軽度認知障害

  全国における認知症の件数は年々増加しています。厚生労働省によると、およそ3年後には全国における認知症の方の総数は約700万人になると推定されています。また、近年では65歳未満の方の認知症である若年性アルツハイマーについても増加しています。

 さらに近年、認知症に類似した軽度認知障害についても注目されています。軽度認知障害とは、記憶などの認知機能が低下するものの、認知症のように日常生活に支障を来さない程度の症状である、いわゆる「認知症予備軍」のことを指します。厚生労働省によると、軽度認知障害の人数は全国で約400万人にも達しているようです。軽度認知障害の方の約半数は、5年以内に認知症に移行するとも言われています。

 軽度認知障害の主な症状として、記憶力や注意力、判断力の低下などが該当します。人の名前を忘れてしまう、何度も同じ話をしてしまう、大事なものをどこに置いたか分からなくなる、などが見られたら、軽度認知障害のサインかもしれません。

 また、軽度認知障害は2種類に分類され、記憶力の低下を伴う場合は「健忘型軽度認知障害」、記憶力は正常であるが、注意力や判断力の低下が散見される場合は「非健忘型軽度認知障害」に該当します。記憶力に問題がない場合でも軽度認知障害に該当する可能性があるため、注意が必要です。

 軽度認知障害は上記のように記憶力や注意力等の低下が見られるものの、認知症と異なり食事や入浴等の基本的な生活を送ることには問題がなかったり、物忘れをすることに自覚があったりする為、症状に気付いたとしても軽視されることが認知症よりも多くあります。しかし、軽度認知障害は、予防により症状の進行を遅らせることが可能である為、少しでもおかしいと思った段階で、進行の予防を開始することが重要となります。認知機能が回復する場合も決して少なくはありません。

 予防の為には、日頃の生活習慣が特に重要となります。規則正しい食生活や定期的な運動、人とコミュニケーションを取ることなど意識すると良いでしょう。自分自身、あるいは周囲に軽度認知障害に該当する可能性がある方がいるかもしれない、と思ったらお気軽に相談してください。

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院長より

今年もまもなく年末を迎えようとしております。月日の遷り変わりの早さに戸惑っています。10月は中旬ごろまで暑い日が続いていましたが、あっという間に寒くなりました。ただ朝夕は冷え込みますが、まだ日中は暖かく、このような寒暖の差が激しくなる時期は自律神経に過剰な負荷をかけますので、動悸やめまい、立ちくらみなど自律神経失調症状が悪化しやすい時期でもあります。症状でお困りの際はご相談ください。

4回目のコロナワクチン接種はもうお済みでしょうか。次々と変異株が出てきて、発症予防効果には疑問があっても重症化予防には確実に効果があるそうなので、可能な限り接種していただいた方が良いかと思います。また南半球でコロナとインフルエンザの両方の感染拡大が見られたとのことで、この日本でも冬に第8波のコロナとインフルエンザ、両方の感染拡大が懸念されています。ですからコロナワクチンだけでなく、インフルエンザワクチン接種も強くおすすめします。幸い今年はインフルエンザワクチンの量は豊富にあるそうなので、多少接種時期が遅れても在庫がないという事態は避けられそうですし、今年は65歳以上の方のインフルエンザワクチン接種は無料となっています。皆様はもう接種あるいは予約をされましたでしょうか。接種後に免疫が作られるのには一ヶ月ほどかかりますから、まだの方はなるべく早く接種しておいたほうがいいと思います。ご検討ください。

政府は保険証を廃止すると言い出しています。マイナンバーカードをむりやり持たせようとする魂胆からの発想のようです。しかしマイナンバーカードは義務ではなく任意だと主張してきていますから、矛盾が出てきます。そこでさらにマイナンバーカードを持たない方用に別の仕組みを作ると言い出しました。もうめちゃくちゃな展開です。わざわざお金をかけて別の仕組みを作るぐらいなら保険証を廃止せずにそのまま使用すれば何も問題ないのに、なぜ無理を通そうとするのでしょうか。裏で大きな利権や縄張り争いが起こっているのでしょうか。国民や医療機関を振り回さないでいただきたいものです。

