ストレスを感じた時は、早めに対処しましょう

ストレスとは?
 ストレスとは「心身に負荷がかかった状態」と考えられています。そして、心身に刺激を与えストレス反応を起こすものを「ストレッサー」、それにより心身に負荷がかかっている状態を「ストレス状態」といいます。ゴムボールを上から押しつぶした状態を思い浮かべてください。ボールをへこませている手の力が「ストレッサー」、それによりボールがへこんでいる状態が「ストレス状態」と考えてみるとわかりやすいのではないでしょうか。

ストレスを受け続けるとどうなる?
 外部からのストレスを受けると、身体は一旦ショックを受け、こころやからだに様々な症状がでることがあります。しかし、人間の身体は、心身のバランスを保つために自動的に抵抗力を高めて対応し、ストレス反応を抑えようとします。先ほどのゴムボールの例でいうと、へこんだ後、元に戻ろうとする力が、この抵抗力にあたります。しかし、長期間ストレスを受け続けてしまうと、次第に抵抗力が失われていき、ストレスに対抗できなくなっていきます。ゴムボールに力を加え続けると、割れてしまい、元に戻らなくなってしまいます。この状態が、抵抗力が失われた状態です。そうなってしまうと、抵抗力で一旦抑えられていた症状も、悪化してしまいます。症状の悪化を抑えるためにも、早めの対処が重要です。そのストレスの段階には、以下の3つの段階があると言われています。

1、警告期
 ストレスを受けることで、身体が防衛体制をとる時期です。この時期には、こころとからだが様々な危険信号を発し、警告を出します。その信号には、以下のようなものがあります。
・しっかり休んでも、疲れが抜けない
・血圧が不安定になる(ばらつきがでる)
・普段よりもイライラしやすくなる
・普段よりもミスが増える  など
この時期の対策としては、適度に休息をとったり、好きな趣味を行うなどの方法でこころとからだをリフレッシュする、ということが有効です。普段から継続的に行っておくと良いでしょう。

2、抵抗期
 身体がストレスに反発・抵抗をし、ストレス反応を抑えこんでいるため、ある程度安定して過ごすことができる時期です。とはいえ、長期的にストレスを受け続けたり、ストレッサーが増加することがあると、簡単に状態が悪化し、次の段階である「疲弊期」に入ってしまう可能性があります。この時期の信号には、以下のようなものがあります。
・血圧の変調が本格化する(血圧の不安定さがより悪化する)
・血糖値が上昇してくる
・仕事や家事を抱え込んだり、休みをとらなくなったりする。 など
この時期では、抵抗を続けている状態となるため、無理をせず早めに休息をとり、心身を休ませる必要があります。仕事や家事で忙しくても、無理な活動はせず、しっかり休養をとるようにしましょう。多くの場合、この時期に適切な対応を行えば、大きな問題にはいたらずに心身の状態を復調させることができます。   

3、疲弊期
ストレスを受け続けることで、心身が疲れきってしまい、自分の力ではどうにもならなくなってしまう時期です。この段階までくると、休息や趣味などでのリフレッシュだけでは、体調を整えることが難しくなります。この時期の信号には、以下のようなものがあります。
・集中力や記憶力が低下し、普段できていたことができなくなる
・踏ん張りがきかなくなり、それまで問題なくこなせていたようなことでも耐えられなくなる
・何もする気がなくなる
・うつ病の症状や、心身症(身体に症状がでる。頭痛、腹痛など)といった病気を発症する。など
この段階にいたった際は、一刻も早い専門医への受診をおすすめします。

社会生活をおくる上で、全くストレスがない状態を作ることは難しいものです。自分でも気づかない間にストレスを受け、症状がでてくることもあるでしょう。疲労が貯まった状態で頑張り続けてしまうと、こころの病を発症するリスクが高くなります。そうなってしまう前に、こころやからだからのストレスサインを受け止め、適切に対処し、こころの健康を保ちましょう。

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クーラー病

今年の夏は関東から東海でかなり暑く、既に職場や自宅でクーラーを利用している方も多くいらっしゃると思います。
1日中キンキンに冷えた室内にいることが多く、クーラー病になってしまったという経験はありませんか?
夏バテと混同されがちなクーラー病ですが、たしかに、身体がだるい、食欲がないといった症状は同じです。しかし、クーラー病は室内と外気の寒暖の差が原因で起こります。暑い外気に触れることで血管が拡張し、体温の放出作用が働きます。一方で、涼しい室内では冷房で血管が収縮し、体温を保とうとします。クーラーのかかった冷えた部屋と熱い野外との行き来をすることで、寒暖差に自律神経がついていけなくなり、バランスが崩れてしまうことが原因となっています。よって、夏バテの対処は「暑さを避ける」のに対し、クーラー病は「体を温める」ことが対処法になります。

『クーラー病にならない為の対策』
・日中クーラーのかかった室内で長時間過ごす場合、カーディガン等羽織るものを用意して肌に直接冷気が当たらないように気をつけましょう。

・凝りをほぐし、血行を良くするためにストレッチや散歩、軽い運動を心がけましょう。
・人間が対応できる温度変化は5度以内と言われています。外気との温度差は5度以内にすると良いでしょう。冷房の場合、27~28度の室温にしておくのが最適です。

