2002年9月

リウマチ・膠原病
 【膠原病って何ですか・・・?】
  ・ リウマチ性疾患(関節や筋肉に痛みやこわばりを来す病気
  ・ 結合組織疾患(細胞間の結合組織に異常を来す病気)
  ・ 自己免疫疾患(免疫に異常がみられる疾患)

この3つの病気が重なり合ったものです。細胞と細胞を結びつける組織に炎症が起きる病気の総称です。膠原病とは、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎(または多発性筋炎)、結節性多発性動脈炎という5つの似かよった病気をまとめた呼び名です。
 共通の病変として、全身の皮膚・筋肉・関節などに顕微鏡で見ると膠状変化(結合組織に共通の変化がみられる)がみられることから「膠原病」と呼ばれます。膠原病の中でももっとも患者さんが多いのが慢性関節リウマチで、通称リウマチと呼ばれます。リウマチや膠原病の共通の症状として、発熱・関節痛・筋肉痛・だるい・疲れるといった症状がみられます。
 膠原病がどうして発病するのかはまだよくわかっていません。しかし、いくつかの要因が重なり合って発病すると考えられています。

1.体質と素因
 遺伝性の病気ではありません。しかし、膠原病にはかかりやすい体質と素因があります。だからといって、必ず膠原病が発病するわけではありません。
2.環境因子
 発病の誘因となるもの、感染症(ウィルス・細菌・真菌<カビの一種>) が考えられており、これらの因子は発病された方の症状を悪化させる原因にもなります。
3.免疫異常
 膠原病の場合、自分自身の体の成分を外から侵入してきた異物と勘違いして、攻撃してしまうことです。そして、この自己抗原に対する免疫反応や自己抗体をつくる免疫反応が止まることがなく持続するのです。
4.その他 
 膠原病の多くは、妊娠のできる年齢層の女性に発病しやすい特徴があります。ここから、発病の原因の中に女性ホルモンが関係していて、免疫の異常を高めるように働いているのではないかと考えられます。

 【膠原病が疑われる症状】
 全身 … 抗生物質が効かない原因不明の発熱がある・微熱が続く・体重が減少する・疲れやすい・気力がない
 関節や筋肉 … こわばる・痛む・腫れる・力が入らない
 皮膚 … 赤い斑点が現れる・硬くなる・黒ずむ・しこりがある
 レイノー現象 … 手指の色が白色や紫色になる
 その他 … 首や脇の下のリンパ腺が腫れる・顔や下肢がむくむ・口が渇く・目がゴロゴロする

 以上の症状がひとつでなく複数で現れたときに膠原病が疑われます。

 次号では、膠原病に含まれる病気についてお話します。

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2002年7月院長より

 この文章を考えている最中に、健康保険法改正案が衆議院で与党により強行採決され、可決されてしまいました。本年10月からの老人の医療費を1割の定率(一部2割)にし、来年4月から社保本人の窓口負担を3割に上げようとする法案です。国民の負担ばかりを上げるこんな法案が通ってしまうのも、日本の医療について、国民の多くが誤解をしている事、またそう思わせるように情報が操作されている事が原因の一つだと思います。
 
【誤解】日本の医療は、費用が高くて、質が低い
【正解】日本の医療は、費用が安くて、質が高い

その根拠は、
1)世界保健機構(WHO)が、昨年、加盟191カ国の保健医療システムについて比較した結果、総合評価で日本が世界で一位でした。

2)経済協力開発機構(OECD)の調査では、国内総生産(GDP)に対する総医療費の比率は、日本は、先進国中、最も低レベルでした。

3)経済財政諮問会議の声明でも「我が国の健康指標は世界最高水準にある。これは戦後の我が国の医療政策・国民皆保険体制の成果であるといってもよいであろう。」と述べられている。

 つまり、現在の日本の医療制度は、色々改善すべき問題点もありますが、「安くて、質が高い」という点で、世界的に見て最高水準にあります。日本の医療は「高い」、「質が低い」という誤解に基づいた改革は改悪にしかなりません。
 優れた日本の医療システムを壊されないように、皆様方のお力を貸してください。

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2002年7月

慢性肝炎
肝臓の炎症が、6ヶ月以上続いている状態を慢性肝炎といいます。症状は、だるい、疲れやすい,食欲不振などの目立たない軽い症状で、無症状の場合も少なくありません。しかし、採血して肝臓の機能検査をすると肝機能に障害があります。このように、慢性肝炎の症状自体はたいしたことはありませんが、この状態が数年から数十年と長い間続くと、肝硬変に進み、さらに肝臓ガンになる可能性があるので注意が必要です。

肝障害の移行
  【肝臓をいたわる生活のポイント】
・良質なたんぱく質をしっかりとる。
・ビタミン、ミネラルをたっぷりとる
・適正カロリーを心がける。
・食事は三食規則正しく、朝食をぬかない、
夕食は遅くならないようにする
・添加物や加工食品、インスタント食品などを
なるべく避ける。
・原則禁酒とする。
・砂糖は控えめに。

【生活習慣アドバイス】
慢性肝炎の予防法は、肝炎ウイルスに感染しないことです。C型肝炎ウイルスの最大の感染源である輸血は、日本国内ではスクリーニング体制が強化されているためかなりリスクは減りましたが、海外での輸血などに注意しましょう。また、血液に直接触れる行為にも充分気をつけましょう。B型肝炎も海外での輸血などに注意すること、また性行為でも感染するので必ずコンドームを使い、歯ブラシやかみそりの共用といった血液に直接触れる行為は避けるなどの注意が必要です。また、母子感染を防ぐために、妊娠時にキャリアがどうかの検査を受けて対処することが大切です。

