ヤングケアラー

 2020年4月12日、厚生労働省・文部科学省によって初めて全国で実施された「ヤングケアラーの実態調査」の結果が発表されました。

 ヤングケアラーとは、法令上の定義はありませんが一般に「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている児童」とされています。

 例えば…

●障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている。

●家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている。

●障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている

●目の離せない家族の見守りや声かけなどの気遣いをしている。

●障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている。

●日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳している。

●家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている。

●アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している。

●がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている。

●障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている。

(一般社団法人日本ケアラー連盟より)

 そして今回の実態調査から中学生の約17人に1人(5.7%),高校生の約24人に1人(4.1%)が「世話をしている家族がいる」と答えています。単純計算してもクラスに1人か2人居ると考えると少し身近に感じるのではないでしょうか。

 ヤングケアラーの1割は1日に7時間以上を世話に費やしているとのことです。中には、勉強時間が十分に取れない、睡眠時間を十分に確保できないといった日常生活の困り感や進路を変更せざるおえない、学校に行きたくてもいけないといった将来に関わる困り感を抱えていることもあります。

 一方で「相談した経験がない」という生徒は中高生ともに6割を超え、その理由として「誰かに相談するほどの悩みではないから」「相談して状況が変わるとは思わない」という回答が続いています。

 介護や家事に追われ、勉強や友だちづきあいをする余裕がない子どもも少なくありません。また、大人になっても、幼いころからの考え方のクセは継続しやすく家族の世話が落ち着いた後も、抱え込むクセにより日常的に心に大きな負担がかかることもあります。

 ヤングケアラーの実態調査はまだ始まったばかりで、概念としても確かなものではありません。しかし、ヤングケアラーに限らず、「うちの家庭では当たり前だから」「つらいけど、相談するほどのことではないかな」と自分一人でどうにかしようとせず、つらいことがあったり、心身の異変を感じたりしたときは、1度周りの人に相談してみてはどうでしょうか?自分が思っているよりも、心や体は疲れきっているかもしれません。

 最近では、相談窓口や情報検索サービスも増えています。近くの人に相談しづらければ、医療機関や公的な相談窓口を頼ってみるのも一つの手段ですよ。

カテゴリー: 202105, 心理室より パーマリンク