2005年11月院長より

日一日と寒さが増していますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。インフルエンザの予防接種はもうお済みですか。予防接種をしてから抵抗力がつくのに2週間以上かかりますので、はやり始めてからあわてて接種しても間に合いません。特に不特定多数の人と接する職業の方、次に年配の方、受験生の方などの順番で優先して接種すべきとされておりますし、接種時期として、遅くても11月末までには一回目を接種しておく方がよろしいようですので、ご検討ください。

 さて圧倒的な衆議院選挙での自民党の勝利を受け、郵政民営化法案は可決され、障害者自立支援法も可決されようとしています。新内閣も誕生し、今後の我が国がどうなっていくのかを見極める大事な時期のようですが、いわゆる弱者を切り捨てようとする動きが加速しているようないやな流れを感じているのは私だけでしょうか。
 厚労省が医療制度構造改革試案を発表しましたが、そこでは、75歳以上を対象に高齢者医療制度を創設し、自己負担割合を75歳以上1割、65~74歳2割に引き上げることなどを提案しています。健保連や経団連も、65歳以上を対象にした高齢者医療制度を創設し、患者負担を2割(現役並み所得者は3割)とすることを提言しています。強い小泉首相を後ろ盾にますます高齢者の負担を増やして保険からの出費を減らすと共に、受診をも抑制させようとの意図が見え隠れする案となっていることにご注意ください。唯一、連合だけが被用者OBを対象にした「退職者健康保険制度」を創設し、70歳以上の患者負担は1割とするほか、一般の患者負担は被扶養者を含めて2割に引き下げ、負担を軽減する案を提案していますが、市町村国保や組合などの保険料負担が増え、公費負担も増加するため、実現することは困難であると思われます。

 医療は労働集約型産業の一つであり、医療への投資は労働者を増加させますから、納税額も増えますし、安価で医療が受けられると言うことは安心して働く意欲にもつながり、ますます国が栄える方策となるはずです。しかし、今の小泉内閣は国の負担を減らすことに躍起となり、医療に関しては悪循環
に陥ってしまっていることに気付いてくれていないようです。早く進路変更をしてくれるよう、切に祈っています。

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2005年11月心理室より

人の魅力
今回は『人の魅力』についてお話したいと思います。
生活の中で「好き」とか「苦手」とかいった他者との関係は大きく影響力をもっているようです。同じ言葉でも伝えてくれた相手によって違って聞こえたり、同じ仕事でも一緒に協力する仲間によって頑張れたり、やる気がそがれたり。このコントロールの難しい気持ちは多くの人が日常の中で体験するので深い関心がもたれますが、その基礎にある『人の魅力』に強く影響をもつものとして「環境」「個人的なもの」「自分への評価」「お互いの関係性」「お互いの行動」という5つがあげられます。

【環境とは】
 まず、お互いの距離の近さがあります。それは良くも悪くもお互いの感情を増幅させることによると考えられます。例えば、学校で隣の席になった子と仲良しになれたといった良い面。また、苦手なところを発見してしまってそれから会う度にますます嫌悪感がつのっていくという悪い面などがあげられます。これは出会った初期に最も強く影響をもつことです。また、出会った状況も魅力を左右するといえます。とても楽しい場で出会った二人は相手との思い出も楽しいものとなり、相手への印象も良いでしょう。一方で不快な環境で出会った二人は、相手への思いさえも不快なものと感じてしまうように、環境と相手そのものが連合してくることもあるのです。ちなみに、恐怖を共有する状況では他者と一緒にいたいと思う傾向があるそうです。

【個人的なものとは】
 まず身体的な魅力があげられます。これはよくいう、「きれい」とかいう言葉であらわされるもので、見かけです。そして性格があげられます。見かけも性格も個人的な好みによるため大体の共通性をもちつつも、相手の好みのタイプによるというところがあります。ぴったり合う相手と出会った時にその人の個性は最大限に輝き魅力となるでしょう。
 また、能力も魅力を想定する1つです。その人の能力を目の当たりにして尊敬の気持ちを抱いたり、予想よりできないとわかってがっかりしたりすることです。また、自分の得意な分野での他者の優れた能力をみることは自分の評価が下がることがあるため、逆に魅力が減ったりという場合などもあります。

【自分への評価とは】
 一般的に人は自分に好意的に接してくれる人、自分を認めて良く思ってくれる人に対して同じように良い感情をもち易いということがあります。反対に相手が自分のことを良く思ってくれていないのではと感じると、相手のこともあまり良く思えなくなることもあるようです。気持ちは伝わり影響し合うのです。

