2009年5月

不登校
○不登校とは 
 文部科学省の定義では「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間に30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」とされています。

 不登校を主な理由として30日以上欠席している児童・生徒は年々増えていましたが、平成13年度からは横ばい状態です。小学校と中学校を比較してみると、平成18年度では小学校の不登校の児童数は23,824人で302人に1人の割合です。一方、中学校は同じ年に102,940人で35人に1人となっています(文部科学省の調査による)。

 不登校の児童・生徒の大部分は(1)怠けているとか、学校が嫌いなのではない、(2)自分では登校したいと思っているのだけれど、どうしても行けない、(3)無理に登校しても、頭痛や嘔吐などの身体症状が出て、学校にいられなくなるというような状態です。また、不登校の理由も様々で、子ども達が訴える理由が解消されても、登校できないことも多々あります。
   
○不登校と身体症状 
 不登校の子の多くは身体症状を伴っています。代表的な症状は、①頭痛、②腹痛、③吐き気、④めまい、の4つです。これらの症状は、実際に不登校になる前から出現していることが多く、身体症状は不登校の前兆ともいえます。

 自分の内面を言葉で上手に表現できない子どもたちは、言葉の替わりに体で訴えているのです。つまり、身体症状は子ども達の心の声と言えます。体調不良を訴える子どもたちのはなしをじっくりと聞いてあげること、子ども達が心の中を言葉で表現することができ、それをわかってくれる大人が
いれば、身体症状は自然と落ち着いてくると考えられます。           

○中学校の不登校  
 中学生の不登校には、思春期の発達課題が深く関わっていることが多くなってきます。発達課題とは、人間が健全で幸福な発達をとげるために各発達段階で達成しておかなければならない課題のことですが、中学生の時期における課題は、自分とは何かをみつけることです。この課題に取り組む為
には、心のエネルギーをたくさん使わなければなりません。そのためには、内にこもる必要があります。外から見ると活動性が乏しくなったようにみえますが、内側では活発にいろんなことを考えているのです。
 思春期はサナギのような状態なので、学校へ行かせようと無理に引っ張り出してしまうのではなく、周りの大人にはじっと待つということが求められます。思春期の不登校に対しては、まずはその状態を尊重して待つことがとても大切で、期が熟す前に学校へ連れ出そうとすることは、サナギを破いてしまうことに等しいと言えます。

この「待つ」ということはとても難しいことですが、ここでしっかりサナギを守ることで、やがて子どもはふ化し、成熟した大人へと成長していくのです。

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