1999年9月心理室より

心理室より
みなさんは、
【心気症】という言葉を聞いたことがあるでしょうか。おそらくは聞き慣れない言葉だと思いますが、その程度に差があるとはいえ、以外と身近なものなのです。今回は、その心気症という病気についてお話ししたいと思います。
まず、心気症とはどんな病気なのでしょうか。

心気症とは、自分の体に現れた症状を、人から聞いた話や本などから得た知識と照らし合わせたりして、【大変な病気にかかっている】と思いこんだり、ちょっとした環境の変化があると、そのせいで【病気になってしまうのではないか】と心配になったりし、医者が【絶対に違うので大丈夫です】と保証しても、【誤診ではないか】【重い病気だから自分に告げないのではないか】などと考えてしまうというように、必要以上の心配が続くという心の病気です。また、その自分の体に対してのとらわれは、少なくとも半年は持続するもので、精神的に苦痛なだけでなく、自分の体を心配するあまり、仕事や日常生活などに支障をきたしてしまうのです。例えば、【太陽にあたると皮膚ガンになるのではないか】という心配から日中外出ができなくなり、その結果仕事にもいけなくなってしまうなどの障害です。

では、実際にどんな身体症状【体に現れる症状】が心配になるのでしょうか。比較的多い訴えとしては、【動悸・めまい・吐き気・呼吸や脈が乱れる・頭痛・腹痛】などが挙げられますが、その症状は多種多様で、どんなに些細な体の不調でも心配になってしまうのです。

心気症になると、劣等感と自負心が大きくなり、疲れやすくなったり、気を使ってエネルギーを無駄に消費してしまい、
集中力がなくなったり、記憶力が低下したり、物事を決断できなくなったりという症状が現れます。他にも、【不眠・頭痛・めまい・眼精疲労・便秘・下痢・食欲不振・性欲減退】などのあらゆる体の不調が出現します。

心気症の患者さんの基本的な性格としては、いわゆる神経質といわれるものが多いようです。自分の心身の異常に注意が集中しやすく、軽症を重症と思いこんでしまい、その異常にとらわれてしまうため、さらに症状が強められてしまうという悪循環がおこりやすいからです。

【心気症】についてお話しいたしましたが、どんなものかおわかりいただけたでしょうか。多くの方が、なんらかの症状から自分の体が心配になってしまい、取り越し苦労をされたことがあると思います。心気症はその心配が増強されて起こるもので、決して特別なものではないのです。何か心配な症状がある場合、それが思いこみではなく、本当に体の病気からきていることもあります。些細な症状だからと一人で悩んだりせず、早めに医師に相談するようにしてください。

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