・夜更かし等で生活リズムや身体のリズムがずれてくると自律神経のバランスが悪くなります。できるだけ規則正しい生活をしましょう。

・身体の芯まで温める為、シャワーで済ませるのではなくぬるめのお湯にゆっくり浸かることも大切です。

・身体を内側から温める陽性食品(しょうが、ねぎ、にんにく等)をとるように心がけましょう。

・寝る時は腹部等の大幹部や足先はできるだけ冷やさないよう、扇風機や冷房の風邪が直接当たらないよう注意しましょう。

ここにあげたことを全て実行することは難しいかもしれませんが、少しずつ意識して過ごすことでクーラー病を予防しましょう。

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院長より

 ゴールデンウィークが始まる直前、穏やかな晴れの日が続いたと思ったら、急に夏日到来で、寒暖の差の大きさにびっくりしてしまいます。皆様、体調はいかがでしょうか。このような寒暖の差は自律神経のバランスを崩しやすくしますのでお気をつけになってください。ただ同じように症状があっても、原因が理解できている方とそうでない方とでは困り方も違いますし、直り方も違います。原因が自分なりに理解できている方は、そんなもんだと思えますし、いつごろ収まるとか、どの程度まで悪くなるかとかを予測できますので、不安要素が増えず、その結果直るのも早くなります。心理的側面など内因面は考えることで泥沼に入り込むなど望ましくない結果となることもありますが、天候の変化などの外因面は理解、予測しやすい要素ですので、考えてみてください。
 さて来年からマイナンバー制度が始まることにより、この秋から各個人、法人にマイナンバーが付与され、通知されるそうです。一人一人に生涯ついて回る番号ですので、メリットとしては大問題となった公的年金のヒモ付けが不十分だったがための混乱が起こらなくなるなど、社会保障制度のスムーズな運営には寄与するだろうと思います。一方でデメリットとしてはプライバシーがどこまで守られるかという心配です。当初はあくまで使える範囲を限っての限定的運用ですが、それがいつまで、どこまで守られるか疑問です。よく注意しておかなければなりません。
 統一地方選挙が終わりました。盛り上がりに欠け、投票率も低かったようです。また全国各地で立候補者が定数を超えなかったため投票さえ行われなかったことも多かったようです。政治資金の不適切な運用が全国の地方自治体、あるいは国会議員でさえ問題となっている今、政治家を志す方が減っているのでしょうか。いろいろな事情があるのだとは思いますが、住んでいる土地を住みやすくするのは、やはり政治の力です。志高く政治を行うもの、それをきちんと応援するもの、両者がうまく回って、住みやすい安全な町造りができると思いますので、一人一人があきらめないようにしましょう。

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大人のADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHDとは
 不注意(注意欠陥性)、衝動性、多動性の3つの症状を特徴とする行動の障害で、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
 大人のADHDといっても、大人になってから初めて出現するものではなく、子どものころからこれらの3つの症状に悩まされており、多くの人は自分なりの工夫や対策を考えて努力していますが、それにもかかわらず、大人になっても状況が改善されず、うまく生活することができず困っていることが多くあります。では、大人になってから見られる症状にどのような特徴があるのでしょうか。

注意欠陥性
 ・仕事などでケアレスミスをする
 ・忘れ物、なくし物が多い
 ・約束を守れない、間に合わない
 ・時間管理が苦手
 ・仕事や作業を順序だてて行うことが苦手
 ・片付けるのが苦手
  ・・・本人のやる気とは関係なく「無責任」「だらしがない」と誤解されやすいです。
衝動性
 ・思ったことをすぐに口にしてしまう
 ・衝動買いをしてしまう
  ・・・さまざまな刺激に対して考える前に反応する傾向が大人まで持ち越される場合があります。
多動性
 ・落ち着かない感じ
 ・貧乏ゆすりなど、目的のない動き
  ・・・成長するにつれて症状の程度が改善されることがありますが、じっとしているのが苦手な人や、おしゃべりという形で多動が残る場合もあります。

 現在、ADHDにおけるこれらの症状の改善に役立つ薬による薬物療法が行われております。しかし、その一方で、これらの症状から大人のADHDの特徴をもつ人は「落ち着きのなさ」「物覚えの悪さ」「衝動的な行動」といったことが原因で、幼い頃から養育者にずっと叱られ続けたり、なかなか成果を挙げにくかったりといった経験をすることが多いようです。その結果、自分を責めて自分のことをどんどん嫌いになっていき、病気につながることもあります。このように二次的に引き起こされた病気のことを「二次障害」といいます。大人のADHDの特徴をもつ人の70%~75%が二次障害をきたしていると言われています。その中でも、特に多いのが次の3つです。

・うつ病
 大人のADHDの中でも特に女性に多くみられます。うつ病の治療のため受診した人の16%にADHDの症状がみられた、という研究報告もあり、前回まで紹介してきた「自分への自信のなさ」が、まさにうつ病に特徴的な悲観的な考え方へとつながっていった結果と考えられています。
・不安障害
 何かに対する恐怖や悪いことが起こりそうな予期不安を指します。診察に訪れた大人のADHDの特徴をもつ人の24~43%に見られます。「明日の仕事がうまくいかない気がして眠れない」とか「きっと明日、上司に叱られてしまう……」などがそうです。
・物質依存(薬物やアルコールを乱用してしまいます)
 背景として、ひどい自己嫌悪感の苦しみを緩和するために薬物を用いるという見方や、衝動性が強いため薬物に手を出してしまうという見方が挙げられています。また、大人のADHDの人の有病率は、そうでない人の約2倍。32~53%にアルコール、8~32%に薬物の問題があることがわかっています。

 これらの症状を感じられた際には、医療機関や支援センター、カウンセリングを受けるなど相談することが望ましいです。そして、ADHDと向き合うことをお勧めします。二次障害だけよくなったとしても、ADHDと自分との関わり方が変わらなければ、また二次障害に陥ります。障害というよりも自分の特性なんだと考えて少しずつ行動を変えていくのもいいと思います。

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