追われていることが原因のひとつかもしれません。10分でも早く起きてみるだけで余裕がうまれることがあります。
・一人で抱え込んでいませんか?家族と分担したり、お願いするなど話し合ってみてください。
・同じような状況でも子どもにあたったりせずにできるときがありませんか?うまく対処できる時とイライラするときの違いは何なのか考えてみてもいいかもしれません。

||| 他の人に任せられそうなら、お願いする。もし、誰も頼れる人がいなければ、公共の施設や保育園、学童などを積極的に利用する |||

・就学前の子どもについて:地域子育て支援センター事業や図書館、公民館、無料のキッズルームなどがあります。市のホームページや区役所などで情報を集めることができます。
・就学後の子どもについて:トワイライトや学童保育、親子参加型の催しなどがあります。

||| 子どもの特性 |||

・すぐに癇癪を起こして手がつけられなくなる。他者と目をあわせることができない。集団の中や外出時に特に落ち着きがなくなる等、子ども自身の大変さがある場合は専門の医療機関や保健所等などに早期に相談することをお勧めします。

||| その他 |||

~ のことを試してみてもなかなかイライラが改善されない場合には精神科や心療内科、保健所や子育て相談センターなどを尋ねてみてください。敷居が高いし、責められるのではないか、恥ずかしいという思いもあると思います。ですが、あなただけが特別ではありません。誰にでも起こり得ることなのです。

 昔は大家族で、近所付き合いも密接なため、いろいろな人に子どもをみてもらえる環境がありました。しかし、現在では頼れる人が近くに住んでいない場合も多いことと思います。いずれにしても一人で抱え込まず、利用できるところを積極的に活用することが大事なことだと思います。

カテゴリー: 201207, 心理室より | 2012年7月 はコメントを受け付けていません