新しい日本脳炎
平成21年6月2日より、新しい日本脳炎ワクチンが実施可能となったのをご存じですか? 新しいワクチンは従来のマウスの脳を使って作られるワクチンとは異なり、Vero細胞という細胞を使って作られているものです。気になる副反応については、今後使用実績が積み重ねられていく中で明らかになっていくものの為、現段階では新しいワクチンが従来のワクチンに比べ安全かどうかは判断がつかない状況です。
そして、実施可能といっても本年度においては充分な供給量が確保されないことが予想されている為、新ワクチンの接種対象者については当分の間、第1期に限られており、第2期は対象となりません。第1期では、初回免疫2回・追加免疫1回の接種が必要とされていますが、供給量に限りがある
事と新ワクチンであることから、第1期の中でも、追加免疫の方より一度も接種を受けていない初回免疫の方が優先されます。
【予防接種法に基づく、現行の定期予防接種スケジュール】
○1期(3回 初回接種(2回):生後6ヶ月以上90ヶ月未満(標準として3歳
追加接種(1回):初回接種後概ね1年後(標準として4歳)
○2期(1回)9歳以上13歳未満の者(標準として9歳)
※なお、日本脳炎は定期の予防接種の対象疾患となっていますが、その発生状況等を検討して、予防接種を行う必要がないと認められる地域を都道府県知事が指定することができます。その為、北海道のほとんどの地域では、日本脳炎の予防接種は実施されていません。
次に、日本脳炎とはどういう病気なのか、それを簡単に説明したいと思います。
日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスの感染によっておこる中枢神経(脳や脊髄など)の疾患です。ヒトからヒトへの感染はなく、ブタ等の動物の体内でウイルスが増殖された後、そのブタを刺したコガタアカイエカ(水田等に発生する蚊の一種)などがヒトを刺すことによって感染します。東アジア・南アジアにかけて広く分布する病気です。
症状としては、6~16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐等で発病し、引き続き急激に、光への過敏症、意識がなくなる等の意識障害、痙攣等の中枢神経系障害(脳の障害)を生じます。大多数の方は、無症状に終わるのですが、脳炎を発症した場合20~40%が死亡に至る病気と言われており、幼少児や高齢者では死亡の危険性は高くなっています。
では、何故新しいワクチンの接種は積極的に推奨されていないのでしょうか。その理由としては、専門家が検討した結果、今般承認されたワクチンについては、上記にて触れたように今夏までの供給予定量が定期接種対象者全員の必要量にみたないことが予想されており、なおかつ安全性の確認等
における観点から、現時点においては積極的に推奨する段階に至っていないからだとされています。
しかし、定期の予防接種の対象者で、日本脳炎のワクチンの接種を一度も受けていない現在3~7歳の子どものうち、日本国内においてブタにおける抗体保有率の高い地域(九州・沖縄地方及び、中国・四国地方)や近年日本脳炎患者発生が多く認められている地域では、積極的に接種をした方が良いと考えられています。
国立感染症研究所感染情報センターや愛知県小児科医会のホームページにも、日本脳炎の予防接種に説明や関する詳しい情報、Q&Aが掲載されています。もちろん、わからないことなどがあれば主治医の先生に相談するのも良いと思います。予防接種は子どもたちを感染症から守るために行われるものです。正しい知識でこどもたちの健康を守りましょう。