院長より

 2年に一度の診療報酬制度の改定がこの4月に行われました。相も変わらず4月から始まるのに大筋が決まるのが2月末、細かな点数設定が決まるのが3月はじめ、さらに運用詳細は4月になってから示され、あるいは変更されるというお粗末な状況でした。医療は消費税非課税ということになっていますが、医薬品や医療機器等の仕入れや購入には消費税がかかっており、その分が保険点数に上乗せされていることはご存知でしょうか。非課税のはずなのに定価に含まれていることになるのです。この矛盾を訴えてもなかなか制度変更にならず、今回も同様の方法で消費税増税への対応がなされました。来年、秋に予定されているさらなる増税の時にはどうなるのでしょう。きちんとした対応、つまりゼロ税率あるいは軽減税率として矛盾を解消して欲しいものです。
 また、一昨年にも書いた入院中の患者さんの診療に関わる制度の改悪は今回も変更してもらえませんでした。入院中に他医療機関を受診する際には必ず入院中の医療機関の主治医にそれを伝え、情報提供書を発行してもらうことを忘れないで下さい。
 日本の科学技術の信頼を損ないかねない事件が散見されます。一つはご存知STAP細胞の件です。何が真実かはまだ見えてきませんが、解明させるはずのこの分野の第一人者と言われている先生の論文にも問題が生じているようで、泥沼化しているようです。医療の分野でも血圧を下げる薬の論文にデータ改ざんの疑いがあるようです。発売前の臨床研究のデータの改ざんであり、また製薬会社の社員がそれに関係していた疑いが持たれています。その薬の信頼性はもちろん、そういうことが行える状況であったということで、すべての薬の信頼性にも関わってきてしまいます。科学者の1人として今の状況を憂い、患者さんのためになることのみを行い、ためにならないことは行わないという医療の原則を改めて思い起こしています。

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記憶

記憶とは
 記憶とは、過去の経験を保持し、後にそれを再現して利用する機能であり、符号化、貯蔵、検索の3段階に分けることが出来ます。人間は、声や文字などの情報を、様々な意味づけをしながら符号に変換し、脳の記憶を司る部位に記憶して貯蔵していきます。そしてその貯蔵された情報を、必要な時に検索して思い出します。この一連の作業が記憶のメカニズムと言われています。

短期記憶と長期記憶
 人間の記憶は、その保持時間の長さによって「短期記憶」と「長期記憶」に分けることが出来ます。短期記憶とは、短期間保持される記憶であり、約20秒間保持することが出来ると言われています。これに対し、長期記憶とは、長期間保持される記憶であり、忘却しない限り、死ぬまで保持されると言われています。例えば、電話帳で番号を調べて電話をかけた後、もう一度番号を思い出そうとしてもたぶん思い出せないでしょう。このように、番号を入力し終わるまでの短時間だけ記憶しているのが、短期記憶と呼ばれるものです。これに対して、自宅の電話番号など自分にとって大切な番号は、必要に応じていつでも思い出すことが出来ます。こういった、検索可能なものが長期記憶と呼ばれるものです。人間は、日々取り入れられる膨大な情報のうち、大切だと思う情報だけ長期記憶として貯蔵しておき、それ以外のものは短期記憶として忘却されてしまいます。
 しかし、いくら長期記憶となっても忘却されてしまうことがあります。長期記憶の忘却の原因については、減衰説と干渉説、さらに検索失敗説が存在します。減衰説とは、時間の経過とともに記憶が失われていくという説で、干渉説とは、ある記憶が他の記憶と干渉を起こすことによって記憶が失われていくという説です。検索失敗説とは、思い出せないことというのは、記憶された情報自体が消失しているのではなく、適切な検索手がかりが見つからないため、記憶内の情報にアクセスできないことによるという説です。

長期記憶の種類
 長期記憶には、「宣言的記憶」と「手続き的記憶」があるとされています。
 宣言的記憶とは、言葉で表現できる記憶のことで、教科書を使った学習や知識などが当てはまります。宣言的記憶にはさらに2種類あるとされており、「エピソード記憶」と「意味記憶」があります。エピソード記憶とは、個人的な経験に関する情報の記憶で、例えば「今週の月曜日にハンバーグを食べた」などという記憶のことです。時間や場所、その時の感情などが含まれます。これに対して意味記憶とは、言葉の意味についての記憶であり、例えば「ハンバーグとはお肉を固めて焼いたものである」と一般的な知識として知っていることです。
 一方、手続き的記憶とは、物ごとを行う時の手続きに対する記憶のことで、言葉で説明できないことが多く、意識しなくとも使うことができます。いわゆる「体が覚えている」状態です。例えば自転車の乗り方や、学期の演奏方法などが当てはまります。

