2000年3月心理室より

心理室より  自律神経失調症
 
 頭が重い・めまいがする・下痢や吐き気が続くなどの症状があるのに、検査をしても異常がないなど【正常です】といわれることがあります。この自律神経失調症とはどういう病気なのでしょうか?自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れていろいろな症状が起こっている状態を総称しています。

  【自律神経とは何でしょうか?】 
 自律神経とは、人間の活動をつかさどる神経の中で、心臓や胃を動かすといった自分の意志とは関係なく自動的に働いている神経を言います。この自律神経には【交感神経】と【副交感神経】があります。通常は脳の視床下部という司令塔がこの2つの神経を周期的に切り替えて、バランスよくコントロールしているのです。正常に保つにはこの切り替えが重要なのですが,バランスが崩れると自律神経の機能は低下してしまいます。
では自律神経の機能について見ていきましょう。

  【交感神経の働き】
 交感神経は主に血流ルートを司る神経です。心臓を起点に手足の末端から脳 まで全身の血管に必要な量の液を送り、活動するための緊張を促します。交感神経の基本機能としては、以下のとおりです。

 1.呼吸、心拍数の調節 ⇒人が体を動かした時、息があがって心臓がドキドキしてくる。
 2.脳への血流の調節 ⇒どんな姿勢でも、頭部への血流が途切れず、行き過ぎない。
 3.体温や汗の量の調節⇒血流の変化で体温や汗の量を調節して、体の隅々まで必要な血液を運搬しつづける。

  【副交感神経の働き】
 主に消化ルートを司る神経です。胃液の量や腸の運動調節することで、より効率的な栄養補給が出来るように働いてます。
また交感神経とは逆の、緩和を促す神経でもあります。

 副交感神経の基本機能は次のようになります。

 1.食べ物の消化・排泄を調節⇒食事、消化、排泄と続く食べ物の流れに関する指令を出す。

 この2つの自律神経の乱れからくる体調不良は不定愁訴という名で総称されています。

 自律神経の機能は内臓機能を調節しているものが多いので、多様な症状とその症状が2つの神経ルートにまたがって、重なり合って出て来るという特徴があります。この不定愁訴が習慣化されたのが、【自律神経失調症】なのです。

  【自律神経機能低下の原因】

 1.緊張の過剰(交感神経の働き過ぎ)
  * 朝寝坊・通勤ラッシュ・渋滞
  * 子供を叱る・母親に怒られる・人の目が気になる
 このような状態になると心がドキドキしたり、いらいらしたりしますよね。このような体だけでなく、心の緊張過剰からも起こります。ドキドキやイライラ以外にもクヨクヨ悩みすぎたり、必要以上にビクビクする状態が続くと緊張過剰へとつながります。

 2.休息の不足(副交感神経の機能低下)
  *食事時間が不規則・睡眠不足など
 きちんと食べなかったり十分な睡眠や休憩をとらないと、副交感神経の機能がダウンし、緩和不足へとつながります。これらを続けていると消化ルートが乱れて、腹痛や下痢などの症状につながります。以上のような緊張と緩和のアンバランスが自律神経失調症を招く事になります。これらは心理的ストレスや、環境の変化、加齢などの影響も大きいといわれています。

  【自律神経失調症を予防するには?】

1.生体リズムを整える・・・人間の体は12時間 を目安に交感神経と副交感神経が切り替わり休息に入ります。
            その為、12時間を越えた労働はリズムを崩す原因となります。
            そして、仕事や作業中の緊張を緩和させるのも大切です。

 切り替えのポイント
・時間・・・労働時間60分で一回休憩するようにしましょう。
・飲み物・・・カフェインは交感神経を刺激するので朝食や仕事始めの時に、また杜仲は副交感神経を活発にする成分が含まれているので休憩時に飲みましょう。仕事をはじめる時はコーヒー・紅茶・緑茶(煎茶・玉露)など、休憩の時は麦茶・杜仲茶(カフェインの入っていないもの)も効果的です。
・深い呼吸は交感神経の緊張を解いて、副交感神経を少し活発にします。

2.睡眠・・・睡眠は最も副交感神経が働く時間。いかに上手く睡眠に入るかがポイントです。
  ・食事・・・胃に食べ物が残っていると睡眠の妨げになります。食事は寝る3時間前までにすませるようにしましょう。
  ・入浴・・・37~40℃のお湯に30分ほど浸かるのが副交感神経の働きを促します。お風呂から出て少し体の火照りを取ってから眠るのが良いでしょう。

3.ストレスの発散・・・ストレスがたまると、常に緊張した状態にさらされています。いかにこのストレスを発散していくかがポイントです。これは人それぞれ違いますので一概には言えませんが、自分なりの趣味を見つけることも大事です。一番良いのは人とおしゃべりして誰かに悩みを聞いてもらうことではないでしょうか。

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