2005年11月

ウイルス性肝炎
C型、B型ウイルス性慢性肝炎の治療目的は次の5つです。
(1)肝臓の炎症を軽減し、肝炎、肝硬変の進行を遅らせる
(2)不愉快な自覚症状を軽減する
(3)肝硬変の合併症を予防する
(4)肝硬変の合併症を治療する
(5)肝臓癌の早期発見に努め、的確な治療につなげる

これらを実現するためには、まず原因ウイルスを除去するか、ほぼ死滅させるような抗ウイルス療法が一番です。
しかし、皆が皆この原因治療の対象になるわけではありません。むしろ対象外の方のほうが多いのです。これらの方は、抗炎症効果のある薬を使います。肝炎の炎症を軽減し、肝硬変への進展を遅らせることが治療の方向性です。また、合併症の予防治療、定期的な超音波検査で肝癌の早期発見に努めることも肝炎治療のポイントです。

【A型肝炎】
 A型肝炎は、B型、C型と違い、慢性肝炎になることはありません。急性肝炎で終わるため、ごくまれに重症化した劇症肝炎になった場合を除き、心配ありません。自然に治るのを待てば良いのです。もちろん黄疸が出ている時は安静が必要なので、体を休め、快方に向かうかどうかを見極める必要があります。

【B型肝炎】
 B型肝炎ウイルスは、C型肝炎と違って今のところ完全に消し去る薬はありません。 抗ウイルス剤としてインターフェロン(ウイルスに感染した時に体で作られる一種の蛋白質。ウイルスの増殖を抑制する作用を持つ)が10年以上前から使われていますが、部分的な効果しか期待できません。しかし、B型肝炎ウイルスでも比較的肝毒性の低い変異株に変えることは可能です。そして、その形を変えたウイルスが主体となった状態をセロコンバージョンと呼び、HBe抗体が陽性になります。ウイルスがこの変異株になると、GPTが低下したり、正常値に戻る人が多く、肝臓の炎症が落ち着いてきます。しかし、ウイルス自体はまだ残っていますので、B型肝炎が治ったわけではありません。再度肝炎がぶり返したり、肝癌が発生しうるので、引き続き定期的な検査が必要です。

【C型肝炎】
 C型肝炎の根本的な治療は現在のところ、ウイルスを駆逐するインターフェロンだけです。Ⅰ型、Ⅱ型というウイルスの亜型のうち、Ⅱ型を持っている方はインターフェロンが効きやすく、概ね半分以上の確率で排除できます。しかし、効きやすいタイプの方が少ないため、平均すると25%~30%の有効率です。肝硬変まで進んでいたり、インターフェロンの効きにくい方は、肝炎の進行を抑える一般的な治療を行います。

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