2006年1月

五十肩
高いところにある物を取ろうと手を伸ばした途端、それまで何ともなかった肩に激痛が走ってまったく動かす事ができなくなった…そういう時は五十肩を疑います。五十肩は名前の通り50歳代に多い病気ですが、40歳代や60歳代でも発病します。
 なぜ五十肩がおこるのか詳しいことはわかっていません。加齢に伴っておこる現象で、始めの変化は肩の関節を取り巻く腱の炎症であろうと考えられています。腱とその周囲が炎症の名残で癒着をおこし、すべりが悪くなるために関節の動きが悪くなって腕が動かなくなります。
 五十肩は放置しておいても1年位で自然に治るといわれていますが、何もしないでおくと癒着が残って肩の動きが悪くなります。痛みが強い急性期と痛みが治まった慢性期では、日常生活での過ごし方が異なりますので、今回はそれぞれの時期に応じた治療や過ごし方についてお話したいと思います。

①痛みが強い急性期…非常に痛みが強い時期で、痛み始めてから1ヶ月くらいの間です。
安静:痛みが強い時期は無理に肩や手を動かさないようにします。

冷やす:始めの数日は肩を冷やして炎症を抑えます。冷やすのは痛みの激しい時だけで、痛みが落ち着いてきたらホットパック(ゼリー状の保湿剤が袋の入ったもので、電子レンジなどで温めて使います)やカイロ、入浴等で肩を温めましょう。

体操:急性期でも肩を固定したままだと癒着がおこるので、この時期にできる振り子体操を行います。振り子体操は、前かがみになって足を前後に開き、痛みのある側の手で1~2㎏重り(ダンベルやアイロン)を持って、前後と左右に振り子のように動かす体操です。最初は無理をしないで振り幅を小さくし、10回前後行いますが、慣れてきたらだんだん振り幅を大きくして回数を増やします。体操を始める前は肩をよく温めておきましょう。

【薬物療法】
 炎症を抑え、激しい痛みを和らげるために消炎鎮痛薬やステロイド薬 を使用します。夜も眠れないような強い痛みの場合はステロイド薬を 患部に直接注射して炎症を抑えます。 ステロイド薬の注射を使いすぎると、肩の組織が弱くなる可能性があるので、ステロイド薬の局所注射は週に1回の使用で3~4回が限度です。

②痛みが治まった慢性期…急性期から1ヶ月以上経過すると、激しかった痛みが鈍い痛みに変わってきます。完全に回復するまでには五十肩の程度によりますが、半年から1年くらいかかります。

温める:慢性期には肩を温める事が大切です。入浴やカイロ・ホットパックで積極的に温めましょう。痛みがあまり無いので、この時期に薬を使う必要はありません。

体操:痛みが消えても、この時期に肩を動かさないと関節の硬さが残ってしまいます。積極的にストレッチや五十肩体操を行って肩の関節を柔らかくしましょう。体操にはいろいろなやり方がありますが、腕を上に上げていく・外にひねる・内にひねる事がポイントです。医療機関で体操の指導を受けながら、毎日根気よく続けていきましょう。少しずつ癒着がほぐれ、関節が柔らかくなって、動かせる範囲が広がっていきます。体操はお風呂でよく温まった後に行うと効果的でしょう。

次号では、五十肩の体操法と予防法をお話ししていきます。

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2005年11月院長より

日一日と寒さが増していますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。インフルエンザの予防接種はもうお済みですか。予防接種をしてから抵抗力がつくのに2週間以上かかりますので、はやり始めてからあわてて接種しても間に合いません。特に不特定多数の人と接する職業の方、次に年配の方、受験生の方などの順番で優先して接種すべきとされておりますし、接種時期として、遅くても11月末までには一回目を接種しておく方がよろしいようですので、ご検討ください。

 さて圧倒的な衆議院選挙での自民党の勝利を受け、郵政民営化法案は可決され、障害者自立支援法も可決されようとしています。新内閣も誕生し、今後の我が国がどうなっていくのかを見極める大事な時期のようですが、いわゆる弱者を切り捨てようとする動きが加速しているようないやな流れを感じているのは私だけでしょうか。
 厚労省が医療制度構造改革試案を発表しましたが、そこでは、75歳以上を対象に高齢者医療制度を創設し、自己負担割合を75歳以上1割、65~74歳2割に引き上げることなどを提案しています。健保連や経団連も、65歳以上を対象にした高齢者医療制度を創設し、患者負担を2割(現役並み所得者は3割)とすることを提言しています。強い小泉首相を後ろ盾にますます高齢者の負担を増やして保険からの出費を減らすと共に、受診をも抑制させようとの意図が見え隠れする案となっていることにご注意ください。唯一、連合だけが被用者OBを対象にした「退職者健康保険制度」を創設し、70歳以上の患者負担は1割とするほか、一般の患者負担は被扶養者を含めて2割に引き下げ、負担を軽減する案を提案していますが、市町村国保や組合などの保険料負担が増え、公費負担も増加するため、実現することは困難であると思われます。

