遊戯療法

遊びとは
 子どもにとって、遊びとは生活の中心であり、遊びを通して子どもは成長していきます。遊びには、言葉では言い表せないこころの内面を表現でき、自己治癒力を高める機能があると考えられています。また、現実では叶えられない空想の世界を作り、そこで自由にいきいきと遊ぶことで、エネルギーを発散でき、想像力を高めることもできます。さらに、子どもにとって遊びの場とは、他者とのコミュニケーションの場として大切なものです。このような「遊び」を心理的な治療として活用しているのが、遊戯療法です。

遊戯療法とは
 遊戯療法とは、遊びを用いて子どものこころの病気を治療する精神療法のことで、プレイ・セラピーとも言われます。子どもは言葉の発達が未熟なために、大人のように言葉を用いて自分の思いを上手く表現することが出来ません。そのため、こころの内面にストレスや不安を貯めこんでしまいがちです。しかし、遊戯療法によって、言葉ではなく遊びを通して、こころの内面を自由に表現することにより、ストレスを昇華し、本来のこころを取り戻すことができるでしょう。さらに、セラピスト(治療者)も遊びを通じて子どものこころの状態を理解することができ、こころの病気の診断にも役立てることができます。また、子どもの発達によって、遊び方や選ぶ遊具が変化していくため、子どもが今どのような発達段階にいるのかという指標にもなります。遊戯療法では、子どもは自由に遊ぶだけでよく、ほかの治療法のような治療に対する恐怖感もありません。

遊戯療法の具体的なやり方
 子どもは遊戯療法用に用意された特別な遊戯室で、セラピストとともに遊戯を行います。子どもが遊ぶ遊戯室は子どもの精神状態や人数などによってその大きさが異なり、さまざまなおもちゃや、場合によっては砂場や水遊びできる場所なども備わっています。置いてあるおもちゃの種類としては、積み木、人形、ままごと道具、お絵かき道具、粘土、ボール、楽器、鉄砲などさまざまで、安全にも十分に配慮され、なるべく自由に子どもが遊べるように工夫されています。セラピストは、こうした遊戯室で子どもを自由に遊ばせながら様子を観察し、子どものこころの真の状態を理解しようと努めます。
 しかし、子どもが自由に遊べる様になるためには、遊びの場が安心できる場であると確信できることが大切です。また、そのような場を提供しているセラピストのことを子どもが信頼出来るかということも重要です。セラピストと子どもの間に信頼関係が構築されてはじめて遊戯療法が治療的な意味を持てるようになります。

遊戯療法の基本
 遊戯療法の基本は、「アクスラインの8つの基本原理」を基本として用いています。
 8つの原理とは、
 ①セラピストは子どもと温かく優しい関係を作る
 ②子どもをありのままに受け入れる
 ③子どもとの関係に自由な雰囲気を作り感情を自由に表現できるようにする
 ④子どもの感情をいち早く読みとって子どもに示し、子どもの行動の意味を洞察しやすいようにする
 ⑤子どもが自分の問題を解決し成長してゆく能力を持っていることを知るようにする
 ⑥子どものすることやいう事に口出しをせず自己治癒力を信頼する
 ⑦治療はゆっくりしたものであるため早めようとはしない
 ⑧子どもが現実から遊離しないように必要最低限の制限を加えること
です。

 また、親面接を同時に進めることが一般的で、親も子どもと一緒に治療に参加していける場を示すことが必要です。親面接の意義は、治療の動機付けに乏しい子どもの治療関係の維持、情報の収集と提供、親への心理療法などがあります。

治療効果
 遊戯療法は神経症を始め、自閉症、吃音症、緘黙症、精神遅滞、学習障害などといった子どものこころの病気の治療に効果を発揮しています。

カテゴリー: 201305, 心理室より パーマリンク