【お互いの関係性とは】
 お互いのことを知ってくると、相手と自分が似ている部分、似ていない部分などが影響をもつようになります。これは「類似性」というもので、自分にとって大切に思う部分、価値観が似ているとより相手に対して親しみを覚えるということです。これは相手のことを理解しやすいことから分かり合えるという思いが生まれやすく、元々自分が良いと思っている行動などを相手も行ってくるので感じ良く受け取ることが多いからともいえます。しかし一方で、全然似ていない二人が親友だったりということも大いにあります。これは「相補性」といって、相手が自分にないものをもっているからこそ魅力的に感じるということです。自分は気性が激しいところがあるから穏やかな友達と一緒にいると落ち着くなどといったことがあります。でこぼこコンビなどといわれる二人です。このどちらかということは色んな状況によって変わってくるので、友達の幅が広がったり全く違うタイプの恋人ができたりします。

【お互いの行動とは】
 自分について話すことを自己開示といいます。相手からお互いの親しさに応じた自己開示がされると好意を感じることがあります。それは相手が自分により近づいてくれたと感じ、前よりも仲良くなれたのではないかと思うことができるからです。特に、あなただから気楽に話せた、などと相手が自分を選んでくれたときなどに嬉しいと感じることが多いようです。もちろん、打ち明けてくる内容にもよるので、思ってもみなかったことを打ち明けられてショックを受けることもあるので慎重さが必要です。

 人の魅力についてお話しましたが、世界中のみんなに魅力的だと思われなくてはいけないことはないと思います。自分と合う人合わない人と出会っていく中で、自分の個性を伸ばしていき、その人らしさをもってその時々で対応していくことが魅力につながるのではないでしょうか。

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2005年11月


 朝晩は冷え込む日が多くなり、秋の足音が聞こえてくるようになりました。秋といえば、スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋と様々ですが、今回は、秋を代表する果物の「柿」にスポットを当ててみたいと思います。

【柿の起源】
 柿は日本原産の果物といわれ、16世紀頃にポルトガル人によってヨーロッパに渡り、その後アメリカ大陸に広まっていきました。今では、「KAKI」は世界中の人に愛され、学名も「ディオスピロス・カキ(Diospyros Kaki)」、「KAKI」の名で世界中に通用します。

【今の柿はどこから?】
 一説には、氷河期が終わった後に中国から渡来したと考えられています。その中国の柿が日本から渡って再び日本に帰って来たものかどうかははっきりしていません。縄文、弥生時代の遺跡から種が出土し、時代が新しくなるほどその量は増えているそうです。また、今のように大きな柿は、奈良時代にやはり中国から渡来したと考えられています。

【主な柿の品種】
○富有(ふゆう)
 富有の原産地は、現在の岐阜県本巣郡巣南町居倉といわれています。1857(安政4年)に小倉初衛さんが初めて栽培した柿がすばらしく、その土地の名前にちなんで居倉御所と呼ばれていましたが、同じ村落の福島才治さんが自家の柿に接ぎ木して見事な柿を実らせました。福島さんは当時、盛んに開かれていた品評会で、新品種として世に問うことを考え、「福寿」「富有」のいずれがいいか迷った末、古典『礼設』中にある「富有四海之内」の言葉を採用して「富有」と命名しました。名声があまねく天下に広がることを願ったものでしたが、出品した1898年(明治31年)の柿品評会では一等賞を受けました。甘柿全体では11万686t生産されていますが、そのうち富有柿が60%を占め、南は九州から北は新潟県まで広い地域にわたって「甘柿の王様」に君臨しています。

○次郎
 1844年(弘化元年)、静岡県周智郡に住む松本次郎吉さんが太田川を流れている柿の幼木を拾って、植えたのが始まりと伝えられています。この原木は火事で焼けたものの、焼け株から新芽を育成させて、現在は町の文化財になっています。柿のファンは派閥がたくさんに分かれます。甘柿派、渋
柿派、そして甘柿派の中でも富有派、次郎派が二大勢力です。「上品な風味で、あのコリコリした味わいがなんともいえない」というのが次郎派の
代表的な見解だと言われています。次郎は、富有につぐ栽培を誇り、愛知県と静岡県が東西横綱として生産量1万501tの80%を占めます。

