痛みについて

痛みは、私たちが日常生活の中で最も多く体験する感覚の一つです。しかし、単に深い感覚というだけでなく、虫歯になると歯が痛くなり、虫垂炎でお腹が痛くなるように、痛みは身体のある部位に何らかの異常が発生したという信号を送る役割を果たしています。

痛みには、ケガややけど、突然の病気などによって起こる「急性疼痛」と、原因の治療を行っても何ヵ月も痛みが続いたり再発したりする「慢性疼痛」の2つに大別されます。

「急性疼痛」はからだを守る反応の1つで、重要な役割を持っています。脳が「痛い」と認識することによって、病気やケガで傷ついた部分を一時的に安静にさせ、修復を促したり、免疫反応を呼び起こすという働きをするのです。一方の「慢性疼痛」は、痛みの原因が治っても痛み続ける、あるいは原因が治りにくいために痛み続ける状態です。痛みには大きな働きはなく、むしろ痛みの存在自体が病気となって、日常生活にも支障が出るようになります。

今回は、「慢性疼痛」についてあげてみたいと思います。

「慢性疼痛」では、自律神経失調症状の様な倦怠感、睡眠障害、食欲減退、食物に対する味覚消失、体重減少、便秘等をしばしば引き起こし、心理的な問題が生じてくることもあります。また、一定の絶え間ない痛みは、活動を制限するほか、抑うつや不安を生じさせ、ほぼすべての活動を阻害してしまうこともあります。

慢性疼痛の種類は、以下の3種類があるとされています。

侵害受容性疼痛

刺激や炎症による痛みです。ケガをしたときに感じる痛みで、ケガが治ると痛みもなくなります。

神経障害性疼痛

ケガや病気が原因となり、障害を受けた神経が興奮し続けた状態です。障害を受けた神経から、痛みを伝達する物質が過剰に放出されることがあります。たとえ痛みの原因や元の病気が治っても、痛みが長期間続きます。少しの刺激でも強い痛みを感じたり、天気の変化や、何もしていないのに痛みを感じることもあります。

心因性疼痛

心因性疼痛は、心理的要因や精神的要因が原因となる痛みです。検査をしても器質的要因は見当たらず、医学的に説明できない不合理な痛みが起こります。痛みの範囲が侵害された部位とは異なること、痛みが神経の走行に沿っていないことなどがみられたら、心因性疼痛であることが疑われます。こうした心因性疼痛では、痛みの原因が心理的要因であることを気づかせることによって、改善することがあります。心がストレスを受けることで、痛みを感じるようになった状態です。

しかし、長い間痛みを感じていると、痛みも単純ではありません。3種類の痛みが深くからみ合った状態、すなわち混合性疼痛になっています。

治療としては、薬物療法、理学療法や作業療法等の物理的方法、行動療法や認知療法等の心理的治療が主にあるとされています。また、心理的治療の認知療法の疼痛コントロールとして、リラクゼーション法、気分転換法、催眠法、バイオフィードバック等が有用であることもあります。しかし、専門家による訓練が必要な技法もあり、症状の出現の仕方も多種多様であるため、気になる症状のある方はご相談いただければと思います。

カテゴリー: 201209, リハビリテーション, 心理室より, 病気・治療 パーマリンク