2002年3月

痴呆について1  
今回から3回にわたって、痴呆についてお話したいと思います。
 
「あの人何ていう名前だったっけ?」「あれ、何をしに台所に来たのかな?」というように、物忘れが多くなったのを、痴呆の始まりじゃないかと気にされる方がみえますが、これは年齢と共に記憶力が落ちてきたためで、ほとんどが痴呆とは関係がありません。記憶力は20代をピークに、65歳頃には半分くらいに落ちてくるのが正常ですし、物忘れは誰にでも起こりますので心配することはありません。それではどういう状態を痴呆というのでしょう?

 痴呆とは、「後天的な脳の障害によって、正常に発達した知能が持続的に低下した状態であり、先天性あるいは発育期に知能障害が生じる精神発達遅滞と区別される」と定義されています。要するに、一度は正常に発達した知能が、何らかの原因で脳が障害されて、知能が低下した状態が続くということです。

 痴呆は、大きく血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆の2つに分類されます。
【血管性痴呆】
 血管性痴呆は、脳梗塞や脳出血によってある日突然起こることが多く、5分前まではしっかりしていたのに急に計算ができなくなったり、言葉が聞き取れなくなったりします。しかし、全てのことができなくなってしまうわけではなく、脳の障害が起こった部位によって症状に差があり、例えば服をどうやって着れば良いかなど、脳の障害が起こっていない部分が司っている行為は残ります。症状にむらがあるので「まだら痴呆」と呼ばれることもあります。運動麻痺が伴わないことが多いのも特徴として挙げられます。

 【アルツハイマー型痴呆】
 アルツハイマー型痴呆は、40~50歳以降に原因不明の神経細胞の障害によって極めて希に起こります。脳溝と呼ばれる脳の溝が開いてきて、特に側頭葉の海馬と呼ばれる部分がだんだん萎縮していき、数年から10年くらいでどんどん進行するのが特徴です。言葉や道具が使えなくなり、人格が崩壊し、見えていてもそれが何か分からなくなり、歩けなくなり、排泄が不自由になり、多くはやがて寝たきりになります。アルツハイマー型痴呆の場合、残念ながら今の医学では効果的な治療法がないのが現状です。

これまで、日本人の痴呆は血管性痴呆が多いと言われてきましたが、最近の研究で生活習慣が大きく影響していると思われる例が非常に多いことが判ってきました。
  次回は、「どんな人に痴呆が起こりやすいか」、「痴呆の予防法」についてお話したいと思います。

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2002年1月院長より

院長より   
あけましておめでとうございます。昨年は狂牛病や同時多発テロなど暗いニュースが目立ち、日本経済も落込み、失業率が上がっているなど先行きに不安を覚える一年になってしまいました。今年は少しでも良い年になればいいのですが・・・。

さて今年は診療報酬改定の年に当たり、すでに新聞などでもいろいろな案について書かれていますから、皆様もある程度はご存知だろうと思います。しかし三方一両損などと名裁きの言葉に惑わされ、本質が隠れてしまった気がします。患者負担が増加すると受診者数が減少しますし、今回は薬価のみならず、診療報酬そのものの引下げも検討されており、これが実現しますと医療機関の収入が大幅に減少します。収入が減少すると経費を削ることになりますが、人件費ぐらいしか削る経費がありません。人件費が削られるとただでさえ職場環境が悪いと言われているのに、より給料は安く忙しくなるので良い人材が集まらなくなります。現在イギリスがサッチャー首相の医療費抑制政策によりその状態になっており、医療従事者を外国人労働力に依存したことが社会現象となり、ブレア首相は医療費拡大政策に変更しました。しかし一度離れた求心力は容易には元に戻りません。日本では産業としての医療はまだ成長していますから、イギリスのようになってしまう前に対策を立てれば間に合います。景気を立て直す可能性のある産業としての医療を失速させないようにしなければなりません。
      
皆様の応援をいただけるようお願いいたします。

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2002年1月

鼻水・鼻づまり   
鼻は、息をするための入り口で、息を吸うときや吐くときの空気の流れを調節したり、吸い込む空気を暖めて、湿り気を与えたり、くしゃみによって入ってきて欲しくないものを外にだす働きがあります。
鼻毛は、空気中のゴミなど(鼻くそになる)を吸いつけて、肺に入ってくる空気をきれいにします。鼻水の中に含まれる酸素や免疫グロブリンの働きによって、細菌ウイルスなどをやっつけてくれます。鼻はさまざまな外からの刺激を一番最初に受け付けるために炎症が起こりやすいのです。

