2010年3月

労働基準法の改正
 今回の医院便りでは、いよいよ目前に迫った労働基準法の改正についてお話したいと思います。その前に、公布と施行、それぞれの意味はご存知でしょうか。

今回改正される労働基準法ですが、実は「労働基準法の一部を改正する法律」が第170回国会で成立し、平成20年12月12日に法律としては既に公布されています。公布とは、成立した法を官報(国の機関としての諸報告や資料を公表する「国の広報紙」「国民の公告紙」のようなものと考えてください)に掲載し一般に知らせることをいい、施行とは、公布した法が現実に効力を発生することを言います。公布と施行が同時に行われないのは、情報が行き届かないために法を侵す人が出てきてしまうからです。

さて、その改正された労働基準法では、なにが変わったのでしょうか。1つ目には、時間外労働の割増賃金率が引き上げられます。その為、1ヶ月60時間を越える時間外労働については、法定割増賃金率が現行の25%から50%に引き上げられますが、休日労働や深夜労働の割増賃金率は変わりません。中小企業については当分の間猶予が適応となります。また、そういった割増賃金の支払いに代えた有給の仕組みも導入される為、事業場で労使協定を締結すれば、割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を付与することもできるようになりました。
2つ目に、割増賃金引上げなどの努力義務が労使に課されるようになります。さて、この何度か出てきている「労使」ですが、労働基準法によって定められている労働者と使用者のことを言います。労働者とは「自己の労働力を他人に提供し、その対価によって生活する者」のことで、 使用者とは「人を雇って労務の提供を受け、賃金を支払う者。 雇用主」のことです。つまり、先ほど出てきた「労使協定」とは、労働者と使用者の書面による協定のことをいいます。そして、この2つ目の努力義務を具体的に言うと、使用者は、限度時間(1ヶ月45時間)を超える時間外労働を行う場合は割増賃金率を定め、その率は法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること、労働者は月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること、という内容になります。
  3つ目に、年次有給休暇を時間単位で取得できるようになります。これは企業規模に関わらず適応されます。現行では、年次有給休暇は日単位で取得することとされていますが、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。またその年次有給休暇ですが、日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができます。

今回の改正については、厚生労働省のホームページでも様々な資料が提供されています。図解もされていますので、興味のある方は、是非一度覗いてみてはいかがでしょうか。

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