ストレスチェック制度

 仕事や職業生活に不安やストレスを感じている労働者が5割を超える中、平成26年6月に
労働安全衛生法が改正され、平成27年12月からストレスチェック制度が開始されました。
 これにより、労働者が50人以上在籍している事業所では、事業者に対して、ストレスに関する
質問票を利用した「ストレスチェック」を全労働者へ行うことが義務化されました。
 労働者自身に受検義務はありませんが、全員が受検することが望まれています。自分自身の
ストレス状態に気づき、自分自身でケアをするための良い材料になると思います。
 積極的に利用し、こころの健康の維持に活用していただきたいと思っています。

1. どのようなことをするのか?
  ストレスに関する質問票に、労働者本人が回答をします。厚生労働省が推奨している質問
 用紙は簡単な内容で、短時間で回答できるものになっています。

2. 何のために実施するか?
  労働者自身が自分のストレス状態を知ることで、メンタルヘルス不調のならないようにする
 ための「未然予防」を行うための仕組みです。精神的な病を発見するためのものではありま
 せん。一人ひとりがその結果を知ることで、自分のこころの健康を保っていくことが目的です。

3. どのように受検する?
  パソコンを利用してWEB上で実施する方法と、紙媒体によって実施する方法があります。
 実施方法は、所属している会社の状況によって違ってくると思われます。例えば、パソコンが
 利用できない職場では、紙媒体を利用することになるでしょう。
  結果通知には、「受検者のストレス状態」や「セルフケア(自分自身でこころのケアをすること)
 に関する内容などが記載されます。

4. ストレスが高いと判定されたら?
  ストレスチェックの結果、ストレスが高いと判断された場合には、医師の面接を受ける事が
 できます。これは、全員が面接を受けなければならないということではなく、「面接を申し込
 んだ」人が受けることになります。とはいえ、ストレスが高いと判断された人全員が面接を
受けることが望ましい、とされています。
  医師面接では、こころの状態を把握し、助言を行うとされています。また、必要であれば、
 医師の意見を元に、職場の環境改善等を行っていくことも想定されています。   

5. プライバシーの保護、不利益な取り扱いの禁止
  多くの個人情報が含まれているので、プライバシーの保護に力を入れています。本人の
 同意がなければ、事業者(会社経営陣)に個人の結果が伝わらないようにしなければなら
 ない、とされています。
  また、ストレスチェックを受けなかったことや、その結果内容等により、労働者個人が不利益
 な取り扱いを受けることも禁止されています。
  このように、受検者が安心して受検できるように、様々な規定が作られています。

 まだまだ、始まったばかりの制度ですが、最初に書いたように自分自身のこころの健康を守る
上で、有効な方法になると思います。あなたの会社で実施された時には、自分自身のメンタルヘルス不調を未然に防ぐためにも、面倒臭がらずに回答しましょう。
 詳しい内容を知りたい方は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
                     ( 参考文献  厚生労働省ホームページ内 「こころの耳」 ) 

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退職後の健康保険

病気や怪我をした際、健康保険証を医療機関で呈示すれば、私達は一部負担金を窓口で支払うことで診察、処置、投薬等の治療を受けることができます。しかし、退職等によって社会保険の資格を喪失した後、次の保険に加入にしないまま無保険の状態にしてしまうと、医療機関での窓口負担が大きくなり病院にかかることが経済的に難しくなってしまうことがあるかもしれません。
今回は、そんな退職後の保険をどうしたら良いかといったケースを紹介したいと思います。

社会保険へ加入していた方の退職後に選べる保険は以下の3つです。

・任意継続健康保険

・国民健康保険

・ご家族の健康保険(被扶養者)

最初の任意継続健康保険は、在職していた会社の保険を名前の通り任意で継続する保険です。通常、退職前に会社側へ任意継続希望の意思を伝え、加入手続きをします。
有効期限は2年間で、その間の保険料は原則変わりませんが、在職中は会社が半分負担してくれていた保険料を任意継続の場合は全て自分で負担することになるので、実質今までの倍程度の保険料を支払う計算になります。
保険料の支払いが滞ったり、新しく別の会社の社会保険に加入したり、後期高齢者医療の該当年齢になった場合は資格を喪失しますが、それ以外は任意の申し出により途中で辞めることはできません。その為、国民健康保険やご家族の健康保険の扶養に入ることは、任意継続保険証を使用している間はできないので注意が必要です。

2番目の国民健康保険はお住まいの市区町村の健康保険担当窓口で加入の手続きをする保険になります。前年度の所得や世帯人数等に応じて保険料が定められ、保険料の減免制度等もあります。
市区町村によって保険料(税)の算定方法が異なりますので、詳しくはお住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口にお問い合わせください。

3番めのご家族の健康保険へ被扶養者として加入する場合ですがこの場合の被扶養者の資格には、
・年間収入が130万円以内であること(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円以内)
・配偶者や子、孫、および弟妹、父母、祖父母等の直系尊属でない場合は同居が必要
といった条件が定められています。
加入は、ご家族の加入する保険組合で手続きをしてください。

