2012年1月

傍観者効果
 皆さんは、道端で困っている人を見つけたとき、具合が悪そうでぐったりしている人を見つけたとき、もし、その場に助けられる人が自分だけしかいなかった場合、何とかその人を助けるための行動をとるのではないでしょうか。
 しかし、もしその場に沢山の人がいたらどうでしょうか?

 昔の心理学者の研究で、助けを必要とする人がいても、その場に沢山の人が居合わせた場合に援助活動をする割合が減ってしまうということがわかりました。
なぜだかわかりますか?
 その理由の1つ目は、援助しようとする場に沢山の人がいると責任が分散されてしまうことが挙げられます。一人だと100%ある責任が二人だと50%というふうに、減ってしまうように感じられてしまうのです。
 2つ目の理由は、人は他者の行動を見てから自分の行動を決めがちであるためです。例えば、沢山の人がいる部屋で煙が発生した場合でも、誰も逃げる行動を取らなければ、皆がいるので大丈夫だと思い込んでしまうような行動のことをいいます。
 もし、あなたが、とても困った状況に陥って助けを必要とするようなとき。そして、周りに沢山の人がいた場合・・・

  皆が知り合いの場合:助けてもらいたい人の名前を呼んで、具体的に助けてもらいたい内容(救急車を呼んで下さい、等)を伝えると良いでしょう。
  知り合いが全くいない場面:助けてもらいたい人の具体的な特徴(そこの赤い服を着た男の方、等)を挙げてお願いすると良いでしょう。

 他者の行動を見て自分の行動を決めることは決して悪いことではなく、社会に適応するためには必要なことでもあります。ですが、災害時や緊急時などに、集団ではこのようなことが起こりやすいことを知っておくと、自分の身を守る役に立つことがあります。集団では自分の位置づけや役割というものがあり、それは家族においても同じです。相手がわかってくれているだろうと思っていることでも、実は伝わっていなかったり、責任が分散されてしまって、歪が生じることも少なくありません。
 この機会に自分の属する様々な集団においての、自分の行動や役割について考えてみてはどうでしょうか?

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2012年1月

シナモン
 明けまして、おめでとうございます。新春とは申しながらまだ厳しい寒さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。今回はシナモンの意外な効能についてご紹介したいと思います。シナモンとは、クスノキの一種の樹皮をはぎ取って乾燥させた物です。日本名は桂皮や肉桂とも呼ばれ、薬用に用いられたり、香辛料やお菓子作りにも用いられる食材で、奈良時代より伝わっていたそうです。

例えばニッキ飴や八つ橋など、ニッキというとわかりやすいかもしれません。他にも、シナモンロールやアップルパイなど、お菓子作りに広く用いられており、中東や北アフリカでは香料として料理にも用いられています。薬用としてはシナモンには抗菌作用や発汗作用・健胃作用、血行を改善して冷え性や肩こりを解消するなど、薬用としては多くの健康効果があるといわれています。近年、このシナモンに血糖値や中性脂肪、コレステロール値等を下げる働きがあることが発見され新たに注目を浴びています。

アメリカの医師リチャード・A・アンダーソンの実験によると、一日一グラムのシナモンを摂取しただけで、糖尿病の患者さんの血糖値が下がったという結果が得られたそうです。また、この実験で、血糖値だけでなく、中性脂肪、コレステロール値も下がったという結果がでたそうです。これはシナモンに含まれる《プロアントシアニジン》という成分がインスリンの分泌を活発にし、すみやかにブドウ糖の取り込みを促したためだと考えられています。
しかし、取り過ぎは体に害があることもあるので、摂取量は一日一グラムまでにしておいたほうがよいと言われています。また子宮に対する刺激が強いので、妊娠中の方はシナモンを避けたほうが無難です。シナモンはこのような働きのため、古くから漢方など広く使われていたのでしょうね。みなさんも手軽な紅茶等からはじめてみてはいかがでしょうか。

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2011年11月

早いもので、今年もまもなく終わろうとしております。今年は東日本大震災があり、原子力発電所の事故も加わったため、未だ復旧、復興の足かせとなり、日本経済の停滞、悪化が心配されます。 先日名古屋大学減災連携研究センター客員教授隈本邦彦氏のご講演を聞く機会がありました。氏はNHKに勤務されていた際、科学報道や防災報道に関わってきた経験を生かし、現職につかれているそうです。阪神淡路大震災は直下型地震であり、非常に多くの負傷者がでたこと、死者の8割以上が建物の倒壊や家具の下敷きになって死亡したということ、被害は古い建築基準の建物に集中していたことなどが教訓であったそうです。それと比較して東日本大震災は巨大津波による溺死が死者の大多数を占め、非常に広域に被害が及んだ事と原発事故が付け加わった事が教訓であり、それぞれの教訓に学んでいかなければいけないとの事でした。そこで防災を考えた場合、旧建築基準の建物は耐震診断を受け、耐震補強を受ける事が重要との事でした。建物や家具が倒れなければ、圧死もなく、火事も起こらないからだそうです。そして津波や液状化などの被害を受けないようにするには地盤のしっかりした所に住むようにすべきとの事です。しかしながら実際の対応は困難ですから、普段から2階建て以上の避難場所を確認し、避難経路を確認し、時々避難訓練を行う必要がありそうです。
 政府は社会保障と税の一体改革成案で、受診時定額負担制度の導入を検討しているそうです。受診するたびに百円を徴収しようとするものです。一度導入されればいずれ五百円、千円になっていく恐れがあり、所得の少ない方、受診回数の多い病状の安定しない方には大きな負担になります。受診を差し控え、手遅れになってしまう事にもなりかねません。この制度導入に反対する署名をお願いする事になるかと思いますので、その折には是非ご協力をお願いいたします。

