新型コロナウィルスの感染拡大は留まるところを知らず、現在多くの都道府県に対して緊急事態宣言が発令されています。コロナ禍における生活が1年半近くも続くと、テレビやインターネットにはコロナウィルスに関する数限りない情報が溢れかえっています。科学的根拠に基づいた信憑性のある情報も多く存在する一方で、信憑性に欠ける情報や、人々の不安や恐怖心を必要以上に誘発するような悪質なデマも数多く出回っています。特に最近では、根拠もなくワクチン接種に反対するようなインターネット上の記事や動画も少なくなく、それらの情報に惑わされてワクチンを接種することに否定的になる人もいるようです。たとえ頭の中ではデタラメだと分かっていたとしても、一度そのような情報を目にすると、「もしかしたら正しいのかもしれない」という考えが生じてくるとも考えられます。時にはたった1つの情報が、私たちの考え方や判断に影響を及ぼすことがあります。
コロナ関連の情報に限らず、私たちは日頃からありとあらゆる情報を収集し、得られた複数の情報を整理した上で物事を判断することが多くあります。しかし、収集した情報が誤っていたり、集まった複数の情報に偏りが生じていることにより、特定の物事に対して歪んだ考え方を持つようになる、という可能性が出てきます。情報を収集したり、整理したりする際に生じやすいエラー(誤り)として、主なものを以下に挙げます。
・固定観念:先ず、情報収集の段階における誤りとして、あらかじめ持っている固定観念に合わせた情報収集をする、ということが挙げられます。自分の考え方に類似した情報にばかりに注意がいくことにより、異なる情報が取りこぼされ、結果として自分の考えに近い情報ばかりが収集される、ということです。ワクチンは危険だ、という考えをもともと持っている人は、そうでない人よりも、ワクチンの危険性を謳った記事により多く目を通しやすくなります。
・動機付け:動機付けとは、人が一定の目標に向かって行動を開始し、それを維持する心の動きのことです。動機付けの度合いが情報の判断に影響を及ぼすことがあります。例えば、「自分はダイエットに関する知識がある」と思っている人は、ダイエットに関する情報を多方面から収集しよう、という動機付けが低くなることによって、必要な情報を十分に検討することなく物事を判断する、ということが考えられます。
・貧弱な情報:たった少数の事例に出くわしただけであるにも関わらず、その事例を一般化してしまうことです。例えば、「自分の周囲にはA社に入社した人が1人いるけど、うまくいっていないようだ。だからA社に入社するのは誰に対してもおすすめしない」といったことが具体例に当たります。
・誤情報:そもそもの収集した情報が偏ったものである場合は、それに基づいてなされる判断や推論が質の低いものとなってしまいます。情報を収集している段階ではそれが偏ったものだと気づかないため、偏った情報を複数得てそれを整理することにより、結果としてその後の物事の判断も偏ったものになります。
日常生活において情報を取捨選択し、行動しなければならない機会は数多くあります。大量の情報を目にすることで、何を信じたら良いか分からない、といったことも生じてくることも想定され、それが精神的なストレスに繋がりかねないこともあるでしょう。1つの情報に過度に囚われることなく、常に多方面の情報にアンテナを張り巡らし、客観的な視点を持つことによって、より正確で慎重な判断ができるようになると思われます。特に長きにわたるコロナ禍での生活は、より一層不安やストレスを感じやすくなることが考えられるため、是非意識してみて下さい。
参考文献:「心理学(有斐閣出版)」