紅葉
口を開けば「暑い・・」という言葉が出ていた今年の夏もそろそろ終わりに近づいていますね。夏が終わると秋がやって来ます。秋といえば、食欲の秋、読書の秋、・・と様々ですが、今回は『紅葉』にスポットを当ててみたいと思います。紅葉狩りといえば秋の風流の一つに挙げられるのではないでしょうか。
●紅葉のいろはに・・・
紅葉と言えば代表的なものに、楓(かえで)と紅葉(もみじ)があります。この両者は植物分類上は 区別されませんが、楓のなかで特に紅葉の美しい種類を「モミジ」と呼ぶ説があるそうです。一方、盆栽の世界では葉の切れ込みの数、切れ込み具合によって両者を呼び分けているそうです。そして、300種もの園芸品種が江戸時代から作り出されていたそうです。紅葉の歴史は長いようですね。
楓(かえで)の語源は「蛙手(かえるで)」から転じたそうです。水かきのように切れ込みの浅い葉のものを楓というんだそうです。 紅葉(もみじ)の語源は、秋に葉っぱが赤や黄に変わる様子を「紅葉づ(もみづ)」と昔言ったことに基づくそうです。切れ込みの深い楓を紅葉(もみじ)と言います。紅葉を楽しむことができる植物にはステキな花言葉があります。
楓=遠慮
銀杏=長寿
南天=私の愛は増すばかり
ハゼノキ=真心
「もみじ」と「カエデ」が県の花、県の木に指定されているところがあります。どこの県かわかりますか?・・・・・・正解は、もみじは、もみじまんじゅうで有名な広島県の県花になっています。カエデは 山梨県の県の木だそうです。
●秋になるとどうして葉が色づくのでしょうか?
次は紅葉の仕組みについて説明します。
紅葉の仕組み
◆簡単に説明をすると…
秋になり日光が弱くなる。→気温が低くなる。→葉っぱのつけ根のところに壁ができ、葉っぱから枝の方に養分が流れなくなる。→葉が赤や黄色に変わっていく。こういった自然界の仕組みによって紅葉が見られるわけです。
◆難しく説明をすると…
カエデ類の葉の細胞には葉緑体という光合成をおこなう器官があります。この葉緑体の中には緑色のクロロフィルと黄色のカロチノイドという色素があるので、光合成をおこなっている夏のあいだ葉は緑色に見えます。ところが落葉前になって光合成を行わないようになると、カロチノイドは残りますがクロロフィルは壊れていきます。すると、黄色の色素だけがあるわけですから葉は黄色く見えるのです。これが黄葉のしくみです。代表的なものにイチョウがあります。
次に紅葉する葉では、この落葉前にカロチノイドが残るところは同じですが、それに加えて細胞中にあった糖分がアントシアンという赤色の色素に変わります。これが葉っぱが赤く見える理由です。代表的なものに、モミジやカエデがあります。 こうして黄色と赤色の色素があるので葉が赤く見えるのです。アントシアンが出来るには8度以下の低温と十分な光が必要だと考えられています。そのため、日中は暖かく夜冷えるような日が続いた場合は、その後、真っ赤な紅葉が楽しめるというわけです。空気が澄んだ冷え込みの厳しい山あいで鮮やかな紅葉が見られるわけはこうした気象条件が整っているからなんですね。 日本人は、昔から様々な四季折々の歌を作ってきました。紅葉と関係が深い歌をいくつか紹介します。みなさんも歌人気分で一句詠んでみるのもいいかもしれませんね。
「奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋はかなしき」
猿丸太夫(さるまるだゆう) 古今集 百人一首
「このたびは 幣(ぬさ)も取りあへず 手向山 紅葉(もみじ)の錦 神のまにまに」
菅家(かんけ) 古今集 百人一首
「色付くや 豆腐に落ちて 薄紅葉」 松尾芭蕉
これから秋本番になりますが、みなさんも夜の綺麗なお月様を眺める、美味しい食べ物を食する、紅葉を楽しむ・・・など自分だけの秋の楽しみ方を探してみて下さいね。