1999年11月

  頻尿の原因
【膀胱の容量が減少している場合】
・単純性膀胱炎・・・大腸菌などの細菌が尿道から膀胱内に入り込むことにより起こります。


・複雑性膀胱炎(慢性膀胱炎)・・・中高年に多く見られる膀胱炎ですぐに再発し、何度も再発を繰り返す事が多く、男性の場合には
【前立腺肥大症】【前立腺ガン】、女性の場合には尿道の狭窄や尿道の憩室【尿道の内側から外側に向かってできる袋状の膨らみ】などの病気が原因となっているようです。

・間質性膀胱炎・・・女性に多い病気ですが、日本人にはさほど見られません。膀胱粘膜の下にある【間質】という組織に点状の出血が起こりますが原因は不明で、現在のところ効果的な薬 がないそうです。

・膀胱腫瘍・膀胱結石・・・膀胱にできた腫瘍が膀胱壁の伸展性が失われます。膀胱内に大きな結石があると、膀胱の容量が減少します。

・膀胱結核・・・結核菌により膀胱に慢性の炎症が起こると、末期には膀胱が萎縮して容量 が減少し ます。

  【膀胱に刺激が続いている場合】
 ・尿管ステント挿入時・・・【尿管結石】の治療をした後に使う尿管ステントの先端が、膀胱の粘膜を刺激したと き頻尿になることがあります。

・神経性頻尿・・・精神的な緊張が原因となる頻尿で、若い女姓や子供に多く見られます。

・脳神経系の病気・・・【脳梗塞】【パーキン病】などにより、脳神経が障害されて頻尿になることがあります。

 ・妊娠・子宮筋腫・・・子宮内の胎児や子宮筋腫が大きくなると、膀胱が外側から圧迫されて頻尿になることがあります。

  【つくられる尿量が増えた【多尿】の場合】
腎臓で作られる尿の量が増えると、頻尿になります。この場合、1回の排尿量は正常ですが、排尿回数が増えるのが特徴です。

  【重篤な病気】
特に夜の尿量が増えます。夜中に何度もトイレに起きて、そのたびに正常な1回分の尿量(30ml)がある場合には、【心不全】【腎不全】などの重篤な病気が隠れていることがあります。これらの病気では、顔や手に【むくみ】が現れるので、 そういった症状がないかどうかに注意する必要があります。

【夜間頻尿】
高齢になると腎臓の尿を濃縮する機能が衰えるため、尿が多く作られるようになるのです。水分を多く摂ったわけでもないのに、毎晩2回以上トイレに起きるような場合には、何らかの病気があることもあるので、主治医に相談などしてみてください。ただし、男性の夜間頻尿の原因で最も多いのは、多尿ではなく前立腺肥大症です。そのほか前立腺ガンの場合にも夜間頻尿が起こるので注意が必要です。

【治療】
頻尿の原因はさまざまで、治療法も異なりますが、薬物療法によって、頻尿の大部分は改善できます。

【失禁】・・・咳・くしゃみをする時・重い荷物を持ち上げる時・大声で笑った時・尿が漏れることありませんか?尿失禁の症状は、自分の意志とは関係なく漏れてしまうことです。尿は腎臓で作られ、いったん膀胱にためられて排尿しようとした時に尿道から排出されます。膀胱がいっぱいになると尿がしたいと思うが、我慢することも可能です。脳から命令されて排出されるため、尿が漏れることはないのです。しかし、尿失禁は排尿システムのどこかに障害を生じる時に起きてしまいます。尿失禁は女性の方に多いといわれ、女性の尿道は男性に比べると短いため尿が漏れやすくなり、出産を経験すると尿道周辺の筋肉がゆるみやすくなっていますので、出産の経験がある30代の女性は約半数、40代では2人に1人が尿失禁を経験してるといわれてます。

