2006年3月心理室より

流行(fashion)
 以前、流言という現象について取り上げましたが、今日はそれと同じような連鎖的伝達過程をもつ社会現象である流行(fashion)についてお話していきたいと思います。

 流行とは、ある社会の中で、それまでとは異なる新奇な行動様式が爆発的に広まり、比較的短期間に消失する社会現象です。また、流行は、服装や食べ物、髪型などの有形なものから、歌や言葉、思想のような無形なものまで、広範囲にわたってみられる現象です。しかし、その規模と対象によってそれぞれニュアンスが若干異なり、用いられる用語にも次のようなものがあります。

① ファッション(fashion):本来、「職人の地味な手作り」を意味したものが、今日では普通、衣服の流行に用いられています。
② ブーム(boom):「財テクブーム」とか「海外旅行ブーム」のように、経済現象や社会現象としてみられる「にわか」流行を意味します。
③ モード(mode):これもファッション同様、服装の流行を意味しますが、特に洗練性が強調される場合の流行を表します。
④ クレイズ(craze):衣服や音楽にみられる一時的、熱狂的な流行のことで、社会的に広範囲に広がります。たとえば、「ミニスカート」の流行などがこれにあたります。
⑤ ヴォギュ(vogue):「ブランド物志向」のように、特定商品の人気や評判の流行を意味します。

 また、このような流行には、一般に3つの特徴があげられます。
① 受けての広がりに一定の範囲がある。
② 流行が続く期間としての寿命がある。
③ 流行には周期(サイクル)がある。
③の特徴は、男性のズボンの太さ、ネクタイの幅、女性のスカートの長さなどのように、特に服飾について顕著にみられます。

 次に、流行のプロセスについてみていきましょう。たとえば、数年前に女子中・高生の間で流行した「ルーズソックス」を思い出してみてください。女子中・高生のうち、過半数を超える人がそれを着用しているとしましょう。すると、まだそれを取り入れていない生徒にとっては、たとえそのスタイルが少し変だと思えたとしても、それに抗するのはかなり勇気がいることです。それどころか、それが素敵だと思えることのほうが多いのではないかと思います。

 この例のように、流行現象においては、多数の他者がしていることが正しいと思えること(たとえば、その商品は優れているに違いないと思うこと:情報的影響)と、流行に従えば他者から好意的に見られると思うこと(逆にいえば、流行に乗らないと疎外されると思うこと:規範的影響)の2つの要因が働くと言われています。流行の比較的初期の段階では、情報的影響のほうがより強く作用しますが、いったん流行に「火がつく」と真の情報はどうでもよくなり、規範的影響がより強く作用して「乗り遅れたくない」思いが流行をいっそうあおるのです。

 最近はマスコミの発達にともない、流行の普及速度は速く、範囲も拡大されてきています。商業資本
が意図的に操作するという面があり、流行は作られるという特徴もあります。このような流行を取り入れ
ることも大切ですが、自分に合ったものを選び、自分らしくいることが何よりも大切なのかもしれません。

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