2005年5月

流言
 今回は流言についてお話したいと思います。
【流言とは】
 個人的なレベルで話される“うわさ”が連鎖的に広まり、それがやがて全体に広がり社会的な現象になることを流言といいます。流言は、日常的な人間関係の枠組みを超えて不特定多数に広がっていく情報だといえるでしょう。

 みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。たとえば口裂け女や人面犬のうわさ、トイレットペーパーや洗剤がなくなってしまうという社会的なパニックをもたらした1973年のオイルショック、外国では、試着室に入った女の人が眠らされ、奥の通路から外国に売られてしまうといううわさが、1969年にオルレアンという街で広まりました。これらは何の根拠もないうわさなのです。しかし、これらの話は人から人へと伝わりあっという間に広がっていきました。

 流言は人から人へと伝わるため、伝える人の不安や怒りなどの感情が反映されやすいといえます。密やかにささやかれる口コミの情報は、事実の確証なしに語られ、先入観や感情によってゆがめられ、誇張されていきます。そして、ある条件が満たされるとより広がりやすくなる傾向があります。それは、情報源があいまいなとき、社会状況が不安定なとき、情報そのものについて個人が関心を持っているときだと考えられ、自分の命や財産が脅かされるような重要な問題であればあるほど、情報が不足していたり統制されているような状況であればあるほど広く伝わっていきます。

 地震や津波、世界の各地で起こっている予想もしなかった災害、その中で人の心が激しく動揺したときに発生し、さらに人々を不安にさせる流言。極度に情報が不足したときには憶測が飛び交い、ふと漏れ聞いた言葉がひとり歩きしてしまうこともあるのです。情報が遮断され、自分たちのおかれている状況が把握できないとき、人は言いようのない不安に襲われます。災害時に人々が求めるものは何よりも情報だとも言われます。

 自分たちにとってどうでも良いことや、重要なことでも、状況に対する知識が明確であれば流言は発生しません。重要なのは正確な情報が人々にしっかり伝わることだといえるでしょう。

カテゴリー: 200505, 心理室より パーマリンク