2003年1月心理室より

心理室より 摂食障害3    
 前回、前々回に引き続き今回も摂食障害についてお話したいと思います。
 今回は体、心への影響についてお話しします。

【考えられる体への影響】
・唾液腺の腫れ
過食が習慣になっていると食べ物が口の中に入っている時間が長いため、唾液腺が刺激されて腫れることがあります。また、嘔吐を繰り返すことでも唾液腺が刺激されて腫れることが考えられます。

・電解質のアンバランス
 胃液や腸液の中にはカリウムが含まれていますが、嘔吐や下剤を多量に服用することで多量のカリウムが体外へ流れ出てしまい、低カリウム血症になることが考えられます。そうすると筋肉の収縮に必要なカリウムが減ることで疲れやすく、倦怠感を感じることや心臓の筋肉の収縮にも影響を及ぼす為、不整脈などの症状も考えられます。

・歯のエナメル質侵食
 嘔吐を繰り返すことで胃酸が何度も口の中に上がるため、歯のエナメル質が溶け歯がボロボロになることが考えられます。

・低栄養に関係すると思われるもの ~低血圧、低体温、低血糖、貧血など~
 人間の体は放っておけばどんどん熱を放射してしまいますが、脂肪組織には断熱効果があり、適切なエネルギーの食べ物を摂取することで体温を保っています。体重が極度に減少することで脂肪組織の減少により熱が奪われやすくなっている一方、身体に入ってくるエネルギー量が低いため無駄な熱やエネルギーを使わないよう体温も低く、脈もゆっくりになっていることも考えられます。いわば冬眠中の動物のような状態になってしまうのです。
 過剰に食べ物を摂取すると、急激に血糖値が上がりますが、インシュリンが過剰に分泌されたり、吐いたりしてしまうため、結果低血糖になる事が考えられます。また、栄養が不足することで新しい赤血球が作られず貧血になることが考えられます。赤血球は酸素を全身に運ぶ役割があり、貧血が進むと疲れやすかったり、動悸がしたりすることが考えられます。

・無月経、無排卵
 女性ホルモンもは栄養状態や精神状態の影響を受けやすく、摂食障害で体重が減少したり、極端な低栄養状態が続いたり、精神的に不安定になったりすることでホルモン分泌に異常をきたし、無月経や無排卵になることが考えられます。

  
【心への影響】
 摂食障害抑うつ状態や不安感、イライラ、対人恐怖など精神面にも大きな影響を及ぼします。
 拒食症の場合、活動的で、痩せている事への自信などから気分の落ち込みを感じることは少ないようですが、過食症の場合、精神の不安定さを自覚しており、落ち込み、イライラ、不安感などが過食という行為に結びつき、その行為によって落ち込むといった悪循環が考えられます。体型に対する極端な考え方や、痩せなければならないというような強迫観念にとらわれてしまうなど心への影響も大きいと思われ、そういった精神状態の不安定さが食行動の異常を引き起こしているのかもしれません。

 摂食障害をきたす背景には様々な要因があり、摂食障害による身体への影響も軽視できません。単に”過激なダイエット”、”ダイエットの失敗”ではなく、自己のコントロールを失ってしまう病であると考えられます。また、摂食障害であることを自覚し、心と体が出しているSOSに目を向けることが回復への一歩であり、自分らしさを取り戻す一歩なのではないでしょうか。 

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