【早期発見が鍵です】
肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、病気が進行するまではっきりした症状が出てきません。疲れやすい、だるい、などの体からのサインをすばやくキャッチし、早めに受診しましょう。また、年に一回は、健診で肝臓の検査を受けましょう。異常がある場合は超音波検査やCT検査、腹腔鏡、肝生検などが行われますが、肝炎ウイルスに感染してしまったら、早めに治療することが大切です。

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2002年7月

 痴呆について 3    
前回、前々回に引き続き、痴呆についてのお話をしたいと思います。
今回は、痴呆になってしまった場合の対処についてです。

【コミュニケーションについて】 
 こちらから話しかけて思いのまま語ってもらい、それに耳を傾けて受け止め、訴えには逆らわず、間違いは許容する態度で、その心を知ることが大切です。仲間になれたという親近感と安堵感が生まれるような「なじみの人間関係」を作るように心がけましょう。この関係が上手に築けるかが介護の鍵を握ります。

【食事について】 
 好みに合ったバランスの良い食事を規則正しく取れるような援助が必要です。柔らかく調理したり、細かく刻むなどの工夫をしましょう。食事をこぼしたり、時間がかかっても、叱ったりせずに見守りましょう。食事の時以外に、1日1000cc~1200ccを目安に水分を摂ってもらうようにしましょう。

【排泄について】 
 排泄の失敗は本人の自尊心を失わせてしまします。老人の尊厳を守るためにも適切に対応できるようにしましょう。尿失禁や放尿が見られる時は、排尿パターンや排尿行動の特徴をよく知り、排尿時間に会わせたり排尿のサインをキャッチして、早めにトイレに誘導しましょう。トイレに誘う時は、命令口調は避け、さりげなく声をかけるようにしましょう。

【入浴について】
 入浴を嫌がる場合は強制してもうまくいきません。入浴を嫌う理由の一つには裸になることを警戒する心理が考えられます。いわゆる身包みはがされてしまうことへの抵抗です。どのようなタイミングで、どのように言葉をかけるか工夫が必要です。

【身だしなみについて】 
 身だしなみに気を配ることで生活のリズムを整えたり、生活に張りが出てくるものです。朝は洗面、歯磨き、ひげ剃り、髪をとく、化粧をするなどして、服も寝巻きから着慣れた好みの服に着替えてもらい、身だしなみの基本を守りましょう。

【活動について】 
 痴呆がはじまると、新しいことを覚えるのは難しくなりますが、若い頃からやっていた仕事や趣味などは、多少不完全でも適切な援助があればできます。日常生活の中でも役割をもってもらうようにし、得意なことを行ない、それが評価されるような場を作りましょう。毎日行なっていることでも間違えたり、失敗したりしますが、叱ったり指導してはいけません。危険なことでなければ「良い方法ですね」と支持し、「こんな方法はどうでしょう?」と正しい方法をやって見せます。そうすることで、正しい方法を思い出して行動することができます。

【睡眠について】
 高齢者の睡眠は、一般に寝つきが悪くなったり断続的に浅く、早朝覚醒などの特徴があります。痴呆老人では、睡眠・覚醒のリズムが乱れ、昼夜逆転やせん妄を起こす場合も多いものです。睡眠を阻害する要因のひとつとして、日中の運動不足があります。楽しみながらできる運動や遊び、家事などを行なってもらい、適度の疲労感が感じられるようにしましょう。

【環境について】
 引越しや介護者の変更など、環境の変化はできるだけ避けるようにしましょう。もし、必要な場合も徐々に変えていくようにします。例えば、居室を帰る場合などは、度々そこへ連れて行き、なじみの場所となってから移ってもらうようにするなどです。

【こんな時どうする?】
 ・「お金がなくなった」
 痴呆の方は疑い深くなる傾向があり、大切なものをよく隠します。そして、隠したことを忘れてこのような訴えをするのです。
こんな時は叱らずに優しく声をかけて一緒に探すようにし、なくしたものを自分自身見つけられるように配慮しましょう。

 ・「まだ食べてない」
 食事をしたばかりなのに「ご飯はまだ?」と言うこともよくあります。そして、しまいには「私を餓死させる気だ」と言い出すこともあります。こんな時は「さっき食べたでしょう」と説得しても無駄です。食器をすぐに片付けずに置いておく、昆布のように噛んでもすぐになくならないものを口にしてもらうなどの対処をするのが良いでしょう。

 ・「家に帰る」
 自分の家にいるのに、夕方になると「家に帰る」と言って荷物をまとめ出すことがあります。こんな時は「もう遅いから、今日は泊まって明日にしたら?」と声をかけたり、時には一緒に外に出て歩くことも必要です。

 自分が周りから尊重されていると感じられると精神的にも安定し、自分の力を十分に発揮できるようになります。痴呆老人の現在の姿だけでなく、今まで歩んできた人生の奇跡にも目を向けることが大切です。欠点ばかりに目を向けず、残された健康な部分を支えられるようにしましょう。
 可能な限り介護の役割を分担し、介護者を孤立させない配慮をしましょう。完全主義はやめて、介護をオープンにし、多くの人の協力を得るようにしましょう。  

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