2006年5月心理室より

集団の決定
 5月になり、新しい環境もなんとなく、だんだんと形作られてきたのでしょうか。今回は「集団の決定」についてお話しようと思います。“三人寄れば文殊の知恵”というように、たくさんの人で互いに考えを持ち寄りいろんな視点から問題を検討することですばらしい決定が生まれるのではないかと期待されることが多いようです。もちろんそのとおり、ということもたくさんあると思いますが、時に驚くような偏った決定がされることもあるようです。その例としてよく話されるのがケネディー大統領とその側近たちが決定したキューバ侵略の失敗です。とても優秀なメンバーがそろって決定した計画はずさんな点が多く3日で失敗したそうです。また、大勢でいるからこそ、本当はよくないことでもみんなでやれば怖くない、むしろ活気づいて正しいとも思えてしまうようなことも多かれ少なかれみんな経験があるのではないでしょうか。

そのような「偏った決定」がなされやすい条件としては、次の④つがそろう環境だそうです。
①集団の団結がとても強い
②他からの情報を得る機会が少ない
③対立する案を出して検討しない
④ストレス状況である

 このような環境の中で、メンバーは「自分たちは優秀であり失敗しない」と思って楽観的になったり、「敵は悪者である」などとステレオタイプ的に思い込んだり、「みんな同じように考えてる」という暗黙の了解が漂い疑問を口にしにくいような雰囲気に包まれ、なぜかそれを守ろうとさえしてしまうようです。しかし、本当にみんなそう思っていることなんてあるのでしょうか。本当は違うと感じていても、もっと良いすばらしいアイディアをひらめいていても、大勢の中でみんなと違う自分の意見を口にすることはとても勇気がいることだと思います。本当はそれがみんなをもっと幸せにするきっかけかもしれなくても。

このような偏った集団の決定を少なくするために、防止策として
①バスセッション法 - 集団をグループ分けして討論させて意見を持ち寄る方法。
②エキスパート法 - 外から専門家を招いて集団の決定に挑戦してもらう方法。
③デビルズ・アドボケート法- 多数意見を批判する役割を設けてその人に活躍してもらう方法 
④仮想敵想定法 - 自分たちの決定に対立する仮想のライバル集団の立場にたって批判や攻撃を加える方法。
などがあります。

つまり、異なる意見を意図的に持ち込もうとすることです。意図的に持ち込むこと自体が大切な工程のひとつとして組み込まれていることです。
 団結の強い集団は協力し合って暖かく、みんなでパワーをひとつにすることで何倍もの力を発揮できる可能性をもっています。その中に埋もれてしまうのではなく、その中の一員として自分の力を大発揮してグループに貢献してください。よりそのグループを好きになるかもしれません。

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