2002年5月

痴呆について2    
前回から痴呆についてお話させていただいていますが、今回はどんな人に痴呆が起こりやすいか、また痴呆の予防法についてお話したいと思います。

 人間の脳には左脳と右脳があります。左脳は言語、概念、論理的思考を司っていて、言葉を理解したり、計算や機械的なものの分析や組み立てをします。一方右脳はイメージ、図形、認識力を司っていて、感性や想像力、感受性の脳と言われています。痴呆になりやすいのは、右脳が開発されていない人です。理屈っぽく、優しい言葉もかけられず、ユーモアのない堅い人で、若い頃から勉強や仕事ばかりしてきた人、趣味や交友もなく、生き甲斐のない生活を続けてきた人、音楽や絵に感動しない人、指示待ちのロボット人間と言えばだいたい想像はつくかと思います。

 そういった人が定年を迎えたり、子どもが手を離れると、多くの場合はあまり外出もせずに、やることもなく1日中ただテレビの前でぼんやりと過ごすようなことになります。また、家族も感性がない人であることが多く、冗談や楽しい話のない冷たい家庭がよりいっそう痴呆の温床になってしまいます。痴呆になりやすい素質を持った人が痴呆になりやすい生活をして、なるべくして痴呆になるケースが多いのです。
 
 では、どうすれば痴呆を予防することができるのでしょう?
 右脳を刺激することが痴呆の予防に有効だと言われています。具体的な例は下記の通りです。また、一人でやるよりも、夫婦や家族、友達と一緒の方が楽しめるし長続きするでしょう。痴呆が起こってしまってからでも遅くはありません。進行を遅らせたり、ある程度の改善は期待できますので、積極的に行ってみて下さい。

・音楽を聴いたり、弾いたり、歌ったりする。
・絵を描いたり、鑑賞する。
・散歩をする。
・短歌や俳句、詩を作ったり、読んだり、鑑賞する。
・ペットを飼う、植物を育てる。
・お茶や書道、民踊などのお稽古ごとをする。
・ゲートボールやダンス、水泳など、スポーツをする、スポーツを観戦する。
・オセロやトランプ、花札、麻雀、将棋、パズルなど、ゲームをする。

 次回は痴呆になってしまった場合の対処法についてお話したいと思います。

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2002年3月院長より

私どもの主な仕事はもちろん患者さんを診察し、治療をすることですが、それ以外にも健康教育活動、予防医学活動などいろいろな仕事を行っております。診療所以外で行っている活動については当然のことながらご存じない方がほとんどで、小学校で行っている住民健診で顔を合わせた方がそのような活動の一部をご覧になったことがある程度だろうと思います。さて,そのような診療所以外で行っている仕事の多くは行政と医師会が連携しながら行っている事業であるため、その交渉に当たっている担当者には行政との打合せも仕事になってしまいます。しかし地域の皆様の健康を守るためになくてはならない仕事であり、やりがいのある仕事でもあります。私はこのような仕事を、この4月より引き受けることにしたため、診療時間、診療日及び休診日の変更をしなければならなくなりました。皆様方にはご迷惑をおかけすることになり、大変心苦しいのですが、ご理解いただきたく存じます。

 昨年診療時間に関するアンケートを採らせていただきました。その結果午後の診療時間についてはもう少し早い時間からの開始を希望される方が多かったので、どういう形で皆様方の期待に応えようか考えておりましたが、今回今までより1時間早く午後の診療を開始することにしました。またご迷惑をおかけすることへのお詫びの意味を込め、30分間診療時間を延長させていただき、午後の診療の終了時間は午後7時30分といたします。少し便利になったと感じていただければ幸いです。

 前号でお知らせした診療報酬改定については、予想以上のひどい内容であり、多くの方が政府は自分たちを殺すつもりかと怒っていらっしゃると思います。当院では前から少しでも経済的負担が少なくすむよう工夫して参りました。今後もその努力はしていきますし、ご一緒に最善の方法を見つける手助けはしていきたいと思っておりますので、ご不明な点がありましたら、遠慮なくお聞き下さい。

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2002年3月

甲状腺    
前回は甲状腺の働きについてお話ししました。
今回は甲状腺の病気にはどのようなものがあるかお話ししましょう。

 甲状腺ホルモンの産生、分泌が過剰になった状態を甲状腺機能亢進症といいます。食べても食べても体重が減る、脈が早く動悸がする、手がふるえ体温は上昇し、発汗が多い、イライラして落ち着きがない、下痢、生理不順、脱毛が多いなどの症状が出ます。
 甲状腺機能亢進症の代表がバセドウ病です。バセドウ病は、甲状腺を異常に刺激する抗体が体内で作られ、どんどん甲状腺ホルモンを作らせてしまう病気です。

 では、なぜ、こうした異常が起るのでしょうか。実は、免疫が関係しているのです。免疫は進入した外的を攻撃し、健康を維持するための大切な仕組みです。ところが、まれに自分自身の体を攻撃目標とする抗体を作ってしまう病気があります。これを「自己免疫疾患」といいます。