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2011年11月

妊娠・出産のメンタルヘルス
 みなさん、マタニティマークをご存知でしょうか。妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもので、特にお腹の大きさが目立たない妊娠初期の配慮を促すことを目的に利用が始まったものです。妊娠は女性の心と体に大きな変化をもたらし、その家族の価値観やライフスタイルも変化させたりしますが、「妊娠は病気じゃないんだから」「私はそんなことはなかった」という言葉が聞かれるように、妊娠がもたらす心身の変化への理解は十分ではありません。
 今回は妊娠・出産にまつわるメンタルヘルスについて考えてみたいと思います。

 
 ◆妊娠中◆
 
妊娠中にうつ病が発症する頻度  4%~29%(5人に1人)
抑うつ症状が強くなりやすい人  うつ病の既往がある、初めての妊娠・出産である、妊娠中絶の経験がある、夫からのサポートが得られていない
特徴  身体的な症状として訴える(つわり、寝苦しさ)

あまり心の問題としてとしてケアされることはないようですが、実際は妊娠中の精神状態の不安定さが一番つらかったと振り返る母親が多いことも事実です。

 ◆出産後◆
||| マタニティーブルーズ ||| (女性が出産後の体や役割の変化に適応するための正常な反応)
  
発症時期  出産後3日~14日以内
経過  数時間から数日間持続し、自然に消失
症状  精神面:抑うつ気分、気分の不安定、涙もろさ、不安、焦燥感(ソワソワ感)困惑
身体面:頭痛、疲労感など
特徴  通常の抑うつに比べて身体的な抑うつ症状が強い
出現頻度  出産した母親の4%~50%(2人に1人の割合)

||| 産後精神病 |||
 
発症時期  出産後2週間以内
経過  薬物療法によって比較的軽快することが多い
症状  不眠、焦燥感、抑うつなどの前兆の出現。その後急激に幻覚、妄想などの精神
症状、強い混乱、一時的な記憶や意識の障害
出現頻度  10000人に3人

||| 産後うつ病 |||
 
発症時期  出産後数週間~数カ月
経過  中等度から重度のうつ病には抗うつ薬が有効
数カ月で軽快。1年以内に2/3が回復。2年目には90%が回復
症状  中心症状:気分の落ち込み、興味や喜びを感じにくくなる  その他:食欲の減退もしくは増加、不眠または睡眠過多、ソワソワ感 必要以上に自分を責める、全く価値がないように感じる
特徴  赤ちゃんの健康や母乳の心配、母親としての自信のなさや過度の罪悪感として訴えることが多い
出現頻度  出産した女性の10%~15%(10人に1.5人の割合)
リスク要因  妊娠期のストレス、社会的なサポートの有無、うつ病の既往、夫婦関係

 <<サポート>>
 平成19年より「こんにちは赤ちゃん事業」という生後4ヶ月にまでの乳児のいる家庭への保健師や助産師らによる訪問支援がはじまりました。さまざまな不安や悩みの相談、子育て支援に関する情報提供、親子の心身の状況や養育環境等の把握・助言などを行うものです。
支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供につなげることが産後うつ病の予防や、親子関係への早期支援につながると期待されています。

 <<家族ができること>>
 夫をはじめ周囲の人からのサポートが産後うつ病の予防につながります。妊娠期におけるつわりへの無理解や家事育児への非協力的な態度がストレスを増大させることとなり、産後うつ病を発症させる要因となってしまいます。
 とくにつわりの程度は人によって様々で、決して気分の問題として片付けられるものではありません。「男性だからわからない」、「私はそんなにひどくなかった」「昔はそれでも家のことをやっていた」と突き放すのではなく、新しい命を守っている‘お母さん’がその辛さを乗り越えられるように手を差し伸べることが大切です。

 出産後は家族みんなで赤ちゃんを育てるという意識を持ち、‘お母さん’が一人で抱え込まないようにすることがポイントです。それでも不安が消えないときは保健所などの子育てに関する相談窓口で相談をしたり、お友達や子育てサロンなどでおしゃべりをしたり、思い切って保育所の一時保育を利用し‘お母さん’がリフレッシュすることも大切です。名古屋市では「名古屋のびのび子育てサポート事業」を行っていて、1時間から子どもを預かってもらうことも可能です。‘お母さん’自身も、つらいなと感じたら自分から助けを求めることを忘れないでくださいね。

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