2005年1月

薬 膳
「薬膳」という言葉を知っていますか?「薬膳」という言葉は、1980年頃、北京のレストランで初めて使われましたと言われています。この「薬膳」、言葉自体は新しいのですが、中身は長い歴史を持っています。皆さんも一度は「薬膳」という言葉を耳にされたことがある方が多いのではないでしょうか?
今回は、この薬膳について考えてみたいと思います。

【薬膳の起源】
 薬膳という言葉は、いつの間にか身近なものになっていますが、薬膳は中国医学の歴史とともに歩んできました。薬膳の起源は中国の王朝にあります。周代(紀元前10世紀以降)に皇帝の食事を管理する「食医」という医者がその始まりなんだそうです。「食医」は、食べ物で健康管理、病気治療を行っていました。食べ物で病気を予防し、食べ物で病気の治療をしていたのです。まさに「医食同源」という考え方です。

【日本における薬膳】
「食」とは、文字の通り「人が良くなること」を指すと考える人がいます。間違った食事を続けていると、いつの間にか健康を害し病気になると考えられています。

 日本人は、古くから薬草や薬になるようなものを、日常の食生活の中に取り入れて食べる習慣がありました。病気になってから、薬を服用したり、医師にかかるのではなく、普段から体力を高めておき、自然治癒能力を強くするという考え方に基づいているのです。

 その一つが節供の発想で、すべて季節の分れ目に設定してありますが、それらの日は体調を崩しやすく、油断をすると病気になりがちなため、いつも以上に注意をしようという考え方が背景にあります。この日本人の優れた生活の知恵は、まさに中国における医食同源の考え方と同じようなところがあるようです。

【節供の発想とは?】
●一月一日の元旦に飲む「お屠蘇」(おとそ)という漢方の酒は、悪霊を払う酒であり、病気を避ける酒として服用されてきました。山椒や肉桂、桔梗、甘草などが入っており、保温や健胃、強心などの効能があると考えられています。

●一月七日にはせり、なずな、ごぎょう、はこべら、仏の座、すずな、すずしろといった7草の入ったおかゆを食べて、胃腸の調子を整えます。そして、春からの田植えに備えたと言われています。この7草には解毒作用や消化能力を高める効果があると言われています。

●三月三日はひな祭りで、甘酒を飲みます。発酵食品のため、酵母や麹菌、乳酸菌などが含まれており、整腸効果が高いそうです。なぜ、女の子にもこの甘酒を飲ませるかというと、厄払いをするためだと言われています。酒には悪い霊を追い払う力があると信じられていたからです。

●五月五日は、菖蒲の節供であり、ショウブ湯に入り、ヨモギを入れたちまきや柏餅を食べます。ヨモギには滋養強壮や解毒作用があり、カロチンやビタミンCも多く含まれています。

●七日七日】は七夕で、農業の節供として考えると、炎天下で田の草取りなどの重労働をしなければならない時です。そのため、この日は織姫様と彦星が再会をするという天の川になぞらえて、そうめんを食べて体力をつける日だと考えられていました。昔から夏の贈り物というと、江戸でも上方でも
そうめんと決っていたのは、七夕信仰と結びついているためだと考えられており、そうめんは食欲の無くなる夏を無事に乗り切るための体力食だと言われていたようです。

●九日九日は菊の節供で、この前後が稲の取り入れの最盛期であり、農家にとっては、一年中で最も忙しい時期です。疲労も頂点に達する時であり、この節供には菊の花を酒に浸して飲み、菊の花の酢のものやお浸しを食べました。菊の花には鉄分やビタミンB1、ビタミンCが多く含まれており、血行を良くしてくれるため、疲労が早く回復すると言われています。

 このように「節供」の習わしをとってみても、日本人は体調を崩しやすい季節の変わり目を乗り切るために、食による健康管理を実に上手く考えていた民族なのです。みなさんも食べすぎた次の日は、食べる量を少なめにするなど自分なりの習わしを決めてみるのもいいかもしれませんね。

【すぐに実行できる薬膳】
 薬膳という言葉は聞き慣れていても、いざ薬膳料理を作ろうとすると、何だか高価な食材やなかなか手に入らない調味料が必要なのではお思いかもしれません。けれど、面倒なことは考えずに、まずは今すぐに実行できそうな薬膳を考えてみてはどうでしょうか。

 例えば、当たり前の話なのですが、健康を維持するために1日3食決まった時間に決まった量を食べることから始めるといったことです。また、旬のもの、自然の食材を豊富に取り入れることを心がけてみて下さい。旬のものは、季節気候にあった食べ物です。食べ物の性質で、暑い時期には
寒、涼のもの、寒い時期には熱、温のものがバランスを保つと考えられています。旬のものは、それを食べるだけでこのバランスを保つようになってます。 自然とは不思議なものです。旬のものを食べるだけでも、病気に対する抵抗力、免疫力は上がると言われています。

 新しい年がやってきました。皆さんもこの時期に、もう一度、自分の食生活について考えてみてはいかがでしょうか?

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