 バセドウ病の代表的な症状は、喉頭の下にある甲状腺が大きくなる・眼球が突出する・手の指がブルブル震える・などです。男性より女性に多く、小児から高齢者まであらゆる年齢層にみられます。家族歴のある人は要注意、出産後に発病・増悪することもありますので注意が必要です。

【ひとこと】
甲状腺機能亢進症の原因は、バセドウ病が最多です。しかしバセドウ病以外は無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など一過性の病気がほとんどです。 甲状腺機能亢進症=バセドウ病ではありません。バセドウ病であるのかどうか、まず最初にきちんと見極める事が重要です。

 甲状腺が甲状腺ホルモンを十分分泌できなくて、いろいろな症状を引き起こす病気を甲状腺機能低下症といいます。身体が腫れぼったくなり体重が増加、皮膚は冷たくカサつく、脈が遅い、しわがれ声になる、元気がなくいつも眠たい、無気力・不活発になるなどの症状が起こります。甲状腺機能低下症の中には、橋本病やクレチン症などがあります。

 橋本病は、発見者の橋本策先生の名前をとったもので、慢性甲状腺炎とも言います。橋本病も自己免疫疾患のひとつですが、バセドウ病とちがって、体内でつくられた抗体が甲状腺組織を障害して、次第に甲状腺ホルモンの産生が障害される方向へ向かいます。
 甲状腺機能が正常であれば原則的に治療は必要ありません。機能低下していれば甲状腺ホルモン剤を投与します。最初は正常であっても徐々に低下する場合もありますので、定期的な検査が必要です。

 生まれてきたときから甲状腺機能低下症だとクレチン症(先天性甲状腺機能低下症)と呼ばれます。甲状腺そのものがないか、あるいはあっても十分な大きさがないか、別の場所にあって働かないか、甲状腺ホルモンがうまく作られないことなどによっておこります。出生時体重は正常ですが、次第に成長・発達がおくれてきます。 顔つきは特徴があり、眼瞼が腫れぼったく、鼻は低く、いつも口を開け、大きな舌をだしています。これをクレチン顔貌といいます。皮膚は乾燥し、あまり汗をかかず、腹部は大きくふくれています。また、手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず、あまり泣かずによく眠ります。不活発でおとなしい子供です。

 甲状腺ホルモンは子供が成長するのにとても必要なホルモンです。人間は3才までに大脳の大半が出来あがります。その大切な段階で、ホルモンが足りないと障害が起こってしまうため、早期発見が必要です。

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2002年3月

花粉症   
【花粉症って何?】
花粉症は、花粉が原因でおこるアレルギーの一種です。この原因物質に触れるとくしゃみや鼻水などの症状が現れます。原因となる植物は樹木や草花などさまざまで、数十種類におよぶといわれています。花粉の飛ぶ時期は植物によって違いますが、1年を通してさまざまな花粉が飛んでいます。たとえば、1月下旬から5月上旬にかけてはスギ、3月下旬から5月中旬にかけてはヒノキなどが多くみられます。

 【どんな症状がでるの?】
 主な症状は、目のかゆみ、涙目、充血、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、喉の渇き、皮膚のかゆみなどです。症状は、花粉が付きやすい目や鼻の粘膜の部分でおこりますが、口から入った花粉が気管支や胃腸に達すると喉に違和感をおぼえたり、下痢などの症状をおこすこともあります。また、症状がひどくなると全身がだるくなるなどの二次的な症状が現れることもあります。

 【カゼとどう違うの?】
 たとえば、カゼの鼻水はだんだん粘っこく黄色い鼻水に変わっていきますが、花粉症の場合は水のようにサラサラしたままであることが多いです。また、カゼはほぼ1週間ほどで治りますが、花粉症は花粉の飛散期が終わるまで症状が続きます。 1年のうちで、特定の時期にくしゃみや鼻水、目のかゆみなどが現れた場合には花粉症である可能性が考えられます。花粉症かどうか心配になられましたらドクターにご相談ください。
 

 【日常生活の中でできること】

花粉との接触を避けるために、ふだんの生活の中で次のようなことに気をつけましょう。

・外出をひかえる
 外出するなら晴れの日よりも雨の日を。暖かい日よりも寒い日を。特に、暖かく空気が乾燥していて風が強い日には花粉が遠くまで飛びやすいので気を付けましょう。

・メガネやマスクする
 目や鼻、口からの侵入を防ぐためにもメガネやマスクをしましょう。また、花粉が付きにくい表面がスベスベした衣服を着るのもいいでしょう。

・花粉を屋内に持ち込まない
 家に入る時には衣服をはたいたり、ブラシをかけたりして花粉を払い落としましょう。 
 また、洗濯物や布団もしっかりはたいてから取り込むようにしましょう。

・掃除をまめにする
 掃除機をまめにかけたり、水ぶきをしましょう。また、空気清浄機を使うのもよいでしょう。

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