大人のADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHDとは
 不注意(注意欠陥性)、衝動性、多動性の3つの症状を特徴とする行動の障害で、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
 大人のADHDといっても、大人になってから初めて出現するものではなく、子どものころからこれらの3つの症状に悩まされており、多くの人は自分なりの工夫や対策を考えて努力していますが、それにもかかわらず、大人になっても状況が改善されず、うまく生活することができず困っていることが多くあります。では、大人になってから見られる症状にどのような特徴があるのでしょうか。

注意欠陥性
 ・仕事などでケアレスミスをする
 ・忘れ物、なくし物が多い
 ・約束を守れない、間に合わない
 ・時間管理が苦手
 ・仕事や作業を順序だてて行うことが苦手
 ・片付けるのが苦手
  ・・・本人のやる気とは関係なく「無責任」「だらしがない」と誤解されやすいです。
衝動性
 ・思ったことをすぐに口にしてしまう
 ・衝動買いをしてしまう
  ・・・さまざまな刺激に対して考える前に反応する傾向が大人まで持ち越される場合があります。
多動性
 ・落ち着かない感じ
 ・貧乏ゆすりなど、目的のない動き
  ・・・成長するにつれて症状の程度が改善されることがありますが、じっとしているのが苦手な人や、おしゃべりという形で多動が残る場合もあります。

 現在、ADHDにおけるこれらの症状の改善に役立つ薬による薬物療法が行われております。しかし、その一方で、これらの症状から大人のADHDの特徴をもつ人は「落ち着きのなさ」「物覚えの悪さ」「衝動的な行動」といったことが原因で、幼い頃から養育者にずっと叱られ続けたり、なかなか成果を挙げにくかったりといった経験をすることが多いようです。その結果、自分を責めて自分のことをどんどん嫌いになっていき、病気につながることもあります。このように二次的に引き起こされた病気のことを「二次障害」といいます。大人のADHDの特徴をもつ人の70%~75%が二次障害をきたしていると言われています。その中でも、特に多いのが次の3つです。

・うつ病
 大人のADHDの中でも特に女性に多くみられます。うつ病の治療のため受診した人の16%にADHDの症状がみられた、という研究報告もあり、前回まで紹介してきた「自分への自信のなさ」が、まさにうつ病に特徴的な悲観的な考え方へとつながっていった結果と考えられています。
・不安障害
 何かに対する恐怖や悪いことが起こりそうな予期不安を指します。診察に訪れた大人のADHDの特徴をもつ人の24~43%に見られます。「明日の仕事がうまくいかない気がして眠れない」とか「きっと明日、上司に叱られてしまう……」などがそうです。
・物質依存(薬物やアルコールを乱用してしまいます)
 背景として、ひどい自己嫌悪感の苦しみを緩和するために薬物を用いるという見方や、衝動性が強いため薬物に手を出してしまうという見方が挙げられています。また、大人のADHDの人の有病率は、そうでない人の約2倍。32~53%にアルコール、8~32%に薬物の問題があることがわかっています。

 これらの症状を感じられた際には、医療機関や支援センター、カウンセリングを受けるなど相談することが望ましいです。そして、ADHDと向き合うことをお勧めします。二次障害だけよくなったとしても、ADHDと自分との関わり方が変わらなければ、また二次障害に陥ります。障害というよりも自分の特性なんだと考えて少しずつ行動を変えていくのもいいと思います。

カテゴリー: 201505, 心理室より, 病気・治療 パーマリンク