 このように、一概に記憶と言っても沢山の種類があります。記憶力を高めるためには、長期記憶にきちんとした形で保存することが重要です。私達の脳の中では、睡眠中に記憶した内容が再構成されると言われています。したがって、物事をはっきりといつまでも覚えておくためには、寝る前に記憶したい内容を整理して、反復して思い出すことがもっとも重要な記憶力アップのコツだと言えるでしょう。

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特定健診

さて、今年も来月から特定健診が始まります。毎年この時期に医院たよりに載せていますが、昨年からの変更点もありますので、今月は特定健診についてのお知らせです。
無料で受けられる健康診断ですので、今まで受けたことのない対象者の方も是非一度特定健診を受けてみてはいかがでしょうか?

国民健康保険・後期高齢者医療
対象者
平成26年9月30日までに名古屋市国民健康保険に加入されている方のうち、平成26年度中に40~74歳になる方と、平成26年10月1日~平成27年3月31日に75歳になられる方と、後期高齢者医療被保険者の方が対象となります。 平成26年4月1日~平成26年9月30日に75歳になる方は後期高齢者医療に含まれます。
5月下旬より受診券の郵送が開始されます。A4サイズの封筒で届きますので、一度中身をご確認ください。以前も特定健康診査を受けたことがある方には、過去の健診結果が記載された受診履歴も同封されておりますので、健康管理にお役立てください。対象の年齢に入っているにも関わらず受診券が郵送されてきていない方は、名古屋市健康福祉局にお問い合わせ下さい。   
 電話番号: 052-972-2637

協会けんぽ
 協会けんぽの加入者の扶養家族の方も、受診券は加入者ご本人に配布されます。加入者の方から受診券を受け取り、特定健康診査を受診しましょう。
受診期間等については、受診票で確認をして下さい。

昨年度からの変更点
今までは既往歴がある方のみ実施可能であった心電図と貧血検査が、名古屋市国保加入の方で対象年齢の方は実施が可能になりました。対象年齢は40、45、50、55、60、65、70歳の方です。
また、休日健診の実施回数も拡大され、がん検診が胃がん・大腸がんに加え、肺がん検診も受けられるようになりました。
北区では、8月24日(日)北区役所講堂、11月24日(振替休日)北区役所講堂、2月1日(日)楠地区会館で行われます。各回ともに定員50名までの先着順となっております。

特定健康診査を受けられる際は原則、食後10時間以上の空腹状態であることが求められます。その為、健診を午前中に受けられるのであれば、前日の夕食後より水やお茶のみにして頂き、朝食を食べずに健診を受ける等し、食後10時間以上の空腹状態にして頂くようお願い致します。また、健診を受けられる際は必ず受診券と共に保険証をお持ち下さい。
特定健康診査についてわからないことがありましたら、お気軽に職員までおたずね下さい。

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院長より

 日増しに暖かさを増し、春の訪れを感じますが、この時期の寒暖の差は自律神経のバランスを見出し、様々な症状の悪化しやすい時期でもあります。皆様もご自愛の上、気になる症状がありましたら、ご相談下さい。

 スポーツにはほとんど興味がないため、知らない間に始まっていた冬季オリンピックですが、今回も様々なドラマが生まれたようですね。夜中に起きてリアルタイムで応援していて寝不足だという話を聞くと驚きますが、今回もそのような方が結構身近にいて、いっそう驚きました。多くの観衆を感動させるのが、スポーツの魅力の一つですものね。東京オリンピックではどのようなドラマが生まれるのか、東京が、日本がそれらによってどう変わっていくのか、楽しみです。

 さてまたこの4月には診療報酬の改定が行われます。診療報酬は消費税非課税ですが、薬剤や検査機器などの購入には消費税がかかっていますので、その補填分が診療報酬に上乗せされます。全体では若干の増加ですが、3%の増税分を考えると実際はマイナスの改定になるようで、ますます弱小医療機関の経営は困難になりそうです。また今回の改定の目玉の一つに安定剤多剤投与抑制があげられます。日本での多剤投与に関しては、以前から相互作用、副作用の見地から問題視されてはいましたが、十分な効果が得られず、その結果、多剤投与になってしまった現実を考えると、多剤投与イコール悪という考えには納得できないできない面もあります。ただ国がそのように考えるようになったのなら従わないといけませんから、今後は今まで以上に薬の量を減らしていくよう考えますので、ご協力をお願いいたします。

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