鼻水がでる時には 風邪 鼻炎 蓄膿症などの病気が考えられます。透明な鼻水が少しでるだけで、鼻の奥のほうがくすぐったい程度で、熱もなく、食欲もあるようでしたらお家で様子をみていても大丈夫でしょう。ねばっこい黄色や緑色の鼻汁がでるときは細菌感染の疑いがあります。
鼻の奥と耳の間は耳管というものでつながっているので、子どもの場合は大人に比べてこの管が短いので、細菌が耳に侵入すると中耳炎や、また別の経路で副鼻腔炎を起こしたりしますので、早めに受診してください。

【One Point! 副鼻腔炎?蓄膿症?】
 蓄膿症と一般に言われているものは副鼻腔炎のことです。それではまず鼻の構造からお話ししましょう。
 頭の内部には、鼻や目を取り巻くようにして大小いくつかの骨の空洞があり、これを副鼻腔と呼んでいます。蓄膿症とはこの副鼻腔の炎症の総称で、専門的には「副鼻腔炎」といいます。副鼻腔の粘膜に炎症が起こると、そこで大量の粘液が作り出され、鼻へと溢れ出て黄色い鼻汁になるのです。膿が副鼻腔にたまるので蓄膿症という言われるようになりました。副鼻腔炎には、急性と慢性の2つのタイプがあります。

 急性副鼻腔炎の症状は、風邪に引き続いて起こり、発熱や頭痛、倦怠感、鼻づまり、黄色い鼻汁が多量に出るなど多彩です。慢性副鼻腔炎の原因は複雑で、急性炎症の繰り返しや遺伝的体質、鼻の粘膜が厚くなって詰まってしまう肥厚性鼻炎、扁桃炎、大気汚染などいくつもあります。また、上あごの歯、特に虫歯や周囲の炎症が副鼻腔の中に入り込んだり、飛行機や潜水で副鼻腔の気圧調整がうまくいかない場合でも起こります。慢性副鼻腔炎は、鼻づまりや粘っこい鼻汁が出る、匂いがわからない、といった主に鼻の症状が出て、続いて鼻汁が喉にまわり、咽喉の炎症や気管支炎が起こることもあります。神経症状としては、頭が重い、注意力散漫、記憶力減退がありますが、急性の症状と比べるとそれほど強くはありません。

 副鼻腔炎の予防は、風邪をひかないようにすることです。つまり、気温の変化に合わせて衣服を調節したり、寝冷え、湯冷めをしないようにして下さい。そして、風邪をひいたら完全に治しましょう。適当な運動で体を鍛えることと、偏食を避け、栄養に注意して、全身の抵抗力をつけることが、日常生活で心掛けるべき基本事項です。

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2002年1月

甲状腺   
 甲状腺は、甲状腺ホルモンを合成、分泌する器官です。身体の成長、発育や新陳代謝に必要不可欠で、精神活動にも重要な役割を果たしています。甲状腺ホルモンの量は常に一定になるように調節されています。多すぎても少なすぎてもいけません。

【甲状腺はどこにあり、どんな働きをしているの?】
甲状腺は、喉仏のすぐ下、気管にくっついて います。蝶々が羽を休めて木に止まっているようです。甲状腺ホルモンを血液の中に送り出し、 全身の細胞に届けて、働け働けとメッセージしています。                     
何らかの原因で血液中の甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が非常に高まります。その結果、心臓の動悸(頻脈)、血圧上昇やイライラ、多汗、不眠などの症状が出現します。逆に甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下するため身体がだるい、眠たい、寒がり肌のかさつき、身体のむくみが生じてきます。
甲状腺ホルモンの原料は食品中のヨードです。日本人はヨードを多量に含む食品(昆布・海藻)を摂取する機会が多く、ヨード欠乏になることはまずありません。問題があるのは、むしろ過剰摂取のほうです。健康食品と称して、根昆布を煎じてのむのがはやっているようですが、これは甲状腺のとって百害あって一利なし。ヨードの大量摂取となってしまいます。普通に味噌汁に海藻を入れたり、吸い物のだしを昆布で取るのは全く問題ありません。
次号では甲状腺の病気についてお話ししていきます。

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