 医療は労働集約型産業の一つであり、医療への投資は労働者を増加させますから、納税額も増えますし、安価で医療が受けられると言うことは安心して働く意欲にもつながり、ますます国が栄える方策となるはずです。しかし、今の小泉内閣は国の負担を減らすことに躍起となり、医療に関しては悪循環
に陥ってしまっていることに気付いてくれていないようです。早く進路変更をしてくれるよう、切に祈っています。

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2005年11月心理室より

人の魅力
今回は『人の魅力』についてお話したいと思います。
生活の中で「好き」とか「苦手」とかいった他者との関係は大きく影響力をもっているようです。同じ言葉でも伝えてくれた相手によって違って聞こえたり、同じ仕事でも一緒に協力する仲間によって頑張れたり、やる気がそがれたり。このコントロールの難しい気持ちは多くの人が日常の中で体験するので深い関心がもたれますが、その基礎にある『人の魅力』に強く影響をもつものとして「環境」「個人的なもの」「自分への評価」「お互いの関係性」「お互いの行動」という5つがあげられます。

【環境とは】
 まず、お互いの距離の近さがあります。それは良くも悪くもお互いの感情を増幅させることによると考えられます。例えば、学校で隣の席になった子と仲良しになれたといった良い面。また、苦手なところを発見してしまってそれから会う度にますます嫌悪感がつのっていくという悪い面などがあげられます。これは出会った初期に最も強く影響をもつことです。また、出会った状況も魅力を左右するといえます。とても楽しい場で出会った二人は相手との思い出も楽しいものとなり、相手への印象も良いでしょう。一方で不快な環境で出会った二人は、相手への思いさえも不快なものと感じてしまうように、環境と相手そのものが連合してくることもあるのです。ちなみに、恐怖を共有する状況では他者と一緒にいたいと思う傾向があるそうです。

【個人的なものとは】
 まず身体的な魅力があげられます。これはよくいう、「きれい」とかいう言葉であらわされるもので、見かけです。そして性格があげられます。見かけも性格も個人的な好みによるため大体の共通性をもちつつも、相手の好みのタイプによるというところがあります。ぴったり合う相手と出会った時にその人の個性は最大限に輝き魅力となるでしょう。
 また、能力も魅力を想定する1つです。その人の能力を目の当たりにして尊敬の気持ちを抱いたり、予想よりできないとわかってがっかりしたりすることです。また、自分の得意な分野での他者の優れた能力をみることは自分の評価が下がることがあるため、逆に魅力が減ったりという場合などもあります。

【自分への評価とは】
 一般的に人は自分に好意的に接してくれる人、自分を認めて良く思ってくれる人に対して同じように良い感情をもち易いということがあります。反対に相手が自分のことを良く思ってくれていないのではと感じると、相手のこともあまり良く思えなくなることもあるようです。気持ちは伝わり影響し合うのです。

【お互いの関係性とは】
 お互いのことを知ってくると、相手と自分が似ている部分、似ていない部分などが影響をもつようになります。これは「類似性」というもので、自分にとって大切に思う部分、価値観が似ているとより相手に対して親しみを覚えるということです。これは相手のことを理解しやすいことから分かり合えるという思いが生まれやすく、元々自分が良いと思っている行動などを相手も行ってくるので感じ良く受け取ることが多いからともいえます。しかし一方で、全然似ていない二人が親友だったりということも大いにあります。これは「相補性」といって、相手が自分にないものをもっているからこそ魅力的に感じるということです。自分は気性が激しいところがあるから穏やかな友達と一緒にいると落ち着くなどといったことがあります。でこぼこコンビなどといわれる二人です。このどちらかということは色んな状況によって変わってくるので、友達の幅が広がったり全く違うタイプの恋人ができたりします。

【お互いの行動とは】
 自分について話すことを自己開示といいます。相手からお互いの親しさに応じた自己開示がされると好意を感じることがあります。それは相手が自分により近づいてくれたと感じ、前よりも仲良くなれたのではないかと思うことができるからです。特に、あなただから気楽に話せた、などと相手が自分を選んでくれたときなどに嬉しいと感じることが多いようです。もちろん、打ち明けてくる内容にもよるので、思ってもみなかったことを打ち明けられてショックを受けることもあるので慎重さが必要です。

