2011年5月

傷病手当金
 今回は社会資源の一つである、傷病手当金についてご説明したいと思います。企業に勤めている人が病気やケガ等で長期に休職した場合、生活の保障として社会保険から傷病手当を受給することができます。ただし、受給するためには、条件全てを満たしていなければいけません。

○病気やケガで仕事をすることができないこと。
○病気、ケガの療養のために、4日以上欠勤していること(3日間休んだ後、4日目に退職した場合は該当外になります)
○欠勤して4日目以降の給料を受けていないこと。
○社会保険に加入していること(被扶養者や、国民健康保険の加入者は受給できません)

 休み始めて最初の3日は、公休や有給などで給料が発生していても大丈夫です。また、休職中にも給料が発生しても、傷病手当金の額よりも少なくなる場合、その差額が支払われます。

【傷病手当金受給の注意点】
 傷病手当金を申請する際、もし退職を視野にいれている場合でも、必ず在職中に手続きをとります。以前は退職後に任意継続の保険証へ切り替えた後も傷病手当金の受給ができましたが、現在は一定の条件を満たす方以外認められていない為、必ず在職中に手続きをとる必要があるからです。また、傷病手当金は一度受給を始めたら、一年半受給することができますが、途中で職場復帰をし、働ける期間ができたとしてもその働けた間の受給期間を止めて残しておくことはできません。 一度一ヶ月分だけ受給しそれ以降働けていたからといっても、一年半後に残りの一年五ヶ月分をもらうことはできないのです。
 傷病についても、1度うつ病を理由に傷病手当金の制度を受け、職場に復帰したとします。またうつ病が再発して、再び仕事を休むことになったとしても、同じ病気で傷病手当を受けることはできませんので注意が必要です。
 類似の傷病(不眠症、自律神経失調症、躁うつ病etc)も、精神科の傷病として同じ扱いとなる為、違う病名として傷病手当金を受給することはできません。ただし、一定期間(3~5年程度が目安)社会復帰ができており、一度寛解したとみなした場合は、再発した際にも同じ傷病で受給することができます。
 傷病手当金をもらいながら再就職をした場合も、注意が必要です。まだ受給期間が残っている状態で再就職をしたけれど病気が再発し、すぐ辞めてしまった場合、受給期間の残っていた傷病手当金をまた受給しなおすことはできません。一度働ける状態になった為、前の会社で申請した傷病手当金をもらいなおす資格がなくなったからです。ただし、この場合も新しい会社の保険でならまた傷病手当を受給することはできます。

【支給額について】
 支給額は、休み始めてから4日目以降、給料の3分の2が支給されます。詳しく説明すると、月単位の給料から計算されるのではなく、欠勤1日あたり『標準報酬日額』の3分の2が支給されることになります。自分の給料を日額に計算したものではなく、規定されている『標準報酬日額』があり、それぞれの給料に応じて日額が決められます。

標準報酬月額÷30=標準報酬日額
標準報酬日額×2/3=傷病手当金日額
傷病手当金日額×(休んだ日数-3日)=支給額

 またこの支給額から保険料等がひかれますので、実際手元に入ってくるのは給料の半分程度と考えてください。

【失業給付と傷病手当金】
 傷病手当金は病気や怪我で働けない状態の時に、雇用保険から支払われる手当です。なので、当然すぐに働くことができる状態にあるときにもらう失業給付とは一緒にはもらえません。失業給付は通常受給期間は一年間と定められていますが、病気で働けない方等は診断書を提出することで、受給期間を延長することができます。最長三年間延ばせるので、計四年間は受給資格が与えられることになります。
 退職後、失業給付の延長の手続きをしてまずは傷病手当金を受給し、その後失業給付を受給すれば、しばらくの間働けなくても収入が全くのゼロになってしまうことはありません。社会資源の活用で、治療する環境は大きく変わってきます。こういった社会資源を上手に活用しながら、ゆっくり治療をしていけるといいですね。

 利用したいがわからない時等は、当院職員にお気軽にお聞きください。

カテゴリー: 201105, 精神保健福祉士より パーマリンク