失禁は次のような種類にわけられます

【腹圧性尿失禁】
 くしゃみをする・重いものを持ち上げる・テニスでスマッシュするなどで、お腹に力が入った時に尿が漏れるタイプです。
妊娠や出産・肥満・便秘・老化などにより、骨盤底筋が緩むと臓器が全体にさがり、膀胱と尿道の角度かわってくるのです。臓器が下がると、角度が大きくなるため括約筋が尿道を絞めることができなくて、尿が漏れてしまいます。失禁の7~8割は、この腹圧性尿失禁です。

【切迫性尿失禁】
治療は根本的にありません。尿意を感じたとたんに漏れてしまったり、トイレに行く途中に我慢できず漏れてしまうタイプです。失禁の2~3割がこのタイプで、膀胱の感覚が過敏になっていたり、排尿を抑制する神経系統の障害で起こります。

  【溢流性尿失禁】
治療は薬の服用・自己導尿などです。膀胱に尿が溜まり過ぎて少しずつ溢れ出すタイプです。排尿そのものが正常に行わ れてないために起こり、直腸ガンや子宮ガンなどの手術、糖尿病で末梢神経が損傷 されて起こります。男性は【前立腺肥大症】で尿がでにくくなって起こることもあります。

  【反射性尿失禁】
治療は抗コリン剤を用いると同時に、自己導尿です。脊髄の損傷で、尿意が感じられなくても、膀胱に尿が溜まると反射的に排尿してしまうタイプです。

  【機能性尿失禁】
治療というよりも、周囲の人のケアが必要です。手足が不自由だったり、痴呆のためトイレに行くのが間に合わず失禁するタイプです。

  *腹圧性尿失禁には体操をおすすめします。

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1999年11月

  高血圧について   【血圧はなぜ高くなるのか?】を知っている人は、少ないのではないでしょうか。これからしばらくシリーズで高血圧について勉強致しましょう。

【血圧とは】・・・・全身を流れる血液が、血管の壁に与える圧力のことをいいます。

血液は、全身に張り巡らされた血管を流れて、常に体内を循環しています。心臓から動脈に送り出された血液は、体の各組織に酸素や栄養を供給し、体内で生じた老廃物などを回収し、静脈を通って心臓に戻ります。心臓を基点としたこの血液循環は、心臓が収縮と拡張を繰り返すことで持続されています。心臓が収縮すると、心臓内の血液が動脈に送り出され、心臓が拡張したときに、静脈から心臓内に血液が入ってくるのです。心臓が収縮するのに伴って、動脈の血管壁に圧が加わります。これが、【収縮期血圧】です。一方、心臓が拡張したときでも、なお、血管内にこもっている圧が、【拡張期血圧】です。一般に、収縮期血圧は、【上の血圧とか最大血圧】と呼ばれています。また、拡張期血圧の方は、【下の血圧とか最小血圧】と呼ばれています。高血圧には、【本態性高血圧】【二次性高血圧】の二つのタイプがあります。

・本態性高血圧・・・・はっきりした原因を特定できない高血圧です。
体内には、血圧を調整する様々な機能がありそのどこかに原因があって、
血圧があがると考えられます。

・二次性高血圧・・・・他の病気に伴って起こる、原因が明らかな高血圧です。
例えば腎臓病や脳、神経系の病気も高血圧の原因になります。
原因となる病気を治療すれば、血圧は下がります。

【みなさん知っていましたか?】
よく家庭では正常なのに、病院の診察室では血圧が高くなるという方はいませんか?このような高血圧を【診察室高血圧】とか【白衣高血圧】と言います。血圧は、日常の動作・運動・精神的緊張・ストレスなどですぐに上昇します。
血圧は非常に変動しやすいものです。高血圧の患者さんには、家庭での血圧値を知 ることをお勧めします。 高血圧は自覚症状はほとんどありませんが、長い間続くと体に様々な影響を与えます。
【血圧が高い】とはどのような状態なのかを理解し、生活習慣を見直して、血圧をきちんとコントロールしていきましょう。