 人の魅力についてお話しましたが、世界中のみんなに魅力的だと思われなくてはいけないことはないと思います。自分と合う人合わない人と出会っていく中で、自分の個性を伸ばしていき、その人らしさをもってその時々で対応していくことが魅力につながるのではないでしょうか。

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2005年11月


 朝晩は冷え込む日が多くなり、秋の足音が聞こえてくるようになりました。秋といえば、スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋と様々ですが、今回は、秋を代表する果物の「柿」にスポットを当ててみたいと思います。

【柿の起源】
 柿は日本原産の果物といわれ、16世紀頃にポルトガル人によってヨーロッパに渡り、その後アメリカ大陸に広まっていきました。今では、「KAKI」は世界中の人に愛され、学名も「ディオスピロス・カキ(Diospyros Kaki)」、「KAKI」の名で世界中に通用します。

【今の柿はどこから?】
 一説には、氷河期が終わった後に中国から渡来したと考えられています。その中国の柿が日本から渡って再び日本に帰って来たものかどうかははっきりしていません。縄文、弥生時代の遺跡から種が出土し、時代が新しくなるほどその量は増えているそうです。また、今のように大きな柿は、奈良時代にやはり中国から渡来したと考えられています。

【主な柿の品種】
○富有(ふゆう)
 富有の原産地は、現在の岐阜県本巣郡巣南町居倉といわれています。1857(安政4年)に小倉初衛さんが初めて栽培した柿がすばらしく、その土地の名前にちなんで居倉御所と呼ばれていましたが、同じ村落の福島才治さんが自家の柿に接ぎ木して見事な柿を実らせました。福島さんは当時、盛んに開かれていた品評会で、新品種として世に問うことを考え、「福寿」「富有」のいずれがいいか迷った末、古典『礼設』中にある「富有四海之内」の言葉を採用して「富有」と命名しました。名声があまねく天下に広がることを願ったものでしたが、出品した1898年(明治31年)の柿品評会では一等賞を受けました。甘柿全体では11万686t生産されていますが、そのうち富有柿が60%を占め、南は九州から北は新潟県まで広い地域にわたって「甘柿の王様」に君臨しています。

○次郎
 1844年(弘化元年)、静岡県周智郡に住む松本次郎吉さんが太田川を流れている柿の幼木を拾って、植えたのが始まりと伝えられています。この原木は火事で焼けたものの、焼け株から新芽を育成させて、現在は町の文化財になっています。柿のファンは派閥がたくさんに分かれます。甘柿派、渋
柿派、そして甘柿派の中でも富有派、次郎派が二大勢力です。「上品な風味で、あのコリコリした味わいがなんともいえない」というのが次郎派の
代表的な見解だと言われています。次郎は、富有につぐ栽培を誇り、愛知県と静岡県が東西横綱として生産量1万501tの80%を占めます。

【柿の栄養】
柿の成分で特筆できるのは、何といってもビタミンCの豊富さです。酸っぱいイメージのビタミンCとはちょっと意外かもしれませんが、甘柿に含まれているビタミンCはレモンやイチゴに決して負けてはいないのです。他にも、ビタミンK、B1、B2、カロチン、タンニン(渋味の原因)、ミネラルなどを多く含んでいるため、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」という言葉があるほど、柿の栄養価は高いのです。また、「二日酔いには柿」といわれている訳は、ビタミンCとタンニンが血液中のアルコール分を外へ排出してくれるからで、豊富なカリウムの利尿作用のおかげともいわれています。

【柿の上手な切り方】
 柿を生で食べるときの切り方は、ヘタの周りを少し大きめに切り取って、縦切りにすると、柿の甘味が均等に分配されます。というのは、花落ちと呼ばれる部分(ヘタの反対、花ビラが付いていた部分だから花落ち)と種の周りの甘味が強く、ヘタに行くほど甘味が薄くなるからです。

 柿は映画、小説、和歌など様々な文芸にも登場しています。
【文芸に登場する柿】
○寅さんと渋柿
 誰もが知っている映画である「男はつらいよ」。この映画の中にも柿を食べるシーンが登場します。72年製作の第10作「寅次郎夢枕」では、木曽路を旅する寅さんが、道端の柿の木からひょいともぎとって口にするシーンがあります。これが、とびきりの渋柿で、寅さんは渋さにとびあがるというもの。秋の夕暮れに、山寺の鐘が鳴り、寅さんのさすらい一人旅の哀感がしみじみと伝わってくる名シーンでした。

○和歌、俳句
柿の実のあまきもありぬ柿の実の渋きもありぬ渋きぞうまき (正岡子規)

隣る家もその隣る家も柿たわわ(高浜虚子)

里古りて柿の木持たぬ家のまし(松尾芭蕉)

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