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院長より

今年も例年同様に不安定な天気が続いています。全国各地で台風やゲリラ豪雨、竜巻など様々な天災が発生していますが、被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復興をお祈りいたします。また、不安定な気候の影響を受け、自律神経も乱れやすい時期です。不調を感じたら早めの受診をお勧めいたします。

猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の第7波ですが、やや減少傾向が見えてきました。しかし新たな変異型も確認され、まだまだ収束には程遠いようです。子供から感染して家族全員が感染あるいは濃厚接触者として社会活動も制限され、その数の多さで医療機関も一時閉鎖あるいは業務を縮小せざるを得なかったりという状況なのに、コロナ患者の発生届が非常に煩雑で、この事務作業に医療機関が疲弊させられています。本当に必要なものだけを登録するよう変更が加えられるようですが、早急に対応してほしいですね。

 またインフルエンザワクチン接種の時期が近づいてきましたが、まだ詳細は未定です。おそらく例年同様の時期になりますが、確定した情報は随時お知らせしますので、お気軽に職員までお問い合わせください。コロナワクチン接種も引続き行っていきますので、まだ未接種の方は副反応の怖さより、感染したときの怖さを考え、デマに惑わされることなく接種していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

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集団と個人

 私たちの周囲には様々な「集団」が存在します。同じ考え方や価値観を持ったもの同士で意図的に形成された集団はもちろん、「日本人」、「会社員」、「A型」といった考え方や価値観に関係なく所属しているカテゴリーについても集団と呼ぶことができます。私たちはそのような集団に対してあらゆる印象を抱きます。「〇〇の国の人は上品だ」「〇〇の趣味をやっている人はみんな元気がいい」などと思うかもしれません。

 一方で自分が所属している集団に対しては、どのような印象を持つでしょうか。「日本人は多様な性格の人の集まりだ」「自分と同じ趣味を持つ人の中には、元気がいい人も大人しい人もいる」などと思うことが多いのではないでしょうか。人は自分の所属する集団にはあらゆる特徴を持った人が所属しているとみなす一方で、自分が所属していない集団については、類似した特徴を持った人の集まりだとみなす傾向にあります。

 自分が所属する集団のことを「内集団」、所属しない集団のことを「外集団」と呼びます。内集団と外集団のどちらに属するかは状況によって異なります。例えばある会社員からみた美容師の友人は、「社会人」というカテゴリーでみれば内集団に属する人となりますが、職業でみる場合は外集団に属する人となります。

 前述のように私たちは、内集団には様々な特徴を持った人が集まっており、外集団は同じような人が集まっていると思うことが多くあります。また、特別な理由もなく内集団を高く、外集団を低く評価することも少なくありません。内集団と比較すると、外集団の人と接する機会は少ないことから、実際は外集団に所属する人々の特徴をよく知らないまま、大まかなイメージを持ってしまうことがあります。このようなことから、外集団に対する偏見や差別が生じる可能性が出てきてしまいます。

 内集団に所属する者同士でコミュニケーションを取ることは、自分のことをよく理解して貰えたり、感情の共有がされやすかったりすることなどから、メリットも多くあります。しかし、所属する人のことをあまり知らないまま外集団に対して印象を抱いてしまうことは、勿体ないような気がします。外集団の人に偏見を抱いてしまいそうになる場合、まずは外集団に所属する人と1対1でのコミュニケーションを取ることを意識することがより重要ではないかと思います。実はこれまで毛嫌いしていた外集団の中にも、自分と気が合う人や、意外にも価値観が同じ人などがいるかもしれません。どのような性格や価値観の人であっても、1対1で接してみると、その人に対して好印象を持ち、そこからもっとその集団に所属する人と接してみたいと思ったり、外集団に属する人に対する印象が変化したりすることなどが考えられます。

 是非、あらゆる考え方を持った人とコミュニケーションを取ってみてください。これまで以上に豊かな対人関係を形成することができるかもしれません。

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