集団と個人

 私たちの周囲には様々な「集団」が存在します。同じ考え方や価値観を持ったもの同士で意図的に形成された集団はもちろん、「日本人」、「会社員」、「A型」といった考え方や価値観に関係なく所属しているカテゴリーについても集団と呼ぶことができます。私たちはそのような集団に対してあらゆる印象を抱きます。「〇〇の国の人は上品だ」「〇〇の趣味をやっている人はみんな元気がいい」などと思うかもしれません。

 一方で自分が所属している集団に対しては、どのような印象を持つでしょうか。「日本人は多様な性格の人の集まりだ」「自分と同じ趣味を持つ人の中には、元気がいい人も大人しい人もいる」などと思うことが多いのではないでしょうか。人は自分の所属する集団にはあらゆる特徴を持った人が所属しているとみなす一方で、自分が所属していない集団については、類似した特徴を持った人の集まりだとみなす傾向にあります。

 自分が所属する集団のことを「内集団」、所属しない集団のことを「外集団」と呼びます。内集団と外集団のどちらに属するかは状況によって異なります。例えばある会社員からみた美容師の友人は、「社会人」というカテゴリーでみれば内集団に属する人となりますが、職業でみる場合は外集団に属する人となります。

 前述のように私たちは、内集団には様々な特徴を持った人が集まっており、外集団は同じような人が集まっていると思うことが多くあります。また、特別な理由もなく内集団を高く、外集団を低く評価することも少なくありません。内集団と比較すると、外集団の人と接する機会は少ないことから、実際は外集団に所属する人々の特徴をよく知らないまま、大まかなイメージを持ってしまうことがあります。このようなことから、外集団に対する偏見や差別が生じる可能性が出てきてしまいます。

 内集団に所属する者同士でコミュニケーションを取ることは、自分のことをよく理解して貰えたり、感情の共有がされやすかったりすることなどから、メリットも多くあります。しかし、所属する人のことをあまり知らないまま外集団に対して印象を抱いてしまうことは、勿体ないような気がします。外集団の人に偏見を抱いてしまいそうになる場合、まずは外集団に所属する人と1対1でのコミュニケーションを取ることを意識することがより重要ではないかと思います。実はこれまで毛嫌いしていた外集団の中にも、自分と気が合う人や、意外にも価値観が同じ人などがいるかもしれません。どのような性格や価値観の人であっても、1対1で接してみると、その人に対して好印象を持ち、そこからもっとその集団に所属する人と接してみたいと思ったり、外集団に属する人に対する印象が変化したりすることなどが考えられます。

 是非、あらゆる考え方を持った人とコミュニケーションを取ってみてください。これまで以上に豊かな対人関係を形成することができるかもしれません。

カテゴリー: 202209, 心理室より パーマリンク