次回は高血圧の合併症についてお話しします。

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1999年11月

めまいについて  よく【めまい】という言葉を耳にしたり、あるいは経験されたことのある方も多いと思います。
今回はこの
【めまい】についてお話ししたいと思います。

めまいは、バランスや反射などをつかさどる平衡神経系の異常によって起こります。異常といっても、【フワフワする・くらくらする】というように徐々に起きてくるものや【グルグルする】様な急激に起きてくるものもあり、その症状の表現は様々で、軽いものから重い病気によるものまで幅があります。
ではどういった症状があるのでしょうか。

比較的多いもので、低血圧症のために起こる【立ちくらみ】もめまいの中に含まれます。また、耳鼻科系のめまいの病気では、【メニエール病】といって回転性のめまいに耳鳴り、難聴を伴うものもあります。他に突発性難聴や内耳炎などにもめまいが伴うことがあります。良性発作性頭位めまい症といって、耳鼻科的な疾患がなくて、頭をある位置に傾けると めまいが起き、戻すとめまいが治るといったものもあります。重いものでは、【脳卒中】【脳腫瘍】などの脳の病気につながるものがあります。他に精神病などの症状にもめまいが見られることがあります。

このようなめまいの中でも特に最近増えてきているのが、【心因性めまい】というものです。 これは上述の様な疾患と合併する場合もありますが、その多くはめまい疾患がなく、何らかの心因性の反応によって発症する場合のものを指します。

特徴】
めまいは【回転感・動揺感・眼前暗黒感】など不定です。めまいに伴って、
【耳鳴り・耳閉塞感・頭重感・肩こり・不眠・気分がすぐれない・脱力感】などの自律神経症状や精神的不定愁訴が多くみられます。上記の症状を誘引するような心理的な契機があります。心理的な契機とは、ストレスや悩み、突然起きる災害や身内の死などの心的ショックなどが考えられます。心と体が密接に関連していることは以前お話ししましたが、めまいという症状は、心の問題や身体的な病気の一つの信号なのです。その区別や原因については、専門の医師の診断が必要になります。

*当院でも簡単なめまいの検査を行っていますので、気になる方はお気軽にお申し出下さい。

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1999年9月院長より

院長より
今回は来年4月より始まる介護保険制度についてお話ししたいと思います。社会の高齢化の進展に伴って、寝たきりや痴呆の高齢者が急増することが見込まれ、この制度が施行されようとしています。40歳以上の医療保険加入者、65歳以上のすべての方が対象となり、保険料が徴収されますが、基盤整備の遅れが指摘され、市町村によってそのサービスにも保険料にも差が生ずるなど問題点もあるようです。しかし、介護を必要としている人は介護保険に頼らなければならず、制度の欠陥を医療やほかの福祉制度で補いながら利用していくことも必要です。
私ども医師はこの制度にどのように関わっているのでしょうか。この介護保険制度には医師会も全面的に協力していくよう行政との話し合いを行っていますので、まずは安心してください。そして主治医意見書の作成、介護認定審査会、ケアプラン作成会議への参加等を通して関わっていくことになります。皆様方が介護保険を受けようと思われた時には、まずご相談ください。手続きとしてはお住まいの区の区役所に要介護認定の申請を行うことから始まります。申請を行いますと、専門の調査員が家庭を訪問し、食事や歩行、入浴など日常の生活動作を調査します。調査結果はコンピュータにより全国一律の基準で判定されます。区役所は申請のあった方のかかりつけ医に連絡し、主治医意見書を求めます。訪問調査の結果と主治医意見書を元に保健・医療・福祉の専門家からなる介護認定審査会で介護の必要な度合い
【要介護度】を審査・判定します。ここにも私ども医師は審査委員として参加することになります。こうして決まった要介護度に応じてケアプランという介護サービス計画が作成され、介護サービスが開始されますが、このサービスが適正に
供給されているかのチェックも私どもがお手伝いする予定です。

実施は来年4月からでも準備はすでに始まっており、この9月から、訪問調査が、10月からは介護認定審査会が開始され、段々と見聞きする機会も増えてくると思いますが、良い制度になるよう一緒に考えていきたいと思いますので、
ご不明な点などは遠慮なくお聞きください。

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