2002年3月

甲状腺    
前回は甲状腺の働きについてお話ししました。
今回は甲状腺の病気にはどのようなものがあるかお話ししましょう。

 甲状腺ホルモンの産生、分泌が過剰になった状態を甲状腺機能亢進症といいます。食べても食べても体重が減る、脈が早く動悸がする、手がふるえ体温は上昇し、発汗が多い、イライラして落ち着きがない、下痢、生理不順、脱毛が多いなどの症状が出ます。
 甲状腺機能亢進症の代表がバセドウ病です。バセドウ病は、甲状腺を異常に刺激する抗体が体内で作られ、どんどん甲状腺ホルモンを作らせてしまう病気です。

 では、なぜ、こうした異常が起るのでしょうか。実は、免疫が関係しているのです。免疫は進入した外的を攻撃し、健康を維持するための大切な仕組みです。ところが、まれに自分自身の体を攻撃目標とする抗体を作ってしまう病気があります。これを「自己免疫疾患」といいます。

 バセドウ病の代表的な症状は、喉頭の下にある甲状腺が大きくなる・眼球が突出する・手の指がブルブル震える・などです。男性より女性に多く、小児から高齢者まであらゆる年齢層にみられます。家族歴のある人は要注意、出産後に発病・増悪することもありますので注意が必要です。

【ひとこと】
甲状腺機能亢進症の原因は、バセドウ病が最多です。しかしバセドウ病以外は無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など一過性の病気がほとんどです。 甲状腺機能亢進症=バセドウ病ではありません。バセドウ病であるのかどうか、まず最初にきちんと見極める事が重要です。

 甲状腺が甲状腺ホルモンを十分分泌できなくて、いろいろな症状を引き起こす病気を甲状腺機能低下症といいます。身体が腫れぼったくなり体重が増加、皮膚は冷たくカサつく、脈が遅い、しわがれ声になる、元気がなくいつも眠たい、無気力・不活発になるなどの症状が起こります。甲状腺機能低下症の中には、橋本病やクレチン症などがあります。

 橋本病は、発見者の橋本策先生の名前をとったもので、慢性甲状腺炎とも言います。橋本病も自己免疫疾患のひとつですが、バセドウ病とちがって、体内でつくられた抗体が甲状腺組織を障害して、次第に甲状腺ホルモンの産生が障害される方向へ向かいます。
 甲状腺機能が正常であれば原則的に治療は必要ありません。機能低下していれば甲状腺ホルモン剤を投与します。最初は正常であっても徐々に低下する場合もありますので、定期的な検査が必要です。

 生まれてきたときから甲状腺機能低下症だとクレチン症(先天性甲状腺機能低下症)と呼ばれます。甲状腺そのものがないか、あるいはあっても十分な大きさがないか、別の場所にあって働かないか、甲状腺ホルモンがうまく作られないことなどによっておこります。出生時体重は正常ですが、次第に成長・発達がおくれてきます。 顔つきは特徴があり、眼瞼が腫れぼったく、鼻は低く、いつも口を開け、大きな舌をだしています。これをクレチン顔貌といいます。皮膚は乾燥し、あまり汗をかかず、腹部は大きくふくれています。また、手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず、あまり泣かずによく眠ります。不活発でおとなしい子供です。

 甲状腺ホルモンは子供が成長するのにとても必要なホルモンです。人間は3才までに大脳の大半が出来あがります。その大切な段階で、ホルモンが足りないと障害が起こってしまうため、早期発見が必要です。

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