以上が保険の説明になりますが、自分はどの保険を選んだらいいのかわからないといった方もいらっしゃると思います。
通常、普通に会社勤めをされていた方は先にあげたように年間収入が130万円以内(60歳以上または障害者の場合であれば年間収入180万円以内)になることはあまりない為、退職後すぐにご家族の被扶養者として保険加入できるケースは稀です。
国民健康に加入した場合はいくらになるのか、前年度の所得が分かるものを窓口にお持ちになれば計算してもらえますので、今払っている保険料の倍の額とどちらが安いのか、比べてから退職後の健康保険を選ぶというのも方法の1つです。

他にもわからない、相談したいということがあれば当院職員へお気軽にお声かけください。

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院長より

あけましておめでとうございます。
 例年と比較して暖冬と言われていますが、年末から年始にかけては寒い日が続いています。寒暖の差が大きいと、自律神経のバランスが乱れることで、さまざまな自律神経失調症状の原因となりますのでご注意下さい。
インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなどの接種はお済みでしょうか。予防接種は接種後、効果を出すまでにある程度の期間が必要で、すぐ効果が出るわけではありません。早めの接種をお勧めいたします。
 今年4月には2年に一度の診療報酬改定が行われる予定ですが、残念ながら診療報酬全体としては前回と同様にマイナス改定になるようです。一昨年にも述べましたが、現在多くの医療機関で利益率が数パーセントしかない状況であり、マイナス改定では、多くの医療機関の経営状態がより悪化しますので、地域医療崩壊が懸念されます。
 ストレスチェック制度の実施が始まりました。労働者の仕事によるストレスの程度を把握し、労働者自身にストレスへの気付きを促し、職場改善に努めることで労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを目的に創設された制度です。事業場に実施する義務がありますが、50人未満の小規模事業場では努力義務となっています。当院も産業医として、また精神科医としてこの制度と関わっていくことになりますが、この制度がうまく機能し、労働者の仕事によるストレスの軽減につながることを願います。

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コラージュ療法

心理士が行う心理療法には様々な種類があります。私達心理士のことを少しでも知っていただければと思い、今回はその中から絵や音楽を通して心の状態を改善する「芸術療法」に分類される、「コラージュ療法」を紹介します。

コラージュ療法とは
コラージュとはフランス語で「糊による貼付け」という意味があるのもので、雑誌や広告、新聞紙などの写真や絵などを切り抜き、台紙に貼って作品を作るものです。切り抜きの中から気に入ったものや気になったものを選び、それを台紙の上に好きなように貼るだけなので、比較的簡単に行えます。コラージュ療法は、このように一つの作品を作り上げることから、心理療法のうち、大きく分けると芸術療法というものに分類されます。コラージュ療法ではこの作成過程において、自己表現が可能になったり、カタルシス効果と呼ばれる癒やし効果が得られます。また、誰かと一緒に作成することによって親近感が湧き、信頼関係を築くことにも役立つと考えられています。とくにコラージュを何度も繰り返し実施していく中で、自己の内面を自ら振り返るようになり、自己の気づきにつながっていくことが最も重要な効果の一つだと言えます。

実施方法
 基本的には、「このようにしなければならない」というルールはなく、自由に行っていただけますが、代表的な実施方法を紹介させて頂きます。
・マガジンピクチャー・コラージュ法
 コラージュの作り手が雑誌や広告などから直接切抜きを選ぶ方法です。
・コラージュボックス法
 A4サイズ程度の切抜きをあらかじめ用意し、ハサミとのり、用紙などと一緒に箱の中に入れておき、そこからコラージュを作成する方法です。
・相互法
 参加者がそれぞれに作品を作るやり方です。
・合同法
 誰かと一緒になって一枚の作品を作るやり方です。
・裏コラージュ
 コラージュの制作過程で切り抜いたけれども貼り付ける際に使わなかった切抜きを裏に貼って残しておくことをいいます。

コラージュ療法の効果
 最初にも述べたように、コラージュ療法ではいくつかの効果が得られます。
・カタルシス効果(癒しの効果)
・ストレス発散
・美意識の満足・達成感
・一緒に作成することにより、参加者間での親近感がわき、信頼関係を構築するのに役立つ
・無意識的な自己に気づく

 以上のようにコラージュ療法では、様々な効果が得られますが、以下の2点に注意が必要です。

・気持ちが乗らない時は無理に作らないで下さい。作業の途中であっても、気持ちが乗らないと感じた時にはいつでもやめて下さい。無理してやっても効果が得られないだけでなく、心理的な不調に陥ることもあります。
・作品の上手い下手は重要ではありません。上手な作品を作ることが目的ではなく、心理的効果を得ることが目的なので、自分の思うように作り表現することが大切です。

 言葉を使わずに、比較的に自分の気持ちを表現することができるので、一度試してみてはいかがでしょうか。

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