2004年5月

【糖尿病と診断された時、どうすればいいのでしょう。】
 自覚症状がないので、何か不都合がでてから対応すればいいのでしょうか?その時の対応が将来の人生を大きく左右すると言ってもいいでしょう。恐ろしい合併症が出る前に、適切な対応をすることで、糖尿病を持たない人とほぼ同じような生活をすることができます。糖尿病を克服するために必要なことは、まず糖尿病に対する知識を持つことです。そして、それまでの生活習慣を改善することが大切です。糖尿病は慢性の病気で、薬を飲めば治るというわけではありません。生活習慣そのものを改善し、一生糖尿病と付き合う覚悟が必要です。治療として、1に食事療法。2に運動療法。そして、それでも改善が見られない場合には薬物療法を行います。

【糖尿病治療で最も重要な食事療法】
 糖尿病と診断されたら、まず食事の改善を考えなくてはなりません。糖尿病の原因の多くが生活習慣が引き金になっています。そのため、糖尿病の患者さんの半数は食事療法をきちんと行えば、血糖のコントロールができると言われています。
 過食は、大量のインスリンを必要とするので、それだけ膵臓に負担がかかります。そこで、インスリンをできるだけ使わないで済むようにすること、つまり膵臓をできるだけ休ませてあげることが食事療法の最大の目的になります。但し、極端な食事制限をする必要はありません。糖尿病だからと言って、食べては行けないものもなく、過食を避け、バランスの取れた食事にすることです。
 バランスのとれた食事とは、糖質・蛋白質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維を欠かすことなく摂取する事です。
 糖質・蛋白質・脂質は、私たちが活動していく源となる栄養素です。また、それらを体の中に取り込んだり、体の働きを円滑に行うためには、ビタミン・ミネラルが欠かせません。それらの栄養素をまんべんなく摂取するように心がけましょう。それに加えて、食物繊維を摂る事は、食後の血糖値が急激に上昇する事を防いでくれる働きがあり、合併症の予防に繋がります。食事の度に摂取を心がけましょう。  
 また、合併症である動脈硬化を予防するために、動物性の脂肪を制限し、植物性脂肪や魚油を摂る事も必要です。最近は、糖尿病から来る腎臓障害が増えてきています。腎臓への負担を軽くするためにも、蛋白質ばかりに偏りすぎる食事はなくしたいものです。

【食事療法のポイント】
①一日3食
 まとめ食いは一度にたくさんのインスリンが必要になり、膵臓に負担がかかるので注意しましょう。
②野菜は毎食
 生野菜なら両手に一杯程度。火を通したものなら片手に一杯。
③主食は適量に
 ご飯だけが血糖を上げるわけではありません。主食を減らしすぎるとおかずを食べ過ぎたり、間食が
増えたりしますので注意が必要です。
④副食(魚・肉・卵など)
 ご飯よりおかずを食べ過ぎている人が多いようです。副食は一食一皿にして種類を毎食変えましょう。
⑤牛乳・果物は摂りすぎないように
 一見軽そうでもカロリーは決して低くありません。また、食事と一緒に摂るより、間食として摂った方が、血糖値は上がりにくくなります。
⑥油を使った料理は一日2食まで
  油は非常に高カロリー。油料理の数を抑えて、摂りすぎを防ぎます。 

【外食での注意】 
 自分がよく食べる外食メニューがどのくらいのエネルギーで、どの食品が不足し、何が多すぎるのかを勉強しておく必要があります。1日の指示量を考えて、何をどれだけ食べ、何を残したらよいか素早く頭の中で計算しながら食べるようにします。多種類多量の料理が出た時には、食べて良いものと残すべきものとを選別できれば、外食であっても摂取エネルギーのコントロールが可能です。糖尿病世代は働き盛りでもあり、昼夜二回の食事を外食という生活をしている人がたくさんみえますが、健康のことを考えると、外食は何とか一日一回までに抑えて欲しいものです。一日一回であれば、あとの2食で訂正して、バランスを取ることもできます。できれば、外食のうちの一食は、手作り弁当持参などで野菜をたっぷりと摂り、塩分の調整を心がけたいものです。外食の多い人ほど、本気で外食の食べ方を勉強しなければ、糖尿病のコントロールは望めません。

【アルコールとおやつのとりかた】
 アルコールを飲んで良いのは、血糖値が落ち着いていて、重い合併症のない時です。
 一日に日本酒一合、ビール中ビン一本、ウイスキーはダブルで一杯程度が許容範囲とされています。仕事上の付き合いで酒席に出なければならない場合は、アルコールのエネルギーも一日の総エネルギーの中にはいる事を考えてコントロールしましょう。お酒を許可されている場合でも、食品交換表を参考に、一日二単位(160kcal)以内におさめましょう。
 男性のアルコールに対して女性の場合は、おやつや間食に問題がある場合が多く見られます。しかし、おやつにも利点があって、糖尿病の食事療法に取り組み始めた当初は空腹感が辛いのですが、おやつを食べる事で紛らわせる事ができます。食事の間隔が空きすぎる場合は、むしろ血糖をコントロールするために、軽く食べた方が良い事もあります。
 但し、おやつも間食も一日のエネルギーの中に含まれるので、100kcalを超えないようにしましょう。おやつは甘い物という考えを捨て、甘みの少ない果物、ヨーグルト、牛乳、手作りゼリーなどを食べるようにすればエネルギー量も抑えられます。 

【『食品交換表』は食事療法の虎の巻】
 一日に必要なエネルギー量をバランスよく食べるにあたって、何をどれだけ食べたらいいかわからないというのは一般の人には当たり前の事です。
 そこで、誰でも簡単に活用できるようにと考案されたのが、「糖尿病食事療法のための食品交換表」です。
 はじめは少し面倒かもしれませんが、使い慣れると、とても楽になるので、一冊手元にあると便利でしょう。

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