【柿の栄養】
柿の成分で特筆できるのは、何といってもビタミンCの豊富さです。酸っぱいイメージのビタミンCとはちょっと意外かもしれませんが、甘柿に含まれているビタミンCはレモンやイチゴに決して負けてはいないのです。他にも、ビタミンK、B1、B2、カロチン、タンニン(渋味の原因)、ミネラルなどを多く含んでいるため、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」という言葉があるほど、柿の栄養価は高いのです。また、「二日酔いには柿」といわれている訳は、ビタミンCとタンニンが血液中のアルコール分を外へ排出してくれるからで、豊富なカリウムの利尿作用のおかげともいわれています。

【柿の上手な切り方】
 柿を生で食べるときの切り方は、ヘタの周りを少し大きめに切り取って、縦切りにすると、柿の甘味が均等に分配されます。というのは、花落ちと呼ばれる部分(ヘタの反対、花ビラが付いていた部分だから花落ち)と種の周りの甘味が強く、ヘタに行くほど甘味が薄くなるからです。

 柿は映画、小説、和歌など様々な文芸にも登場しています。
【文芸に登場する柿】
○寅さんと渋柿
 誰もが知っている映画である「男はつらいよ」。この映画の中にも柿を食べるシーンが登場します。72年製作の第10作「寅次郎夢枕」では、木曽路を旅する寅さんが、道端の柿の木からひょいともぎとって口にするシーンがあります。これが、とびきりの渋柿で、寅さんは渋さにとびあがるというもの。秋の夕暮れに、山寺の鐘が鳴り、寅さんのさすらい一人旅の哀感がしみじみと伝わってくる名シーンでした。

○和歌、俳句
柿の実のあまきもありぬ柿の実の渋きもありぬ渋きぞうまき (正岡子規)

隣る家もその隣る家も柿たわわ(高浜虚子)

里古りて柿の木持たぬ家のまし(松尾芭蕉)

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2005年11月

ウイルス性肝炎
C型、B型ウイルス性慢性肝炎の治療目的は次の5つです。
(1)肝臓の炎症を軽減し、肝炎、肝硬変の進行を遅らせる
(2)不愉快な自覚症状を軽減する
(3)肝硬変の合併症を予防する
(4)肝硬変の合併症を治療する
(5)肝臓癌の早期発見に努め、的確な治療につなげる

これらを実現するためには、まず原因ウイルスを除去するか、ほぼ死滅させるような抗ウイルス療法が一番です。
しかし、皆が皆この原因治療の対象になるわけではありません。むしろ対象外の方のほうが多いのです。これらの方は、抗炎症効果のある薬を使います。肝炎の炎症を軽減し、肝硬変への進展を遅らせることが治療の方向性です。また、合併症の予防治療、定期的な超音波検査で肝癌の早期発見に努めることも肝炎治療のポイントです。

【A型肝炎】
 A型肝炎は、B型、C型と違い、慢性肝炎になることはありません。急性肝炎で終わるため、ごくまれに重症化した劇症肝炎になった場合を除き、心配ありません。自然に治るのを待てば良いのです。もちろん黄疸が出ている時は安静が必要なので、体を休め、快方に向かうかどうかを見極める必要があります。

【B型肝炎】
 B型肝炎ウイルスは、C型肝炎と違って今のところ完全に消し去る薬はありません。 抗ウイルス剤としてインターフェロン(ウイルスに感染した時に体で作られる一種の蛋白質。ウイルスの増殖を抑制する作用を持つ)が10年以上前から使われていますが、部分的な効果しか期待できません。しかし、B型肝炎ウイルスでも比較的肝毒性の低い変異株に変えることは可能です。そして、その形を変えたウイルスが主体となった状態をセロコンバージョンと呼び、HBe抗体が陽性になります。ウイルスがこの変異株になると、GPTが低下したり、正常値に戻る人が多く、肝臓の炎症が落ち着いてきます。しかし、ウイルス自体はまだ残っていますので、B型肝炎が治ったわけではありません。再度肝炎がぶり返したり、肝癌が発生しうるので、引き続き定期的な検査が必要です。

【C型肝炎】
 C型肝炎の根本的な治療は現在のところ、ウイルスを駆逐するインターフェロンだけです。Ⅰ型、Ⅱ型というウイルスの亜型のうち、Ⅱ型を持っている方はインターフェロンが効きやすく、概ね半分以上の確率で排除できます。しかし、効きやすいタイプの方が少ないため、平均すると25%~30%の有効率です。肝硬変まで進んでいたり、インターフェロンの効きにくい方は、肝炎の進行を抑える一般的な治療を行います。

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