2012年5月

キレる
誰しも「キレる」という経験をしたことがあると思います。「キレている」ときというのは、「堪忍袋の緒が切れている」とも表現されますし、自分では制御できない感情が溢れ出してしまっている、自分ではコントロールできない状態であると思われます。では、「キレている」状態のとき、いったい何が起こっているのでしょうか。

「キレる」とは?
「キレる」という言葉は、「攻撃性や衝動性が高い」ということを意味しています。もともと攻撃行動は、生物にとって生存や生殖に必要なものですが、人間にとって攻撃性を出しすぎてしまうことは社会的に受け入れられない場合が多いです。また、衝動性とは自分にとって悪い結果になる可能性のある行動を、あまり深く考えずに行なってしまうことです。そして、攻撃性や衝動性が出てしまう原因となるのが、「怒り」という感情です。

怒りのメカニズム
怒りは攻撃により解消され、攻撃が抑えられて発散できない時に怒りがたまっていくことになります。攻撃が抑えられている限り、攻撃性は高まったままとなり、その状態で感じる感情が「怒り」であると考えられています。
例えば、喧嘩をしている相手からいきなりビンタをされたという場合を考えてみましょう。次の瞬間、あなたもビンタをし返したならば、ほとんど怒りを感じる暇がないかもしれません。逆に、相手への仕返しを我慢している状態であれば、怒りが生じるでしょう。そして、我慢できなくなった瞬間、いろいろな行動で攻撃が現れることになります。「堪忍袋の緒が切れた」という状態はこのことを表していると考えられます。ただし、攻撃が怒りを解消するとしても、それは適度な強さで行われた場合のみとなります。攻撃をしすぎても、しなさすぎても、後に問題を残しかねません。ビンタを相手にかわされてしまえば、怒りは増大するでしょうし、強すぎるビンタをしてしまったら、後悔や罪悪感を感じてしまうかもしれません。
このように、怒りにはそれを解消するための方法があるにも関わらず、どうして私たちは日常的に怒りの感情に悩まされるのでしょうか。それは、その怒りを直接表現する形で攻撃してしまったら、社会的に多くの損失を招いてしまう可能性があるからです。そのため、自分の怒りをある程度処理しつつ、相手との関係を破壊せず、よい方向に導くことが社会生活をしていく上で必要なことになってきます。

考え方を変えて、表現や行動を変化させる
そもそも、「怒り」を感じなくすることができるなら、攻撃も衝動もおこらないのではないでしょうか。怒りは時間とともに増幅すると言われています。そのため、できるだけ早いうちに自分の気分を静めることができれば、怒りを回避することも可能であるといわれています。つまり自分の認知、考え方を変えることができるならば、怒りの感情コントロールもできていくのではないでしょうか。キレやすい考え方を捉えて正しく気持ちを表現するために、ソーシャルスキルを学習します。感情は自然に出てくるものなので、感じることを肯定したうえで、自分も相手も傷つかないような表現の仕方に修正していきます。以下の図にキレやすい考え方、キレにくい考え方の例がありますので、参考にして下さい。

「できごと」「考え方・感じ方」「行動」のパターン(こころの科学148号より)

「怒り」という感情は、全てがダメなものではありません。必要な感情であるとともに、日常生活を過ごす上で必ず起こってくる感情です。しかし、「怒り」が理不尽なものであったり、自分で制御できなくなって「キレて」しまうことが、社会生活を営むうえで問題とされているのでしょう。考え方を少し変えることでコントロールできなかった感情をコントロールしていけばいいのではないのでしょうか。

カテゴリー: 201205, 心理室より パーマリンク